傭兵団からの使い
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「あーーー村長に会いたいんだが、居るかい?」
ガイスが前に出て男に答える。
「あんたは何処の誰だ?村長に何の用だ?」
「俺は見ての通り、傭兵だ。名前はロウ。此処には任務で来た」
「任務?何の?」
「これを届けるのと、この村の警護だ。‥‥‥これ、領主からのお達しだとさ」
その男-----ロウは手にしていた書状を皆に見せた。
「領主様からのお達し?本当か?」
「嘘ついてどうすんだよ。村長は居ないのか?」
村長がゆっくりとロウに近付いて行った。
「すまんの。悪く思わないでくれ。ワシがナズナ村の村長、ヨナンじゃよ。いろいろあって、皆少し気が立っておるんだよ」
「あぁ‥‥‥魔獣の件か?」
「そんなところだよ。で領主様は何と?」
「これを読んでくれ。話はそれからだ」
ロウは村長に書状を渡すとぐるりと村人達を見回し、急に動きを止めた。
人垣の向こう、地面に座り込んでいるノトをじっと見つめている。
「お前‥‥‥‥‥もしかして、ノトか? ナバナ村の」
ノトはにっこりと笑って答えた。
「うんそうだよ。やっぱりロウだったんだね。そうじゃないかなって思って見てた」
ロウはノトの方へ歩いて行く。
ノトは笑顔だったが、寄り添っていたユゥナは緊張で身を固くしてノトの背に隠れた。
「久しぶりだな。まだ森の魔法使いの弟子をしてるのか?」
「そうだよ。本当に久しぶりだね。ロウは傭兵を続けているんだね」
「まぁな、他に出来ねえし。それより、何で地面に座り込んでんだ?」
「ははは、ちょっと魔力切れ‥‥‥」
「何やったんだ?‥‥‥‥‥まさか、村の壁を造ったのはお前か?」
「そうだよ。流石に疲れちゃったよ」
「なんとまぁ‥‥‥よくやったな、正直助かるよ」
「助かる?」
「あぁ、書状にも書いてあるんだが俺等はナズナ村の警護に来たんだ。壁があれば、村人を護るのが楽になる。ありがとな、ノト」
「そうか、良かったよ役に立てて。俺等ってことはロウ1人じゃないの?」
「レイやコウ、ウルサとヴァルも一緒だ」
「ナバナ村の皆だね」
「俺等は同郷の5人で組んでんだ。会うのは久しぶりだろ?」
「うん、久しぶりだよ。それで、他の皆は?」
「手分けして村の周りに魔獣除けを撒いてる。そろそろ来るんじゃないかな」
「魔獣除け‥‥‥‥‥そうだよ、魔獣除けだよ。すっかり忘れてた。基本なのに。ロウ、ありがとう!」
「ん?あぁ」
「おぉーーいロウ、終わったぞー」
門からロウと同じ服装の男達が4人入ってきた。
皆、がっちりとしていていかにも戦闘向きと言った感じだった。
耳と尻尾から推測すると、黒豹、虎、熊、狐‥‥‥の獣人と思われる。
4人を見て村人達がざわつく。
「あーー皆、静かに。彼等はナズナ村の警護に来てくれた傭兵の方々だ。領主からの書状に書いてあった。領主と彼等に感謝せねばならんぞーー」
村長が大きな声で村人に説明すると、歓声が上がった。
皆が喜びと感謝を口にする。
「皆さん、本当にありがとう。宜しくお願い致します」
村長が言うと皆も頭を下げた。
「こうも喜ばれると変な感じだな‥‥‥だいたい俺等は歓迎されないからな」
「そうだな、変な感じだ」
「「 だな 」」
4人は照れ臭そうにロウに近付いて行った。
ロウも彼等に向かって歩いて行く。
「無事に撒けたか?」
「あぁ勿論。壁沿いに撒いていった。余ったから畑の周りにも撒いておいたぞ」
「そっか、お疲れ様。‥‥‥‥‥お前等、驚くぞ」
「何が?」
「向こうを見てみろ。座り込んでる奴‥‥‥懐かしい奴が居るぞ」
「懐かしい奴?」
4人はロウが指差した方を見ると驚きで目を見開いた。
「「「「 ノト! 」」」」
「やぁ皆、久しぶり。元気そうだね」
「お前、何で地面に?」
「何してんだ?」
「女の子に支えてもらって」
「羨ましいぞ」
「はははは、理由はロウに聴いて。僕はちょっと回復薬を飲ませてもらうよ」
ノトは取り出した回復薬を一気に飲み干した。
疲れた表情はとれてきても、まだ顔色は良くなかった。
「ノト、大丈夫?まだ休んでいた方がいいわ」
「ありがとうユゥナ、大丈夫だよ。彼等が魔獣除けを撒いてくれたし、僕がやることはもう無いから」
「そう?‥‥‥‥‥あの人達は知り合いなの?」
「うん、幼馴染みって言うやつだよ。ナバナ村で一緒に育った仲間だよ」
「幼馴染み。そうだったの‥‥‥」
「幼馴染みだったのか、なるほど」
いつの間にか側に来ていたガイスが頷きながら言った。
他の村人達も、そうかそうかと口にした。
彼等5人がノトの幼馴染みと分かり、村の雰囲気が一気に和やかになった。
「ノト殿の幼馴染みとは‥‥‥安心してお任せ出来ますな。なんとも心強い」
村長の言葉に皆が頷いた。
出来たばかりの櫓の部屋を彼等5人に使ってもらうことになった為、ベッドやシーツを村中からかき集めて部屋を設えた。それでも、全員には足らなくて3人分しか揃わなかったが、交代で仮眠をとるので問題無いと言われてホッと安心する村人達であった。
ロウ達が部屋に向かうとガイスが後を追って行った。
「すまんがちょっといいか?」
「何だ?」
「俺はガイスだ。宜しく頼む。その‥‥‥言いにくいんだが、此処には若い者が少ないんで、娘達を刺激しないでほしいんだ。その、申し訳ないんだが‥‥‥」
「刺激?」
ガイスは外に視線を向けた。
広場では若い娘達が数人集まり、櫓の方を見ながらはしゃいでいる。
「若い男達は他所へ働きに行っていて、残っているのは年寄りや子どもばかりでな。あんた達は若くて見た目もいい。しかもノトの幼馴染みなら安心感もある。‥‥‥俺も若い頃、傭兵をしていたからいろいろ理解しているんだが、すまん、此処では大人しくしていてくれ」
「大丈夫です、分かってますよ」
黒豹の獣人レイが答えた。
黒髪、黄緑の瞳の知的な雰囲気の男だ。
「あぁ、ノトの顔を潰すような事はしない」
茶の髪に黄緑の瞳の虎の獣人、コウが続けて言った。
「「「 当然だ 」」」
ロウと焦げ茶の髪にオレンジ色の瞳の熊の獣人ウルサ、赤茶の髪にオレンジ色の瞳の狐の獣人ヴァルが頷いた。
「そうか、ありがとう」
「ガイスさんも大変ですね。自分はレイと言います。お訊きしたいんですが、この村で戦力になるのはガイスさん以外に何人います?」
「俺以外か‥‥‥4~5人ってとこか」
「そうですか‥‥‥もしもの時は協力をお願い致します。魔獣は我々が相手をしますので、村の護りを頼む事になるかと」
「勿論だ。それにしても5人も来てくれて頼もしいよ」
「石壁や櫓があるなんて情報は無かったので。あれば、もっと少なかったと思いますよ」
「そうか、本当にノトには感謝だな。‥‥‥しかし、何で傭兵なんだ?冒険者の方が魔獣には慣れているだろうに」
「確かに我々は対人、対獣人の戦闘の方が慣れていますが、魔獣や魔物と戦闘になる事もありますよ。冒険者達は魔物・魔獣退治に駆り出されて人手不足なので、傭兵団に依頼がきたんです」
「そうだったのか‥‥‥人手不足になるほど魔物や魔獣が増えてるのか‥‥‥」
「数が増えてるのか、人里に出てきているだけなのかは不明ですがね」
「ふむ‥‥‥」
「櫓もありますし交代で見張りに付きますから、何かあったら鐘を鳴らして報せますよ」
「あぁ、宜しく頼む」
ガイスは頭を下げてからその場を後にした。
「さーて、俺等これからどうする?」
「そろそろ日が暮れるから、飯食って交代で見張りってとこか?」
「そうだね」
「ベッドがあって助かったな」
「あぁ、櫓も助かる」
「ノトに感謝だな」
「なぁ‥‥‥ノトの側にいた娘、恋人かな?」
「じゃねぇか、引っ付いていたし、同じ兎の獣人だし」
「似合いだったな」
「うん、いいな‥‥‥」
「俺も恋人が欲しい。今年の秋祭りは本気で頑張る」
「ヴァル‥‥‥もう1人に決めるのか?」
「そうだよ。いい娘はすぐに決まっていっちゃう」
「確かにな‥‥‥」
「俺も頑張ろうかな」
「俺も」
「え?ウルサとコウも?」
「そうだよ。‥‥‥ノトを見てて羨ましくなった」
「だよな」
ヴァルとウルサとコウはノトに刺激されて恋人を作ろうと決めたのであった。
「お前ら‥‥‥‥‥レイはどうなんだ?まだ独り身でいるだろ?」
「どうかな、いい娘がいたら考える」
「う~~~俺はまだまだ独り身を楽しむぞ」
「そう言う奴ほど早かったりしてね」
「はははは」
彼等が談笑していると、村人が食事を運んできた。
ありがたくご馳走になると、交代で櫓の上で見張りに付いた。
一方ノトは、ガイスの家で夕食をご馳走になっていた。
楽しい一時はあっという間で、泊まるように言うガイスに丁重に断りをいれると、ノトは家を出た。
ユゥナに「また来る」と告げて箒に跨がった。
手を振るユゥナに笑顔を向けて飛び立つと、真っ直ぐに櫓に向かった。
櫓まで行くと、浮かんだまま声をかける。
「お疲れ様、ロウとレイが見張りに付いてるんだね」
「おぅ」
「もう帰るの?此処に泊まらないんだ?」
「うん、そうしたいのは山々だけど仕方ない。師匠に相談したいこともあるしね」
「そっか、気を付けてな」
「皆が居てくれて安心だよ、ありがとう」
「じゃあな」
ノトは手を振ると森の家に向かって飛んでいった。
「魔法で飛べるっていいな」
「あぁ便利だよな~~いいな魔法使い」
「ロウだって魔法を使えるだろ?」
「少しだけな。ちょこっと風を起こすだけ。レイも使えるだろ?」
「俺も同じ、少しだけ。小さな石を飛ばすくらい」
「ノトはすげぇよな」
「そうだね」
2人は暗闇の中飛んでいくノトを見送った。
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