10.断罪②
「父上、もうここまでで充分でしょう。これ以上は見苦しくて、聞くに堪えないです」
それまで黙っていたリュード兄上が、父上に進言する。
「うむ、そうだな。では処罰を述べ…」
「待って下さい、金品は元々セレナーデがアリアを虐めたから、慰謝料として貰ったんです!元はセレナーデが悪いし、それに私達はワインに毒など入れておりません!」
刑を決められそうになって、慌てて弁明する。
アリアは猿轡をかまされてるし、トラン達は国王に直接何か言えるほど、身分が高くない…弁解できるのは私しかいない。
(何とか無罪を…いやせめて少しでも、処罰を軽くしなければ、身の破滅だ!)
必死に抗弁するが、父上は冷ややかな視線で見下ろすだけだった。
「辺境伯家で盗みを働いたのは、学園に入る前からだろう。大体そなた達は『セレナーデ嬢が虐めたのが悪い』というが、具体的にはどのような経緯で、どんないじめを受けたというのだ」
「それは…」
父上の言葉に、言い淀む。
思えばアリアが「セレナーデに虐められた」と言ったからそう思っただけで、実際はどんな経緯でどのような事をされたかは、全く聞いていない。
視線をアリアの方に向けると、広間にいる全員がアリアを見た。
「陛下、発言をよろしいでしょうか?」
突然ディオンが、会話に入って来た。
「よかろう」
父上が許可すると、ディオンが話し始めた。
「それについてはセレナーデに事情を聞きました。確かに今年の春頃、そこにいるアリア=ロンド男爵令嬢に酷い侮辱を受けてもみ合いになり、結果令嬢が池に落ちてしまったという事です」
セレナーデの虐めを裏付ける言葉に、俺は得意になった。
「ほら見ろ!やっぱり虐めてたんじゃないか」
勝ち誇って言う俺に、皆は何故か冷ややかな視線を向けるだけだった。
「話を聞いてませんね。『もみ合いになった結果、池に落ちた』と言ったんです、意図的に落としたとは言ってません。つまりは事故です」
「あっ」
俺の勝利は、一瞬で砕かれた。
「確かにそうだな。ところで『もみ合いになるほど酷い侮辱』とは、どのような事を言われたのだ?」
父上が尋ねると、ディオンが話し始めた。
「池のほとりで休んでいたところ、突然そこの令嬢が現れて「アルト殿下は私の物だから、負け犬はさっさと引っ込め」「いずれは王妃になってこの国を牛耳ってやる、そうなったらアンタはあたしの下僕だ」「アンタの兄貴も含めて国中の見目良い男は、全部私の愛人にして侍らせてやる。せいぜい悔しがってみてるといいわ」などと、妄言を吐いたそうです」
そう言ってディオンが、アリアを睨みつける。
アリアが何か言おうとしてるが、猿轡をしているので何を言ってるかわからない。
正直私も理解できない…いやしたくない。
(『愛人にしてやる』とか…不貞宣言じゃないか)
信じてたアリアがあばずれで、そんな女に引っかかってこの状態になっていると思うと、頭痛がした。
「父上、一応真偽を問いただしますか?」
ウンザリした顔で、リュート兄上がアリアを見るが、父上は疲れた顔で首を振った。
「どうせ問いただしても、下らない妄言と暴言を吐くだけだ。聞くだけで疲れるし、時間の無駄だ」
「分かりました」
「そんな…」
父上の言葉に兄上も引き下がり、俺は唯一の反論の糸口を失ってしまった。




