事例2 架空『九九式B号戦闘機一一型』 (F2Aバッファロー 日本海軍版 その1)
『日の丸バッファロー ~ 野牛は日本にドナドナされました』に登場する機体です。
ブリュースター社が米海軍のコンペに負けて、日本海軍とライセンス生産契約を結んだことで生まれた機体という設定です。
機体はF2A-1とフィンランドの使ったB-239の中間くらいの機体、武装は7.7mm機銃のみ6丁、防弾あり、エンジンはセバスキー2PAと同じ、という構成です。
■定数の計算
まずはいつも通り、F2A-1の性能から定数Aを計算します。
ここで問題となるのが速度計測時の条件です。日本では全備状態が基本でしたが、米軍の場合は燃料半分、弾薬なし、なんて場合もあります。日本の軽荷相当かそれ以下です。
さて、F2A-1ですが、その484km/hという速度は妙に速いですね。それに空力改善後の試作機XF2A-1と大して変わりません。つまり防弾なし・弾薬なし・燃料は160ガロン(600L)の機体とあまり変わらないという事です。
そこで、F2A-1の定数を計算するにあたって、試験時の機体重量は全備重量より大幅に軽かったと想定して計算しました。
また、R-1820-34は1段1速の過給なので高度が上がると急激に性能が低下します。性能曲線から見て速度計測をした高度約5000mでの出力を推定します。
V=484.41km/h = 134.5m/s (高度5182m)
G=2000kgとして計算 (乾燥重量 1716.84kg/全備重量 2290.9kg)
N=940hp(海面高度) → 750hp(高度5000m)と推定。
以上より高度5000mでの定数Aを計算します。
A = V^3・G/N = 134.5^3 x 2000 / 750
= 6488370
■F2A-1の実力推定
ではこの数字を用いて、試しにF2A-1がもし全備状態だった時の速度を計算してみましょう。
N=750hp (高度5000m)
G=2291kg
Vz^3 = A・Nz/G = 6488370 x 750 / 2291
= 2124084
Vz = 128.5m/s = 462.8km/h
結果は463㎞/hとなりました。まぁ妥当なところでしょうか。本当の実力はこんなものだったと思います。
■計算条件の設定(エンジン出力・機体重量・定数)
では、ようやくとなりますが、本命の仮想『九九式B号戦闘機一一型』の速度を計算してみます。
エンジンはセバスキー2PAのR-1820-G5に換装しますが、R1820-34とほぼ同じエンジンなので出力は変わりません(G5の軍用モデルが34)。
機体重量は、燃料・装甲・武装で重くなりますが、着艦装備が無いのと三菱の軽量化努力でF2A-1より若干軽くなるとします(適当)。空力も5%向上するとして定数Aを修正します(超適当)。
N=750hp (高度5000m)
G=2200kg(F2A-1より若干軽量と設定)
A'=A x 1.05 = 6488370 x 1.05 = 6812788(空力5%向上と仮定)
■最高速度の計算
以上の数値を用いて、最高速度を計算します。
Vz^3 = A・Nz/G = 6812788 x 750 / 2200
= 2895435
Vz = 132.5m/s = 477km/h
零戦・隼よりは鈍足ですが、九六式艦戦よりは優速で急降下性能・ロール性能は遥かに上の機体となりました。
■おまけ 同時代の機体と比較(零戦・隼)
さて、この機体は強かったのでしょうか?一つの目安として翼面荷重、馬力荷重で他の機体と比べてみます。馬力は離昇出力です。
これを小さい順に並べると、こうなります。
翼面荷重:九六式艦戦 < 零戦 < B号一一型 < 一式戦Ⅱ型
馬力荷重:B号一一型 = 一式戦Ⅱ型 < 零戦 = 九六式艦戦
あくまで目安ですが、翼面荷重が小さいほど小回りが効き、馬力荷重が小さいほど加速、上昇力が良くなります。
つまりB号一一型は最高速度こそ遅いですが、隼よりは小回りが効いて、零戦より加速のよい機体という事になります。しかも急上昇・急降下が得意ときている。
うん、なんか大戦初期レベルの機体で相手にするとしたら、少し面倒くさそうな機体になりました。実はこの傾向は史実のF2A-1でもあまり変わりません。フィンランドで活躍できたのも納得です。
次回は、架空『九九式B号戦闘機二二/三三型』 (F2Aバッファロー 日本海軍版 その2)です。