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紫式部日記 舞夢訳  作者: 舞夢
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試みに物語を取りて見れど、

試みに物語を取りて見れど、見しやうにもおぼえず、あさましく、あはれなりし人の語らひしあたりも、われをいかに面なく心浅きものと思ひおとすらむと、おしはかるに、それさへいと恥づかしくて、えおとづれやらず。


試しに昔書いた物語を手に取り、読んでみたけれど、昔のように面白みを感じることもなく情けなく、かつては心おきなく私と言葉を交わした人たちも、この私を何と恥ずかしく権力になびく軽い女と思っておられるだろうと推測すると、今の仕事についたことと同じに恥ずかしくて、私からは連絡も取れません。


宮仕えまでは、心置きなく会話を交わせる人がいたけれど、道長の誘いを断ることは難しく、仕えることになってしまった、確かに栄誉なことではあるが、宮仕えする前は「そういうことに興味がない」とでも語り合っていたのかもしれない。

その上、「源氏物語」まで中宮の内裏に戻る際の土産になるなど、紫式部の評価はより高まっている。

「紫式部さんだけいい思いをしている、出し抜かれた」と言われているかもしれないから、こちらから連絡を取ったところで、気分を害してしまうのではないか、そんな不安もある。

それを思うと、心を通じたはずの友人を失う不安もあるし、華やかな宮仕えではあるけれど、その宮仕えにおいて、なかなか気が通う友人もできない。

宮仕えで、源氏物語の書写など始まって、結局、それを僻む他の女房からの「苛め」にあうのではないか。

それを思うと、かつて書いた源氏物語とて、面白いとは思えない。

「余計な物語など書かなければよかった」そんな思いもあるのかもしれない。

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