それぞれの想い
見つけてくださり、ありがとうございます✨
ローズ達は湖面を城に向かって進んで行った。
衛兵達が周りを囲んでいる。
なかなかに凄い光景だ。
「ねぇロータス?」
「何でございますか?」
「さっきの人って‥‥‥‥‥ううん、何でもない」
「姫様‥‥‥もしかして先ほどの男が気になりますか?」
「え? そんなことは無いわよ」
「それならば宜しいのですが‥‥‥あの者は人族の冒険者です。姫様のお相手としては、いかがなものかと‥‥‥‥‥」
「そうよね、あの人は人族だもの、私とは縁の無い人ね‥‥‥」
‥‥‥そう、あの人は人族。
‥‥‥私は人族ではない。
‥‥‥生きる時間が違い過ぎる。
‥‥‥どんなに、良いなって思っても、難しい相手。
‥‥‥やだ、私ったら。名前も知らない相手なのに。
‥‥‥もう会うことも無いのに。
ふと、あの人の顔が浮かんだ。
最後に此方を見て微笑んだあの人の顔が忘れられない。
---ポロポロ、ポロポロ---
はらはらと静かに涙が零れた。
‥‥‥やだ、何で? 何で涙が出てくるの? 困る、困るわ。 私ってば50過ぎたオバサンなのに、あんな若い男の人が忘れられないの?
---姫様、どうしました?---
---何か心配事でも?---
---先ほどの人族が何か?---
---今からでも、捕らえて参りましょうか?---
---それとも、首を取って参りましょうか?---
「‥‥‥え? 首? 駄目よーーーーー! 駄目!駄目! 何もしないで!私が勝手に泣いているだけよ。あの人は関係無いわ」
---ですが姫様---
---本当に宜しいので?---
「えぇ、何もしなくていいのよ」
---わかりました---
---何もしません---
‥‥‥あぁ、焦った。私はサロメじゃないわ。好きな男の首なんて、要らないわ!
‥‥‥なんか涙が止まったみたい。
‥‥‥私ったら、つい好きな男なんて。やっぱり、そういう事なのかしら。
「姫様、少し遠回りして戻りましょう」
「ありがとうロータス」
ロータスは魔物なのに、気が利くのね。
私はありがたくその提案を受け入れた。
暫く湖面の散策をしてから、私達は城へ戻った。
◇ ◇ ◇
水魔の湖を過ぎ、レオン達3人は更に奥へと進んで行った。
木々の幹は太く、大きく張り出した枝には葉が繁っていて、森の中は鬱蒼としていて暗い。
暗い森を迷いなく進んで行くと、道の両脇に廃墟が現れてくる。
崩れ落ちた壁、柱の残骸、どこも草が生い茂り、長い年月放置されていたことがわかる。
集落があったと思われる場所に十字路が見えてくると、3人は馬をゆっくりと走らせて十字路を右に曲がった。
草が生い茂ってはいても明らかに今でも使われている道をどんどん進んで行くと、いくらか開けた場所に着いた。
開けた草地の奥には、垂直な壁のように見える切り立った岩山がある。
岩山には蔦が這い、森の中では特に違和感の無い景色だ。
3人は馬から降り、馬の左耳の耳飾りを外した。
3頭の馬は一瞬光ると、一回り大きな体躯の8本の脚を持つスレイプニルに変化した。
そして彼等も自らの左手に嵌まった金色の指輪を外した。
一瞬光が彼等を包んだ。
光が収まった後に現れた彼等3人の姿は、遠目には先ほどと変わりはない。
近くに行かなければ変化には気が付かないだろう。
少し上部が尖った耳、金色の瞳、幾らか精悍な眼差し。
他は髪色も顔付きも、体型も変わらない。
その姿は魔族のものだった。
3人は再び馬に跨がると岩山に近付いて行った。
レオンが岩山に向かって声をかける。
「私は、スタロット公爵家第3子のレオン・スタロットだ。魔国への扉を開いてくれ」
---ズズッ---ズズッ---ズズッ---
地面から台座に乗った大きなガーゴイルが2体現れた。
ガーゴイルの身体は黒く、目は赤く光っている。
2体はかなりの距離を取り、岩山の前で3人を見つめる。
---確認した---通るがいい---
ガーゴイルがそう言うと、岩山に大きな門が浮き出てきた。
石で出来た壮麗な門は、少しずつ開いていく。
レオンは後ろを振り向き、遠くへと視線を向けた。
‥‥‥水魔の湖で出会った少女とまた会えるだろうか‥‥‥。
「どうした?レオン」
「いや、何でもないよブルーノ」
「ほら、もう門が開くぞ」
「あぁそうだな、トリスタン」
門が完全に開くと、3人は馬を走らせた。
門の奥は暗いトンネルが続いていて、両壁には等間隔で明かりが灯されていた。
3人が中に入ると門は閉まり、すぅっと消えていった。
そして、両側に控えていたガーゴイルは台座ごとゆっくりと地面に沈んでいった。
まるで何事もなかったかのように、蔦が這う岩山がそこにあるだけだった。
読んでくださり、ありがとうございます✨
PV、評価、ブックマーク、大変励みになっております!
皆さんに良いことがありますように✨




