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恐ろしかるべき夜の御酔ひなめりと見て
恐ろしかるべき夜の御酔ひなめりと見て、事果つるままに、宰相の君に言ひ合はせて、隠れなむとするに、東面に殿の君達、宰相中将など入りて、騒がしければ、二人御帳の後ろにゐ隠れたるを、取り払はせたまひて、二人ながら捉へ据ゑさせたまへり。
今夜の宴席は、とにかく怖いほどに酔い乱れているので、宴会が終わった時点で宰相の君と示し合わせて姿を消そうとしていると、東面の間に道長様のご子息や宰相の中中将が入って来て、何やら騒がしいので、二人で御帳台の後ろに隠れていると、道長様に見つかり、全ての御帳を外されて、しかも二人とも袖まで掴まれて御前に引き出されてしまいました。
(道長様は)
「和歌を一首詠んで見せてください、そうしたら許します」
とおっしゃられます。




