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蟻塚の中

見つけてくださり、ありがとうございます✨



 蟻塚は一面土で塗り固められ、窓はおろか出入口らしきものは見当たらなかった。

 ベリルが右腕を肩の高さまで上げ、掌を蟻塚に向ける。

 掌から、水が物凄い速さで放たれた。

 まるで鋭い刃のようだ。

 水の刃は蟻塚の壁を綺麗に切り取っていく。


 -----きゅるきゅるきゅる‥‥‥。


 -----ドスンッ。


 切り取られた壁が中へ倒れ込んだ。


 メルクリウスが蟻塚へ近付いて行く。


 「公爵達は少し待っていてくれ。私が見てくる」

 「いえ、そう言う訳には」

 「我々は頑丈だからね。毒があっても平気だし」

 「‥‥‥承知致しました」


 メルクリウスが蟻塚の中へと入って行った。

 中は心地好い温度で過ごしやすい。

 かなり広々としていて、城の広間くらいはありそうだった。

 地面には無数の卵の殻が落ちている。

 上を見上げると、壁には仕切られた部屋の様なものがあり、其処にも卵の殻が散乱しているのが見えた。


 ‥‥‥‥‥かなりの数が孵化したんだな。部屋が上まであるとしたら物凄い数だ。‥‥‥特に毒等は無さそうだ。だが、どうにも嫌な感じだなぁ‥‥‥‥‥こう‥‥‥悪意と言うか邪念と言うかそんなものを感じるな、気分は良くないな。‥‥‥上まで行ってみるか。


 メルクリウスは再び翼を出すと飛び上がった。

 ぐんぐんと上を目指す。

 周囲にはぐるりと部屋が見え、やはり殻が確認出来た。

 上に行くほど少しずつ狭くなっていく。

 かなり上昇したところで、天井に突き当たった。

 此処まで卵の殻以外は何も無い。


 ‥‥‥‥‥天井を壊すのは不味いだろう。部屋と殻ばかりだったな。生き物の気配も無い。下へ戻るか。


 メルクリウスは下へ降りていくと、翼を消して外に出た。

 ベリルが声をかける。


 「どうだった?」

 「天井まで行ってみましたが、生き物の気配はありません。部屋が無数にあってかなりの数の卵の殻が散乱していました。孵化した後ですね」

 「‥‥‥そうか」


 公爵が慌てた様子で口を挟んだ。


 「卵の殻?孵化?それはイーブル・アントですか?まさか、エキトンとか言う魔物の可能性は?」

 「父上、エキトンとは?」

 「聴いた事があるんだ。イーブル・アントよりも凶暴で集団で移動し、その通り道には生き物は何も残らないと言う‥‥‥」

 「何ですか、それは。本当に蟻ですか?」

 「聴いた事ありませんよ?」


 ドラゴに続きレオンも驚きの声をあげる。



 「エキトンは、東の大陸には生息していないはずだ。あれは南の大陸の密林にいるものだよ」

 「ベリル様、殻だけではイーブル・アントなのかエキトンなのか判別出来ません」

 「ん‥‥‥確か‥‥‥エキトンは巣を作らないと思ったんだが‥‥‥」

 「ではこの卵はイーブル・アント?」

 「‥‥‥どうかな。何者かがエキトンを持ち込んで繁殖させた可能性もあるからね。分からない」


 皆の表情が険しくなる。

 ドラゴがふと、気が付いたように口を開いた。


 「ベリル様、メルクリウス様、‥‥‥この蟻塚は出入口がありませんでしたよね。孵化した蟻達は何処へ行ったのでしょう?」

 「確かにそうだね。‥‥‥中へ入ってみるか」

 「中は毒等はありません。ただ、こう‥‥‥嫌な感じがあったので気を付けてください」

 「嫌な感じ?」

 「悪意と言うか邪念というか‥‥‥気持ちの良いものではなかったです」

 「正にトレント達が言っていた『 嫌な気配 』だね」

 「そうですね」

 「まぁとにかく、行ってみよう。公爵達も大丈夫かな?」

 「はい、ご一緒します」


 メルクリウスを先頭に一行は蟻塚の中へと入って行った。


 地面に散らばる殻を避けて歩く。

 ベリルが立ち止まり、じっと地面を見つめる。

 掌を地面に向け、小さく風をおこすと殻を吹き飛ばし綺麗に露出させた。

 地面には何やら文様が描かれている。

 ベリルは屈んで文様に触れてみた。


 「‥‥‥これは、魔方陣だね。発動は出来ないようだが」 


 ベリルの言葉に皆が集まって来る。


 「魔方陣ですと?」

 「あぁ、何処か壊されているのか発動は出来ないみたいだが、魔方陣だね」

 「と言う事は、何者かが此処で孵化した蟻達を何処かへ移動させた‥‥‥」

 「そうなのだろうね」


 ベリルはゆっくりと立ち上がると皆を見回した。


 「何者かは分からないが、何か意図があるのは間違いないだろう。公爵、魔王殿(どの)への報告は任せてもよいだろうか?そして、魔国でも調べてもらいたい」

 「はい、ベリル様。勿論です。この数の魔物が‥‥‥イーブル・アントだったとしても、人々の住む処へなだれ込んで来たら大変な事になります。数百年も前に地上であったという、スタンピードが起きてしまいます」

 「スタンピード‥‥‥」

 「確か‥‥魔物・魔獣の大暴走‥‥大襲来‥‥でしたっけ?学院で習った覚えがあります」

 「あぁそうだ。あんなものが魔国で起きたらとんでもない。ベリル様、地上ではどの様に治めたのですか?」

 「あれは‥‥‥君達魔族が地下に移住して100年位経った頃かな、魔の森では魔物や魔獣がかなり増えてね、食料が足らなくなったのだろう‥‥‥ある魔物の群れが暴走を始めたんだよ。 次々に他の魔物や魔獣も加わり森を抜け、人里にやって来た。 幾つもの集落や国が無くなったよ。 当時、人族にも魔力や腕力の強い者がかなりいたから真っ向から戦った。人族、獣人族、そこにドワーフやエルフも加わった。彼方此方に散らばっていた魔法使いや魔女達も加勢した。連合軍と言ったところかな」

 「魔法使いや魔女は分かりますが、ドワーフとエルフも加わったのですか?」

 「そうだよ。魔物達がいつ暴走の進路を変えて自分達の国や里に来るか分からない。何とか止めようと皆が協力したのさ」

 「なるほど‥‥‥」

 「その結果、被害は大きかったものの魔物達の暴走を食い止める事が出来た。魔物や魔獣も随分と数を減らしたよ」

 「あの‥‥‥ベリル様は手を出さなかったのですか?」

 「出さなかった。‥‥‥女神から、手出し無用と釘を刺された」

 「創世の女神から?」

 「そう‥‥‥魔物の増加は森から魔族がいなくなった事が原因だ。魔の森の頂点にたち、上手くバランスをとっていた魔族を追いやった人族達に気付かせたかったのだろうね」

 「‥‥‥‥‥」

 「人族にも理解している者はいる。それ以来、魔物が増えすぎないように定期的に魔物狩りを行うようになった。それが冒険者ギルドの始まりだよ」

 「そうだったのですね」

 「何者が何の目的を持っているのか分からぬが、対策をとっておかなければならないだろう。その辺りは任せるよ」

 「はい、お任せください」


 公爵、ドラゴ、レオン、従者達は力強く頷いた。


 「さて、我々は帰ろうか」

 「はい、ベリル様」


 「お待ちください。このままお帰しする訳には参りません。我が屋敷へお寄りくださいませ」

 「公爵、気遣いは無用だよ」

 「そうは参りません。我が妻もベリル様にお会い出来るのを楽しみにしておるのです」


 公爵は必死の形相で訴えた。


 「私からもお願い致します。母はそれはもう楽しみにしていました」

 「そうです。朝からそわそわと準備をしていました。どうかお寄りくださいませ」


 ドラゴとレオンも加勢する。


 「‥‥‥‥‥では、お邪魔するとしようかメルクリウス」

 「はい、そう致しましょう」



 公爵はホッと息をついた。


 「ドラゴ、このまま魔王陛下に報告に行ってもらっていいか?」

 「勿論です父上。ポータルにある、転移陣を使います」

 「任せたぞ」


 「ベリル様、私はこれにて失礼致します。またお会い出来るのを楽しみにしております」

 「あぁそうだね。また会おう」


 ドラゴはベリル達に頭を下げるとレオンに近付き、囁いた。


 「レオン頑張れよ。ローズの情報をしっかり集めろ」

 「‥‥‥‥‥了解」


 ドラゴと従者2人が馬に跨がり皆に手を振ると走り出した。



 「さぁベリル様参りましょう」

 「あぁ宜しく」


 森へ向かった時のように馬車に乗り込み、一行はスタロット公爵領へと向かった。

 

 


 

読んでくださり、ありがとうございます✨

PV、評価、ブックマーク、大変励みになっております!

頑張って書いていきます✨

皆さんに良いことがありますように✨

 :*(〃∇〃人)*:

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