事例8 架空『四式陸上攻撃機』 (500番5号爆弾 搭載型)
『怪獣大戦1941 ~ 戦艦大和、怪獣と激闘す』の第八話『対怪獣 新型兵器』に登場する機体です。
5トン徹甲爆弾(四式500番5号徹甲爆弾)を運用するために、二式大艇を元に開発された機体です。怪獣攻撃に特化しているため、搭載火器・防弾装備はありません。
陸上攻撃機ですが、二式大艇をベースにしているので、型式はG5K1ではなくH8K2-Gとなります。
■飛行艇→陸上爆撃機でどうなるか?
さて、いつも通り元となる機体の定数を計算する前に、飛行艇から陸上爆撃機に設計を変えた場合に、どのくらい機体定数が変わるか見積もってみます。
これには実はちょうど良いサンプルがありました。英国サンダーランド飛行艇とスターリング爆撃機です。スターリング爆撃機は英国初の四発爆撃機ですが、その元となったのは同じショート社のサンダーランド飛行艇でした。
爆撃機化するにあたって、エンジンと胴体は変更されましたが、主翼と尾翼はあまり変わっていません。つまり今回参考にするには、うってつけの事例と言うわけです。
まずはサンダーランド飛行艇の定数Aを求めてみましょう。
ショート・サンダーランドⅢ
全備重量:26308kg
エンジン:ブリストル ペガサス18(離床出力 1065 hp) x 4
最大速度:340 km/h(高度2000m)
Vz = 340km/h = 94.4m/s
G = 26308kg
Nz = 1020hp x 2(高度2000m 100オクタン燃料)
以上から定数Aを計算します。
A = V^3・G/N = 94.4^3 x 26308 / 1020x4
= 5424299
次に、スターリング爆撃機の定数Aを計算してみましょう。
ショート・スターリング Mk.I
全備重量:26943kg
エンジン:ハーキュリーズMk.XI(離昇1500hp) x 4
最高速度:454 km/h(高度3800m)
Vz = 454km/h = 126.1m/s
G = 26943kg
Nz = 1315hp x 4(高度3886m 100オクタン燃料)
A = V^3・G/N = 126.1^3 x 26943 / 1315x4
= 10270828
サンダーランド飛行艇とスターリング爆撃機の定数Aの比率は次のようになります。
10270828 / 5424299 = 1.89
飛行艇を爆撃機化することで、定数Aは1.89倍になってます。これを参考に二式大艇の爆撃機化の数値を検討します。
■定数の計算
それではようやく、いつも通り、実機の性能から定数Aを計算しましょう。元となるのは二式大艇一二型(火星二二型装備)です。
全備重量:24500kg
発動機:三菱火星22型(離昇1850馬力) x 4
最高速度 465km/h(高度5000m)
Vz = 465km/h = 129.2m/s
G = 24500kg
Nz = 1500hp x4(高度5000m) と推定
この速度、重量、出力から定数Aを計算します。
A = V^3・G/N = 129.2^3 x 24500 / 1500 x 4
= 8806480
この数字を見るだけでも、いかに二式大艇がサンダーランドより優れいてるか分かりますね。
■定数の推定
さて、この機体を陸上機化すると、機体の定数Aはどう変わるでしょうか。
サンダーランド→スターリングの例では定数は1.89倍になっていました。駄っ作機ぎりぎりのスターリングですら、こんなに上がっています。そこで四式では銃座もないので2倍になると仮定します。
A = 8806480 x 2 = 17612960
■機体重量の推定
次に機体重量を考えてみます。
サンダーランド→スターリングの例では、全備重量はほとんど変わっていません。これは胴体が小さくなっても、エンジン換装や陸上機化のために、構造強化や脚の追加が必要だったからと思われます。
四式は陸上機化と5トン爆弾搭載のため相当機体が強化されていますが、対怪獣専用なので防弾装備や機銃は装備していません。
エンジンは時期的に火星二二型から、ハ104-Ⅱに変更したい所ですが、開発期間の短縮と敵戦闘機を想定していないことから、火星二二型のままとします。
以上より、機体重量は二式大艇から若干減るとして1割減としています(適当)。
G = 24500 x 0.9 = 22000
■最高速度の計算
これで必要なデータは揃いました。
G = 22000(二式大艇の0.9倍)
Nz = 1500hp x 4(高度5000m)と推定
A = 17612960(二式大艇の2倍)
以上を用いて速度Vzを計算します。
Vz^3 = A・Nz/G = 17612960 x (1500 x 4) / 22000
= 4803535
この三乗根をとって速度をだします。
Vz = 168.7 m/s = 607 km/h
結構、高速な機体となりました。まあ軽い機体に火星を四発も積めば、こうなると思います。
ちなみにエンジンをハ104-Ⅱ(2100hp 高度5000m)に変更して、機体重量が1割アップ(24500kg)とすると、最高速度は655km/hくらい出る計算になります。