午の時に、空晴れて朝日さし出でたる心地す
(原文)
午の時に、空晴れて朝日さし出でたる心地す。
平らかにおはしますうれしさの類もなきに、男にさへおはしましける慶び、いかがはなのめならむ。
昨日しほれ暮らし、今朝のほど、秋霧におぼほれつる女房など、みな立ちあかれつつ休む。御前には、うちねびたる人びとの、かかる折節つきづきしきさぶらふ。
※午の時:9月11日の正午頃。午の時は現在の午前11時から午後1時までの2時間。
※うちねびたる:年功を積んだの意味。
(舞夢訳)
正午頃に、(お誕生なされ)、まるで空が晴れて朝日が差したような気がしました。
ご出産は安産となり、母子ともにご無事でおられることの嬉しさが比類なく、男皇子であられたことの慶びは、とても並大抵のことではありません。
昨日までは、日々、不安で仕方なく、今朝は秋の霧のように涙で濡れていた女房達は、ようやくそれぞれ自分の局に下がり、休憩を取ります。
中宮様の御前には、年功を積んだ女房達で、このような際に適した方々が控えています。
「午の時に、空晴れて朝日さし出でたる心地す」
前々日からの長時間にわたった皇子のご出産は、正午頃。
その安堵感と感動を紫式部は、「正午に、まるで空が晴れて、朝日が差したような」と表現する。
実に彼女らしい、名表現と思う。
また、皇位を継承できる男の皇子であっちたことは、皇室にとっても、道長家にとっても、無上の喜びである。




