6.愚者達の密談
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「マズい事になった」
城の自室で、俺は頭を抱える。
俺が婚約者のいる身でアリアといちゃついていた事、セレナーデを奴隷のように扱い笑い者にしていた事が、学園中に知れ渡っていた。
思い返せば、時々呼び出しに応じないセレナーデの所まで行き、周囲の目も気にせず散々バカにした挙句、物を取り上げた事も何度かあった…知れ渡って当然だ。
先ほど激怒した父上に「お前はしばらく謹慎だ、部屋から一歩も出るな!万一ノクターン家に押しかけようものなら、殺してやる!!」と言われ、母上や兄上達も生ゴミを見る目で睨まれた。
「アルトぉ~、私クラスの皆から無視されるのぉ~。酷いと思わない?」
グスンとアリアが、うっすらと涙ぐむ。
「僕達も家族から「我が家を破滅させる気か!」と、こっぴどく叱られました…」
「セレナーデ嬢の許しが得られない時は、勘当だと…」
側付きのチェンとトランもうなだれる。
「とにかくこうなったら、セレナーデに謝罪するしかないだろうな…」
「「……」」
俺の提案に、2人が更にうなだれる。
正直散々見下していた相手に、頭を下げて許しを請うなど嫌だ。だが下げなければ破滅だ。
そこへ場違いな明るい声が、割りこんでくる。
「ねぇねぇ、別にそこまで深刻に考える必要ないんじゃない~?」
その発言に皆一斉に、アリアを見た。
「元々セレナーデさんを追い出して、辺境伯家を手に入れるつもりだったしぃ~。これを機に計画を実行に移しちゃえば~?」
その提案に、俺達は顔を見合わせる。
「確かに元々そのつもりだったが…しかしどうやって?」
俺の疑問に、アリアがふくれっ面をする。
「もう、忘れたんですかぁ~、今年進級したばかりの頃セレナーデさん、私を虐めたんですよぉ~」
「「「あ」」」
そう言えばそうだった。
「だからぁ~それを理由に婚約破棄して、辺境伯家に責任を取らせればいいんですよぉ~」
「なるほど…しかしどうやって?」
チェンが、首をかしげる。
「償いとして、私を辺境伯家に養女に迎えさせればいいんですよぉ~。赤の他人のディオン様を養子にするくらいだから、私もなれると思うんです~」
「「「なるほど」」」
意外だが、良いアイディアだ。
「で、その後私とアルト様が婚約してぇ、結婚したら邪魔者を追い出せばいいんですよ~」
「良い案だ、さすがアリア」
「希望が湧いてきました」
「何とかなりそうですね」
俺達は一筋の光明を見出し、晴れやかな気分になった。