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乗って見なくちゃ分からない それが奇蹄目

 授業ではペアを組んで2人で一頭の馬を使うようだ。馬には手綱が付けられ、学生たちは順番に厩務員から馬を受け取っていく。自前の馬を持っている人は、1人で授業を受けるようだが、馬に乗ったことのない学生が中心のこのグループには、当然そのような御大層な学生はいない。現にA,Bグループは手慣れた様子で馬を受け取っていくのだが、うちのグループは戸惑いながら小柄の馬を受け取っている。明らかに遅い。先が思いやられる。


「大きな声を出さないで、常に馬の視界の中にいるようにしてください」

 まあ、馬車には乗ったことがあるからそれくらいは知っているだろう。とはいっても馬車馬は主に重種の馬が担当するのだから、このような小さな馬を見るのは始めてなのかもしれない。

 なお、Cグループで使われるのは小柄な馬とはポニーのことだ。ポニーとは体高が147センチ以下の馬のことを指すが、今渡されている馬は体高が140センチほどしかない。ポニーの中では大型だが、軍馬ほどの力強さも、競走馬のようなしなやかさも感じられない。しかし、集団の中でも非常に落ち着いており、人にも慣れている様子だ。まさしく、初めての乗馬向きの馬である。


 そんな訳であるが、このクラスにいる子たちは初めて馬に乗るわけで、手綱を渡されてもお互いに押し付け合ったり、一緒に持ってオドオドしている。一方の馬の方は慣れた様子で学生を値踏みすることもなくじっとしている。こちらは同じようなことを毎年繰り返しているのだろう。

 品種はマウロニ―ポニーだろうか。マウロニーの特徴だが、額が広く賢そうである。また、筋肉質ではないのだが、この馬たちは繋(蹄の上にある部位)が太く立っており(多分)、パワーがあり怪我にも強そうだ。

・・・・・・結局乗って走らせないと分からないんだけどね。


「今みなさんに与えた馬を一年間管理して貰います。馬のお世話や馬房の片付けなど適宜、厩務員さんからも教わると思いますが普段から大切にお世話して下さい」

 どうやら、連れてきている馬は全頭渡し終わったようである。

 あれ、ブレアと見合う。おかしいぞ、なんか全員に馬が渡っている体で話が進んでいるが、俺とブレアはまだ馬を受けとっていない。いくらなんでも受難が早すぎる。すぐに先生に確認を取る。


「すみません。僕たちまだ馬を受け取っていないんですけど」

 優しそうな女性の先生にお話を聞く。すると驚いた様子で「おかしいですね。馬は十分な頭数と思うんだけど」と周囲を見渡している。しかし、馬は余っていない。

 怖くない方の先生は腕を組んで生徒たちの方を注意しながら見渡している。教員にしてみれば堪ったもんじゃないのだろう。ということでまだ聞かなくていいや。


「あの馬は違うの?」

 ブレアが先生たちの背後を指さす。そこには、二頭ほど草を食んでいる馬がいるのだ。ハミのついていない無口頭絡を装着している牡馬と牝馬のペアだ。10歳には届かないくらいだと思うが、しっかりと絞られた健康的な馬体をしている。とても速そうだ。間違いなく先生たちの馬である。俺たち用のはずがない。あの馬に乗るのは俺はともかくブレアには荷が重いだろう。


「そうですね。あの馬は私たちが授業に使うので」

 少し、声を張り上げるように女性の教員は声を出す。男性の方も気がついたようだ。

「シャルリーヌ先生馬が足りてないのですか?」

「はい。数はピッタリのはずなのですが、Bグループに紛れてしまったのかもしれないです」

 30人ぐらいの人がいるBグループでも二人一組で馬が配られている。あちらは馬だ。ポニーじゃない。学生たちの接し方も慣れた様子だ。アビゲイルもいつもの4人で授業を受けている。結論からいえば、紛れ込むことも余ることもなそうである。


「どうやら、あちらはピッタリみたいですね。必要な数を朝の内に用意してあったし、しかも一頭余るように連れてきたはずですから、起きるはずのないミスなんですけど」

 シャルリーヌと呼ばれた女性の先生は、腕を組んで俯いて考え始めた。確かに謎だ。ここにいないということは逃げ出したことになる。柵があり、その外には出られないとしても二頭同時に逃げたのである。一緒にいればいいのだが、そうでないとすると半分の人数で探すことになり、なかなか大変なことになる。近くに柵が設置してあることを願うしかない。


「悩んでいても仕方がない。厩舎に何頭か出せる馬がいるかもしれない。それに頼るしかないだろう。今日は激しい運動をするわけでもないし、融通が利きそうだが・・・・・・」

 二人の間で話が進んでいく。学生の俺に発言権はない。黙って話を聞いている。それにしても先生たちの馬には無口には手綱が付けられていないため、実質放し飼いに等しい。信頼関係がなせる業なのかもしれない。非常にかっこいい馬である。今度でいいから少しくらい乗ってみたい。


「もしかよかったらわたし、厩舎の方に馬が残っていないか確認してきますよ」

 背後から声がする。びっくりして振り向く。

いつの間にか授業前に指示を送っていた教員助手の先生がいるではないか。しかも、話を理解している様子だ。実は結構前からいて、気配を消し話に入るタイミングをうかがっていたのだろうか。ブレアだけは何を考えているか分からないが、先生も見事に目が丸くなっている。


「おっ、おう。よろしく頼む。もし見つからなそうだったら、ベルナール先生のいる厩舎に行って、先生の指示に従って馬を持ってくるように。今日はその馬を使って授業を受けてもらうぞ」

「ありがとうございます。回していただけるならばどんな馬でも乗りますよ」

 いよいよ騎乗できるというワクワク感から、新米騎手(あんちゃん)あんちゃんのようなレスポンをする。これまた先生たちの目が丸くなった。

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