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架空機の速度を計算してみよう! ~ 『飛行機の主要諸元を決定する一簡易法』を利用した最高速度の計算  作者: もろこし


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13/13

事例11 架空『日本陸軍 木製戦闘機』

 『旧日本陸軍における木製戦闘機の開発過程と技術的特質』に登場する機体です。


 この世界の日本では耐水合板が戦前に開発され、それによって陸軍の戦闘機が木製になっているという設定です。


 構造と材質が木製ですが、エンジンや機体形状は史実と同一です。なので今回は架空機のイラストはありません。すいません。


 木製機はフェノール樹脂を含浸した薄板を重ねて加熱加圧成形した部品を接着して組み上げられています。外板自体が強度を持っていますので胴体や翼内には貼り合わせのリブ以外に桁がありません。つまりイギリスのモスキートとソ連のLaGG-3の中間のような構造となっています。


 耐水合板の比重はジュラルミンのおよそ半分ですが引張強度は6割程度ですので、同じ強度を得るには厚くなります。しかし桁がない構造のためプラスマイナスで史実の機体と重量がほぼ同じくらいと考えます(ソ連の木製機は金属機と同じような桁構造である上に外板も厚いので重いです)。


「エンジンも形状も重量も同じなら性能も同じだろう」


 皆さんそう思うでしょう。しかし実はそうはなりません。


 日本機の写真をみると翼や胴体がかなり凸凹しています。欧米機の表面はだいぶマシですが、あんなに美しいP-51ですら実際は層流翼を活かせていなかったらしいので、表面仕上げは馬鹿にできません。


 それが木製機だと違ってきます。なにしろ木製なので機体の表面を削って滑らかに仕上げることができます。これで空気抵抗が大きく減るはずです。実際にイギリスのモスキートもその機体の滑らかさが高速発揮に大きく貢献していたそうです。


 では表面が滑らかになると、どれくらい性能があがるのでしょうか?


 ロシアのストレラ・プロダクション・アソシエーツ(Strela Production Associates)のレプリカ零戦はツルツルピカピカで比較対象に良さそうなのですが、エンジンが違っていて、そのおかげでカウリング直径も大きく、そもそも性能も未公開なので検討の役に立ちません。


 そこで他に探してみると参考になる例が見つかりました。


■零戦二一型の事例


 零式艦上戦闘機二一型は、強度確保のためみ途中で主翼の外板の厚さが0.5ミリから0.6ミリに増厚されています(ちなみにロシアのレプリカ零戦の外板厚は1.5ミリもあります)。


 これによる機体重量の変化はほとんどありませんでしたが、最高速度が時速275ノット(時速509キロ)から288ノット(533キロ)に大きく上昇しました。これは板厚増加により主翼表面が滑らかになった結果だとされています。


 つまり機体が少し滑らかになっただけで最高速度が24キロも上昇したのです。ではこの板厚増加によって空気抵抗はどのくらい減少したのでしょうか?


 ここで『飛行機の主要諸元を決定する一簡易法』の式を見てみます。


挿絵(By みてみん)


 Vz^3 = 75 x 16・ρ0・η・Nz / ρz・Cx・F

 F・Cx / η= a・G


 Vz:高度zでの最高速度(m/s)

 ρ0:海面空気密度 (kg・sec^2/m^4)

 ρz:高度zでの空気密度 (kg・sec^2/m^4)

 η:プロペラ効率

 Nz:高度zでのエンジン出力(hp)

 Cx:抗力係数

 F:主翼面積(m2)

 G:機体総重量(kg)

 a:常数


 例よって難しそうな式ですが、機体の空気抵抗(Cx:抗力係数)以外は変わらないとすると、とっても簡単になります。


 Vz^3 = A / Cx (Aは定数です)


 つまり速度の3乗は空気抵抗に反比例するということです。


 零戦二一型の例で、板厚増加前の速度と空気定刻をV1、C1、板厚増加後をV2、C2とすると次の式がなりたちます。


 V1^3 = A/C1

 V2^3 = A/C2


 零戦21型のケースでは最高速度が10ノット増加=4%向上だったので


 V2 = 1.04 x V1


 これら3つの式を整理すると、このようになります。


 C2 = C1 / 1.125 = 0.889 x C1


 つまり空気抵抗が11パーセントも低減していることが分かりました。


■木製機化による速度の向上


 外板をちょっと厚くしただけで空気抵抗がこんなに減っています。それでも零戦二一型の外板は決して滑らかではないですから、全木製機のようにつるつるピカピカならば、空気抵抗はもっと低減されると思われます。


 先ほどと同様に史実機体の速度と空気定刻をV1、C1、木製機の速度と空気抵抗をV2、C2として、木製機化による空気抵抗の改善率を(ちょっと控え目ですが)15パーセントくらいと仮定します。


 V1^3 = A/C1

 V2^3 = A/C2

 C2 = 0.85 x C1


 以上の3式から木製機化後の速度V2を計算すると、こうなります。


 V2 = (1/0.85)^(1/3) x V1

   = 1.056 x V1


 つまり速度が5パーセント強も上昇することになります。これを主要な陸軍機にあてはめると最高速度の変化はこのようになります。


■計算結果


一式戦闘機 隼三型(キ43-Ⅲ)

578km/h → 610km/h


二式戦闘機 鍾馗二型(キ44-Ⅱ)

615km/h → 649k/h


四式戦闘機 疾風一型(キ84-Ⅰ)

624km/h → 659km/h


 かなり速度が向上しますね。まあ、あくまでも参考ということで。



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― 新着の感想 ―
木材であればアルミニウムと比較して厚みを確保する都合上、翼内燃料タンクが小さくなり航続距離が短くなりそうですね。 この時代の航空機の場合、主脚も翼内に入れるだろうし燃料タンクの容量確保は中々大変そうだ…
仕事中暇つぶしに、AIさんに一式陸攻の翼下の追加に貼った防弾ゴムの表面を現代の競泳水着のような鮫肌調にしたら空気抵抗が減ってどないやねんなと質問しましたら、飛行の圧で変形するので意味がないといわれまし…
一式戦闘機 隼三型(キ43-Ⅲ) 578km/h → 610km/h 二式戦闘機 鍾馗二型(キ44-Ⅱ) 615km/h → 649k/h 四式戦闘機 疾風一型(キ84-Ⅰ) 624km/h → …
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