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紫式部日記 舞夢訳  作者: 舞夢
25/178

御湯殿は酉の時とか

(原文)

御湯殿は酉の時とか。

火ともして、宮のしもべ、緑の衣の上に白き当色着て御湯まゐる。

その桶、据ゑたる台など、みな白きおほひしたり。

尾張守知光、宮の侍の長なる仲信かきて、御簾のもとに参る。

水仕二人、清子の命婦、播磨、取り次ぎてうめつつ、女房二人、大木工、馬、汲みわたして、御瓮十六にあまれば入る。

薄物の表着、かとりの裳、唐衣、釵子さして、白き元結したり。

頭つき映えてをかしく見ゆ。

御湯殿は、宰相の君、御迎へ湯、大納言の君。

湯巻姿どもの、例ならずさまことにをかしげなり。


※酉の時:午後6時頃。

※宮のしもべ:中宮職の下級職員。

※緑の衣。6位、7位の官僚が着る衣。

※白き当色:「当色」は儀式用の制服。ご出産に関する儀式は白を用いた。

※尾張守知光:藤原知光。

※宮の侍の長なる仲信:中宮職の下級職員で雑務を担当する侍の長。

※水仕;水の用を担当する女官。「清子の命婦、播磨」は出自未詳。

※大木工、馬:出自未詳。

※御瓮:おほとぎ。胴が太く口の狭い素焼きの土器。御湯殿の儀では16個用いるのが通例。

※薄物の表着:薄絹。

※かとりの裳:目の細かい堅織りの薄絹。

※釵子:さいし。女性の正装時の髪飾りで簪の一種。

※御湯殿:お湯をかける役。

※御迎へ湯:新生児を預かったり支えたりする役。

※湯巻姿:腰に濡れ帽子の白い正絹の布を巻いた姿。


(舞夢訳)

御湯殿の儀式は、酉の刻とのことです。

灯りを点して、中宮職の下級職員が、緑の衣の上に、正式な白衣を着て、お湯を準備します。

その桶と、桶を据える台も全て布で白い覆いがなされています。

尾張守知光と中宮職の侍長仲信が、その桶を担って御簾の下まで、運び参らせます。

水係の2人、清子の命婦、播磨が取り次いでお湯をうめるごとに、それを女房2人、大木工と馬が御瓮に汲み渡します。

16の御瓮に入りきらずに余ったお湯は、浴槽に入れます。

それらの作業にあたる女房たちは、薄物の上着に、かとりの裳と唐衣、髪には釵子を挿して、白い元結をしています。

髪結い栄えがして、実に素敵です。

若宮様に産湯をつかわせてさしあげる役は、宰相の君。

お迎え役は、大納言の君。

腰回りに、白い絹を巻いた湯巻姿で、いつも以上に、特別な感じで、なかなか素晴らしいのです。


紫式部による御湯殿儀式の状況記録である。

それぞれの役目、担当者、服装を記録し、感じたことも書く。

源氏物語の記述でも、細かい部分が多いけれど、あくまでも「物語」。

この記述は、事実に即しているので、儀式資料としても、貴重である。


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