かねてより、主上の女房、宮にかけてさぶらふ五人は
かねてより、主上の女房、宮にかけてさぶらふ五人は、参り集ひてさぶらふ。内侍二人、命婦二人、御まかなひの人一人。御膳まゐるとて、筑前、左京、一もとの髪上げて、内侍の出で入る隅の柱もとより出づ。これはよろしき天女なり。左京は青色に柳の無紋の唐衣、筑前は菊の五重の唐衣、裳は例の摺裳なり。御まかなひ橘三位。青色の唐衣、唐綾の黄なる菊の袿ぞ、上着なむめる。一もと上げたり。柱隠れにて、まほにも見えず。
従前より、内裏付き女房であり、また中宮付きを兼ねている五人が、参上して待機しています。
内侍が二人、命婦が二人、御給仕役が一人です。
帝に御前を差し上げる役目として、筑前と左京が、髻を一つに結い上げて、内侍が出入りする隅の柱から出て来ました。
この様子は、なかなか、それなりに天女のように見えます。
左京は青色に柳の無紋の唐衣、筑前は菊の五重の唐衣、裳は二人とも、いつもの摺裳です。
御給仕訳は橘三位。青色の唐衣に唐綾の黄菊重ねの袿を表着としているようです。
髻を一つに結い上げてはおりますが、私は柱の陰に隠れているので、はっきりとは見えません。
着衣に関する語釈は省略します。
ここでの紫式部の立ち位置は、ただ「儀式を拝見するのみ」。
晴れの儀式で役目を与えられる身分ではありません。




