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なろうラジオ大賞3

異世界お味噌汁

 最近、異世界へ転移したり転生したりした人たちの消息が、こちらの世界にも伝わってくるようになった。

 なんでも、こちらとは別に、多くの異世界が並立しているのが実情らしいのだが、簡単に行き来する方法はまだ見出されていないということだ。しかし、ネットとは便利なもので、情報だけは、自由にやり取りできるようになってきているのだ。


 こうしたネット情報は、一概には信用できない面もあるのだが、現時点では実際に行くことができない場所というのは、やはり好奇心をそそるものなのである。


 そして、多くの人々の関心というものは、所謂三大欲求に繋がっていることが多い。

 まあ、睡眠に関しては、こちらの世界であろうと異世界であろうと大差ないであろうから、実際には他の二つなのだ。食欲と性欲。これに関連した情報が、圧倒的に多い。

 『あちらの異世界には、こんな美魔女がいる。』『そちらの世界には、こんな美少女獣人がいた。』という情報が、怪しげな画像と共にネットに溢れかえっているのは、皆の知るところだ。


 一方で、食欲を刺激する異世界飯テロ情報も負けてはいない。


 異世界特有の食材を用いた料理の紹介が、あっちの異世界からも、そっちの異世界からも届くのだ。

 一番注目を浴びているのは、どうしたって見た目の迫力で、それぞれの異世界に生息している巨大生物の肉を用いたマンガ肉だったりするのだが、意外なところでは、「異世界お味噌汁」というのが話題に上っているのだ。


 異世界に転移・転生した人々が郷里の味として恋しがり、異世界特産の材料を用いて作り上げた、涙無くしては語ることのできない苦労の産物。それこそが、「異世界お味噌汁」なのだ。


 本物の大豆から作られた味噌や、出汁に使える煮干しや鰹節などが入手できない人々が、なんとか似たものを代用して作り上げた、似て非なる料理である。

 さすがに、こちらの世界では味わうことはできないが、その画像からは、人々の執念と苦労とが窺い知れるというものである。


 が、味が似ているのかもしれないが、緑色の「お味噌汁」や、奇妙な実がそのままの形でぶち込まれた「お味噌汁」は、もはや混沌状態と評してもよさそうで、ネット上でも、「そもそも、お味噌汁とは何であるか?」といった論議にまで発展しているのだ。


 異世界に行っても、旨いお味噌汁は飲みたい。

 結局、そこだけは譲れないのである。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  あれよあれよと簡単だったり、似てるものを作ったり、なんとか完成させようと努力を続けていたり、はなっから諦めていたり、いろいろだよね。 でも、味噌汁だからだよね!
[良い点] なろうラジオ大賞3から拝読させていただきました。 ソウルフードなのでしょうね。 強い思いが伝わってきます。
[一言] 異世界に行ったら米、醤油、味噌といろいろ難儀しそう。 作品によっては無理やり登場させるのもあるけど。 異世界で味噌汁作っても、それはもはや別ものですよねぇ。 緑色のやつはいったい何をどうや…
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