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紫式部日記 舞夢訳  作者: 舞夢
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「宮の御前、聞こしめすや。仕うまつれり。」

「宮の御前、聞こしめすや。仕うまつれり。」

と、われぼめしたまひて、

 「宮の御父にてまろ悪ろからず、まろがむすめにて宮悪ろくおはしまさず。母もまた幸ひありと思ひて、笑ひたまふめり。良い夫は持たりかし、と思ひたんめり。」

と、たはぶれきこえたまふも、こよなき御酔ひのまぎれなりと見ゆ。さることもなければ、騒がしき心地はしながらめでたくのみ聞きゐさせたまふ。殿の上、聞きにくしとおぼすにや、渡らせたまひぬるけしきなれば、

 「送りせずとて、母恨みたまはむものぞ。」

とて、急ぎて御帳の内を通らせたまふ。

 「宮なめしとおぼすらむ。親のあればこそ子もかしこけれ。」

と、うちつぶやきたまふを、人びと笑ひきこゆ。


(道長様は)

「宮の御前(中宮)、聞こえましたか?立派に詠まれましたよ」

と自画自賛なされまして

「中宮様の父として、この道長は欠点がないでしょう。また、私の娘として中宮様も

何一つ欠点がありません。それだから母も何と幸せなことと思われて、お笑いになられているのです。良い夫を持ったと、思うのでしょうね」

とご機嫌に軽口を言われるのも、この上なく酔っているからのことと思われます。

たいした話ではないけれど、どうにも気持ちが騒ぐ気持ちを抑えながら(中宮様)は

機嫌よく聞いておられます。

しかし、道長様の北の方(倫子)は、これは聞くのも嫌と思われたのか席を外しそうなご様子なので、

(道長様は)

「中宮様がお見送りをしないと母様がお恨みなされますよ」

と申され、大急ぎで御帳台の中を通って行かれます。

「中宮様としては、何と無礼なことと思われるでしょうが、この親(道長と倫子)があればこそ、中宮様も不安がないのです」とつぶやくのを、女房たちは笑っています。



道長の北の方倫子は、夫道長のあまりの酔態に呆れたのか、席を立って帰ってしまう。それを慌てておいかける時の最高権力者道長の姿である。

実の娘にして中宮は、笑うというより苦笑いかもしれない。

それでも何とか面子を保とうとする道長と、笑顔で見送る女房たち。

女房たちの笑顔は、仕事の上での笑顔と思う。(間違っても、道長、北の方、中宮の機嫌を損ねることはできないのだから)

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