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紫式部日記 舞夢訳  作者: 舞夢
28/178

よろづの物のくもりなく白き御前に、

(原文)

よろづの物のくもりなく白き御前に、人の様態、色合ひなどさへ、掲焉に現れたるを見わたすに、よき墨絵に髮どもを生ほしたるやうに見ゆ。

いとどものはしたなくて、かかやかしき心地すれば、昼はをさをささし出でず。

のどやかにて、東の対の局より参う上る人びとを見れば、色聴されたるは、織物の唐衣、同じ袿どもなれば、なかなか麗しくて、心々も見えず。

聴されぬ人も、少し大人びたるは、かたはらいたかるべきことはとて、ただえならぬ三重五重の袿に、表着は織物、無紋の唐衣すくよかにして、襲ねには綾、薄物をしたる人もあり。


※掲焉に:けちえんに。はっきりと。明確に。

※かかやかしき心地:恥ずかしい気持ち。

※色聴されたる:禁色を許された上臈の女房。織物の唐衣着用が許されている。

※無紋の唐衣:降り模様がない唐衣。


(舞夢訳)

何もかも、全く曇りがない、真っ白な中宮様の御前では、お仕えする女房達の容姿や顔の色まで、はっきりわかってしまうのを見ていると、美しい白描画に、黒々とした髪を描き生やしたように見えます。

この私は、実に落ち着かず、恥ずかしいので、昼間の明るい時間帯には、ほどんど顔を出しません。

自分の部屋からのんびりと、東の対から午前に参上なされる女房達を見ていると、禁色を許された人は、そろって織物の衣に織物の袿です。

皆様は、一様に見事であるけれど、どれも同じようなので、一人一人の趣向がわかりません。

また、禁色を許されていない人で、特に年配の人は、他人に見られて恥ずかしいことはできないと思うのか、何とも言えない三重、五重の袿に、表着は織物、織模様のない唐衣を着こんでいます。

重ね袿には、綾は薄物を着ている人もいます。



これも、ご出産直後の中宮彰子の御前に参上する女房達の服装の記録。

しかし、紫式部は、容姿に自信がないので、「昼間」は、御前に顔を出さない。

容姿より頭脳で勝負するタイプだったようだ。

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