事例10 架空『零式陸上攻撃機一一型』 (仮想 火星二一型エンジン搭載型)
『戦神の星・武神の翼 ~ もしも日本に2000馬力エンジンが最初からあったなら 』の主人公?として、第九話『零式陸攻の誕生』に登場する機体です。
この世界の火星エンジンは史実より大排気量となり戦前の段階で2000馬力を発揮しています。その分、とっても重くてデカいですが。
本機は史実の一式陸攻と違い、その有り余る火星エンジンの大出力すべてを防御力に全振りした機体となっています。
■定数の計算
まずはいつも通り定数Aを計算していきます。
しかしここで問題となるのが、零式陸攻が完全に架空の機体であることです。胴体は一式陸攻のような丸断面でなく欧米のような角断面で、主翼も高翼形式を採用しています。
つまり史実の一式陸攻と機体の規模や形状が全く違うのでデータは参考になりません。
そこでなにか参考にできる似た様な機体がないか探したら、ありました!英国の『アブロ マンチェスター爆撃機』です。しかしこうやって同世代の双発爆撃機を並べると、色々と特色が分かりますね。
本世界の火星二一型エンジンは離昇2010hp、二速全開1730hpなので、機体の規模と形状がほぼ同じだとすればマンチェスターに近い性能を出せそうです。
というわけで、マンチェスターの定数Aをまず計算してみます。
Vz = 426km/h = 118.3m/s (高度5182m)
G = 21770kg
機体重量は英軍がFW190Aを試験した際の条件を参考にして、過荷重の96%としました。
Nz = 1760hp x 2(二速全開)
以上から、定数Aを計算します。
A = V^3・G/N = 118.3^3 x 21770 / 1760x2
= 10239293
これを基に零式陸攻の定数Aを考えます。
零式陸攻の胴体形状はマンチェスターとほぼ同じという設定ですが、発動機が大直径の空冷なので空力的に不利となります。
しかし尾翼は一枚な分、空力的に有利となり、さらに三菱が頑張って機体抵抗の低減に努めたことで相殺されたとして、定数Aはこのままとします。
■機体重量の計算
零式陸攻は機体の形状こそマンチェスターと似ていますが、その構造も燃料・爆弾搭載量もぜんぜん違います。
零式陸攻はマンチェスターより大幅に装甲と燃料の重量が多い代わりに、爆弾搭載量がずっと少なくなっています。
まず装甲重量についてざっと計算します。
零式陸攻の装甲配置は下のイメージ図の通りですが、面積と装甲厚と比重からざっくり計算した装甲重量は5トンとなります。
ただしマンチェスター自体も装甲を持っており、また零式陸攻は重要部位の構造材を装甲が受け持つので、そのまま単純にプラス5トンとはなりません。それらが相殺されるものとして、装甲による機体重量増加は2トンとしました(適当)。
その他の重量増減として、ざっとこんな感じで考えました。
発動機:マイナス500kg (バルチャー1111kg → 火星21型850kg)
爆弾搭載量:マイナス3900kg(4695kg → 800kg)
燃料搭載量:プラス4100kg( 6435L/4742kg → 零式陸攻 12000L/8840kg)
武装重量:マイナス800kg(動力銃座700kg+7.7ミリ機銃x8 → 13ミリ機銃x5)
以上から零式陸攻の機体重量はマンチェスター比でプラス900kgとしました(超適当)。
■最高速度の計算
これで必要な数字は揃ったので、いよいよ零式陸攻の最高速度を計算してみます。
G = 21770kg + 900g = 22670kg
Nz = 1730hp x2(仮想火星21型 二速全開 高度4900m)
A = 10239293
Vz^3 = A x Nz/G = 10239293 x (1730 x 2) / 22670
= 1562768
この三乗根をとって速度をだします。
Vz = 116 m/s
= 417 km/h
軍の要求仕様は398km/h以上なので、史実の一式陸攻には遠く及ばないものの要求仕様はクリアです。また燃料も一式陸攻の1.5倍、He177より多い12000リットルも搭載して航続距離もクリアしています。
爆弾搭載量は少ないですが、燃料を減らせば他国の爆撃機並みに搭載できます。
しかし2000馬力エンジンを2基搭載しているのに速度が遅いですね。九六式よりは速いですが第二次世界大戦では最も遅い双発爆撃機になりました。




