7.愚者達の密談②
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「アリアを養女にさせて、邪魔な辺境伯とディオンを追い出し、辺境伯家を乗っ取る…悪くない話だ」
(どうせ足がかりにして王家に戻るとしても、娘婿になるより、当主として権勢をふるう方が…)
未来の自分と寄り添うアリアの姿を想像して、俺はニヤリと笑う。
「あ、待って。ディオン様は追い出す必要はないと思うの」
焦った顔をしたアリアの発言に、俺は首をかしげる。
「何故だ?奴がいると、辺境伯家を乗っ取れないぞ」
「「そうですよ」」
チェンとトランも、不思議そうに首をかしげる。
「え、ええとね…ほら!ディオン様はカッコイイ…じゃなくて、優秀でしょう?仕事を全部押し付ければ、お金も稼げて、良いと思うの」
アリアの発言に、ムッとする。
「それは俺だと、辺境伯の仕事が上手く回せないという事か?」
確かに奴はテノール兄上の補佐にも抜擢され、真面目で有能だと評判を聞いているが、俺だってそのくらいはできる。
辺境伯家を足がかりに、テノール兄上、ひいてはリュード兄上に代わって、この国を牛耳るのだ。
するとアリアが慌てて訂正する。
「そう言う意味じゃないの、傷つけたならゴメンナサイ…ただ、代わりに仕事をしてくれる人がいれば、楽で助かるかなぁって…」
そう言いながら潤んだ上目遣いで、胸を押し付けてくる。
「ま、まぁ…確かにその方が楽でいいかもしれないな」
「「そ、そうですね…」」
アリアの誘うような(実際誘っているんだろうが)動作にゴクリと喉が鳴るが、そんな場合じゃないと何とか耐えた。
最終的にセレナーデを追放して代わりにアリアを養女とし、再婚約、結婚後辺境伯家を乗っ取り、辺境伯家の力で補佐となって王太子に近づき、ゆくゆくは取って代わるという方針に決まった。
決行は一か月後のセレナーデの18歳の誕生パーティ。
この時俺達は、自分達の勝利を疑わなかった。