エンドB.そして皆いなくなった
こちらはパラレルエンドです。本編とは別のエンドとしてお楽しみ下さい。
バッドエンドなので、ハッピーエンドが好きな方は引き返して下さい。
~1か月後~
その日は、朝から小雨が降っていた。
元第3王子達に毒を盛られたノクターン辺境伯令嬢は、そのまま意識を取り戻すことなく、この世を去った。
また辺境伯も最愛の娘の死にショックを受け、その晩の内に自ら命を絶った。
残された令息が気丈にも喪主を務め、参列した人々は相次ぐ不幸を心から嘆いた。
「ふぅ…」
葬儀を終えた後、ディオンは1人自室でワインを片手に、考え事をしていた。
そこに「来客です」という執事の声と共に「やぁ」と、上司兼友人のテノール王子が顔を出した。
ホッとしたような、ウンザリしたような気持ちに襲われつつも、突然の来客を招き入れて人払いすると、相手の前にワインを置いた。
「この度は、心からお悔やみを言うよ」
「恐れ入ります」
ソファに腰掛けると、開口一番お悔やみの言葉を言った。
それに対して、ディオンは特に感情を浮かべる事なく、事務的に返した。
後は無言で手元のワイングラスを、揺らしながら眺めている。
テノールはその様子を一瞥して、口を開いた。
「後悔しているのか?…復讐のためとはいえ、恋人を手にかけた事を」
その言葉にディオンは、少しだけ顔を上げた。
「いいえ。私は両親の墓の前で誓ったのです…当主の座欲しさに実の兄夫婦を手にかけたあの男に、私と同じ思いを味わわせてから殺すと…あの男が奪ったものを取り戻すと。軽蔑しますか?何の罪もないセレナーデまで、手にかけた私を?」
そう言って、グラスに残ったワインを飲み干した。
「いや、俺も同じだからな…裏切ったとはいえあんなに可愛がってた弟だったのに、これっぽっちも悲しくない」
それだけ言って、テノールもワインを煽った。
それ以上何を言えばいいかわからず、しばらくの間部屋に沈黙が降りた。
「…本当は」
不意にその沈黙を、ディオンが破った。
手元の空になったワイングラスに視線を落としながら、誰に言うともなく呟いた。
「何も感じない訳ではありませんが…悲しいとも思わないんです。ただ胸の中が空っぽになったような感じで、涙の一滴も出てこない。愛していたのは間違いないのに…殺しても悲しみも後悔も罪悪感もない。不思議ですね」
「そうか…」
再び言う事が無くなり、テノールは話題を変えてみた。
「ところでお前は、これからどうするんだ?」
そこで初めてディオンは、顔を上げてテノールを見た。
「仇は討ちましたし、奪われた当主の座も取り戻しましたし、後は跡継ぎでも作って家を継いでいきますよ」
「……」
そう言うディオンの顔を見て、テノールは目の前の友人の未来を悟った。
「分かった…まぁ、好きにしろ。当主になるんなら、もう俺の補佐は手が回らないだろう…明日にでも解雇してやる、おやすみ」
そのままグラスを置いて立ち上がり、部屋を後にする。
「えぇ…おやすみなさい、殿下」
決して、振り返る事はしなかった。
ただ黙って片手を上げて、別れの挨拶とした。
その後第2王子の側近を辞したディオンは、辺境伯当主として良い伴侶を迎え、一男一女をもうけて領地を発展させた。
長男の成人と同時に当主の座を譲り、翌日自室にて遺体となって発見された。
当初は殺人かと思われたが、傍のテーブルに「義妹の墓の側に眠らせてほしい」という遺書が見つかった事から、自殺と断定された。
本人の希望通り、義妹の墓の隣に埋葬された。
誰かは知らないが、毎年命日には必ずワインが供えられていた。
ここまでお読み下さり、ありがとうございました。




