1.突然の出来事
久しぶりのシリアス物です。つたない作品ですが、よろしくお願いします。
「セレナーデ!お前は私の最愛のアリアを嫉妬で虐めた、そんな醜い女は王子妃にふさわしくない!よって婚約破棄と国外追放を言い渡す!」
突然の宣言に主催者側も招待客も、驚きの表情で注目する。
辺境伯令嬢セレナーデ=ノクターンの18歳目の誕生日パーティは、盛大に行われた。
この国では男女ともに、18歳で成人となる。
成人になると同時に、婚約していた第3王子アルトとの本格的な結婚準備に入るとして、様々な重要人物が招かれ、王太子の補佐として忙しく普段は顔を見せない第2王子も、今回は出席していた。
病弱な辺境伯令嬢の為に主治医も待機しており、主催側の辺境伯も令嬢の義兄や令嬢も、笑顔で客の応対をしていた。
パーティは順調に進み盛り上がりが最高潮になった時、突然第3王子が、見知らぬ令嬢と取り巻き達を連れて壇上に上がると、冒頭の台詞を叫んだ。
突然の宣言にも令嬢は落ち着いた態度で、前へ進み出た。
「まぁアルト様、何のご冗談ですの?本日は私の誕生パーティですわよ」
不思議そうに首をかしげる令嬢に、苛立った王子が怒鳴りつける。
「惚けるな悪女め!お前がここにいるアリアを虐めてたのは、証拠が挙がってるんだ!大人しく認めて謝罪して出ていけ!お前のようなものは、この国にはふさわしくない!」
「そうですよ~セレナーデさまぁ、大人しく負けを認めて謝ってくれれば、国境まで馬車で送るくらいはしますよぉ~」
「あぁアリア、何て慈悲深いんだ!」
感激したように、王子が傍らの令嬢を抱きしめる。
「はぁいアルト様のためですもの~」
嬉しそうに令嬢も王子を抱きしめ、取り巻き達も微笑ましい顔で見ている。
対して招待客達はしらけきった眼で、茶番を見ていた。
「殿下!この祝いの席で何と言う事を!」
「全くです!大体虐めていたのは、そちらでしょう!散々暴力や暴言を奮っていただけでなく、濡れ衣を着せるとは!」
愛する家族への侮辱に、たまりかねた辺境伯と義兄が抗議するが、第3王子達には通じなかった。
「うるさい黙れ!田舎伯爵風情が俺に文句をつけるな。王族の俺が何をしようと俺の勝手だ、貴様らの指図は受けん!俺が虐めたといえば虐めたのだ!」
その台詞で「虐めは冤罪で、濡れ衣を着せてます」と白状してるも同然なのだが、本人達は気づいてない。
あまりの理屈に、激怒していた辺境伯親子も黙りこむ。
周囲の人間も呆れ果てて、何も言えなかった。
その沈黙を破ったのは、件の令嬢だった。
「…わかりました、婚約破棄お受けします。でも虐め云々は冤罪なので謝罪する気はありません」
冷静な態度に第3王子が激怒した。
「何だと!?セレナーデの癖に生意気な!お前はいつも通り、大人しく頷いてればいいんだよ!」
しかし令嬢は王子を無視したまま、父と義兄に話しかける。
「お父様、お義兄様ご迷惑をおかけして申し訳ありません。このような騒ぎになった以上、しばらく領地にて謹慎しようと思います」
「こちらの事は気にする必要はない、気にせずゆっくり静養しなさい」
「そうだ、お前の名誉は必ず回復させるから」
2人も王子を無視して、3人だけの世界を作る。
周りの人間達も冤罪をきせられた令嬢に、同情的な視線を送った。
「ぐぬぬ…おい貴様ら!俺を無視す…むぐっ!」
無視されて腹を立てた第3王子が再び怒鳴ろうとするのを、第2王子が塞いだ。
「はいはい、言い訳は後で聞くから。これ以上王家の顔に泥を塗らないでくれないか」
兄に睨まれて、第3王子は口ごもった。他の取り巻き達も、第2王子の護衛達に取り押さえられている。
第2王子が第3王子を取り押さえて皆の気が緩んだ直後に、それは起こった。
令嬢がワインを呷った瞬間、苦しんで倒れたのだ。