事例9 架空『二宮式 ハト型飛行機』(世界初の有人動力飛行機)
『ロシア人はネコスキー ~ ネコで旅順要塞を攻略せよ』の第十話に登場する機体です。
紆余曲折あって二宮忠八が日本陸軍の協力を得て開発し、ライト兄弟よりも早く世界に先駆けて有人動力飛行に成功した機体という設定です。
史実で二宮忠八は有人動力飛行のために「玉虫型飛行器」の製作を目指していました。しかし軍に飛行器開発を認めてもらえなかったため計画は中座してしまいます。
しかし仮にこのまま完成していたとしても理論やデータが伴っていないため飛行出来たかどうかは微妙だと思います。
ラジコンの模型機は飛行しています。また実物大のウルトラライトプレーンも製作されましたが、ジャンプしか出来ない機体でしかも事故を起こしています(https://www.mlit.go.jp/jtsb/aircraft/rep-acci/92-4-none.pdf)
いずれも二宮忠八の絵や模型とは形状が変更されています。
本作では軍の協力で資料も資金も得られ更に滑空機で経験も積めたので、より現実的な機体を設計したことになっています。
今回モデルとしたのは『エアコー(デ・ハビランド)DH-1』です。極初期の複葉機の中から推進式で古臭い形の機体を選んでみました。
この主翼形状を単純にして一人乗りに変更しています。玉虫型飛行器の面影を残すため翼上に日の丸を立てました。エルロンも玉虫型飛行器のように下翼内側にある設定となっています。
■定数の計算
まずはいつも通り、DH-1の性能から定数Aを計算します。WikiによればDH-1の緒元は以下の通りです。
・発動機出力 70馬力
・最高速度 130km/h
・全長:8.83 m
・翼幅:12.50 m
・翼面積:39.6m2
・空虚重量:616 kg
・運用時重量:927 kg
・乗員 2名
これから機体定数Aを計算します。
V = 130km/h = 36.1m/s
G = 927kg
N = 70hp
A = V^3・G/N = 36.1^3 x 927 / 70
= 623597
■ハト型飛行機の速度計算
ハト型飛行機の機体形状はDH-1とほとんど変わりませんが、一人乗りとなりエンジンも小さく12馬力しかありません。しかしその分軽量となります。ここではざっくりと機体重量は600㎏としてみました。
ちなみにライト兄弟のライトフライヤーは同じエンジン出力12馬力で機体重量は338kgだったそうです。軽いですね。
定数Aについても見直します。コックピットの覆いが少ないため空気抵抗が大きく、プロペラも未成熟で効率が悪いはずなので、DH-1より2割減としてみました。
G = 600kg
A = 623597 x0.8 = 498878
N = 12hp
以上の数値を用いて、最高速度を計算します。
V^3 = A・N/G = 498878 x 12 / 600
= 9978
V = 21.5m/s = 77km/h
なんと機体重量が半分ほどしかないライトフライヤー(48km/h)より速くなりました。機体の設計がいかに重要か分かります。そりゃあ初飛行が12年も違いますから当然ですよね(ライトフライヤー:1903年/DH-1:1915年)。




