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湖面のお散歩

見つけてくださり、ありがとうございます✨


 廊下を歩きながら、然り気無く周りを眺めてみた。

 等間隔で衛兵が並んでいる。

 こちらをチラリと見てくるけれど、声はかけてこない。

 

 助かるわぁ。声をかけられても困るし。

 さて、何処に行こうか。

 城の中で迷子になるのも困るから‥‥‥外にでも行こうかな。


 そのまま廊下を真っ直ぐ進み、私は外へ出た。

 お城の前の広場には衛兵以外は誰もいなかった。


 ‥‥‥庭はないのかな?


 辺りを見回すが、庭へ行けそうな道は見当たらない。


 まぁ‥‥‥安全というか防犯的には庭へ行く道は無いわよね、きっと。 さて、どうしよう‥‥‥。


 「姫?こんなところでどうされました?」


 声の方を振り向くと、私達を出迎えてくれた緑色のケルピーがいた。改めて見ると、結構な大きさだ。


 「何か、ございましたか?」

 「いえ、あの、えっと‥‥‥少し散歩をしてみたいと思って‥‥‥」

 「散歩?」


 んーー、ちょっと無理があったかしら。


 「もしかして、退屈してしまいましたか?」

 「退屈とは違うんだけれど‥‥‥」

 「‥‥‥では、私でよければ一緒に城の周りを見てみますか?」

 「いいの?」

 「勿論です」

 「あの、では、お願いします!」


 ケルピーは私の前まで来ると静かに脚を曲げて、身体を低くした。


 「さぁ姫様。お乗りください」

 「乗っていいの?」

 「姫様ならば喜んでお乗せ致します。他の者は乗せませんが」

 「あらまぁ‥‥‥光栄だわ。ありがとう。ではお言葉に甘えて乗らせてもらうわね」


 私はケルピーに近づき、その背に座った。

 ドレス姿なので、跨がることはせず両足を揃えて横座りした。


 ‥‥‥姫がドレス姿のまま馬に跨がっちゃ恥ずかしいわよね。がっかりしちゃうわよね。


 ケルピーは若い草の葉のような綺麗な緑色をしていて、瞳は桃色をしていた。感触は、思ったよりも温かくしっとりとしていたが私が濡れることはなかった。(たてがみ)は静かに水が流れるように動いている。尻尾も同じだ。

 水っぽいけど、水じゃない。何とも不思議な感じだった。


 ケルピーは私が座ったのを確認すると、ゆっくりと立ち上がった。


 「どうですか姫様、恐くは無いですか?」

 「えぇ大丈夫よ。思ったよりも高いけれど大丈夫」

 「それは良かった。では参りましょう。 そこの衛兵、ウンディーネ様にお伝えせよ。姫様は私と城の周りを散策しておると」

 「はっ、かしこまりました」


 そう言うと衛兵は城の中へと入って行った。


 「さぁ姫様、参りましょう。落とすことはございませんので安心してください」


 ケルピーはゆっくりと歩き出した。

 城の正面広場を抜けて、岸へと続く透明の道へ出る。道は綺麗な水が流れていて、水の上を滑るように歩く。

 少し進んだところで、ケルピーは立ち止まった。


 「姫様、少し揺れますよ。お気を付けてください」

 「え?はい」


 私はケルピーの首にしっかりと腕を回した。

 鬣がひんやりとして気持ちがいい。水のようで、静かに動いているけれど、やはり濡れない。‥‥‥夏の暑い時は最高かも。

 ケルピーは少し屈むと、道を蹴り高く跳んだ。

 そして道を外れ、湖面に降り立った。


 ちょっと、湖面に、水面に立っているわよ。

 忍者以外に出来るの~~?


 あっ、そうか、魔物なのよね。

 こういう事が出来ても不思議は無いね。

 納得。


 「湖面を歩きますが、心配ありません。湖の中にも衛兵達はおりますから。 此処、水魔の湖に住まう魔物達でベリル様に逆らう者はおりません」

 「そうなの?ならば安心ね」

 「はい、ご安心を。 危険なのは、人族や獣人族です。特に、冒険者や傭兵、騎士や兵士といった輩は暴力的で大変危険です。決して近づいてはなりません」

 「そう‥‥‥‥‥気を付けるわ。彼等は此処によく来るの?」

 「たまに見かけます。湖の岸辺に生えている薬草を採りに来るようです」

 「岸辺に薬草が生えているの?」

 「はい、そうです。そう言えば姫様もノト殿と一緒に薬を作られるそうですね」

 「そうなのよ。よかったら、その薬草を少し貰えるかしら?ノトが喜ぶかも」

 「勿論、構いません。後程、採りに向かいましょう」

 「ありがとう」

 「では、少し走りましょうか。城の周りを一周しますよ」

 「えぇお願いします」


 ケルピーは少しずつ速度を上げながら湖の上を走る。揺れはほとんど無く、とても快適だ。頬をかすめる風が気持ちいい。


 「ねぇケルピー、とても気持ちいいし眺めも素敵ね」

 「えぇ湖面を渡る風は最高ですし水晶の城はとても美しいですからね」

 「あの‥‥‥あなたの名前は何と言うの?何と呼べばいいの?ケルピーと呼ぶのもどうかなと思って」

 「私には名はありません。私だけではなく、ほとんどの魔物は名は持っていないですね」

 「そうなの‥‥‥呼ぶ時に困るわね」

 「‥‥‥もし、姫様が宜しければ、名をつけていただけますか?」

 「名前を?私でいいの?」

 「はい、姫様につけていただけたら嬉しいです」

 「‥‥‥そうね、ちょっと待ってね」


 ケルピーは速度を落として、ゆっくりと歩き出した。


 ‥‥‥緑色の身体に桃色の瞳、どこかで見た色の組み合わせなのよね‥‥‥。んーーー、あっ、蓮の花。桃色の蓮の花。


 「あの、ロータスって名前はどう?蓮の花よ」

 「蓮の花とはどのような花ですか?存じ上げないのですが‥‥‥」

 「あのね、桃色の綺麗な花よ。あなたの瞳の色とよく似ているの」

 「私の瞳の色と?」

 「えぇ、蓮の葉の色は鮮やかな緑色でね、あなたの身体の色と似ているわ」

 「そうですか‥‥‥ロータス‥‥‥良い名をつけていただきありがとうございます」


 その時、ロータスの身体が淡い光に包まれた。

 魔力が強くなっているような気がする。


 「あの、今光ったけれど大丈夫?」

 「問題ありません。名をつけていただいたことで姫様の魔力を少しばかり与えてもらっただけです」

 「私の魔力?‥‥‥特に変わりないけれど」

 「姫様にとっては大した魔力では無いのでしょう。‥‥‥姫様、私ロータスは姫様に名と魔力を与えられて姫様の眷族となりました。誠心誠意お仕え致します」

 「眷族?‥‥‥いつの間に? え?」

 「ふふふ、宜しくお願い致します」

 「まぁ‥‥‥いいか。気に入ってもらえたみたいで良かったわ」

 「はい、嬉しいです」

 「良かったわ。じゃあロータス、改めて宜しくね」

 「はい姫様」


 私達はゆっくりと城の周りを一周し、薬草の生えている岸辺へ向かった。


 岸辺には様々な植物が生えていて、緑豊かな眺めだ。目を引いたのは、百合によく似た花をつけている植物だった。薄い水色の花はとても美しい。


 「姫様、あの水色の花をつけているのが、話していた薬草です。採ってこさせましょう」

 「あの綺麗な花が?‥‥‥って、誰が採って来るの?」

 「水童(みずわらわ)達、出て来てあの花を採って来てくれ。根の部分が大事だから、気を付けてくれ」


  ロータスがそう言うと、水の中から小さな、50センチくらいの生き物がわらわらと出てきた。みずわらわ‥‥‥って漢字だと水童と書くのかな。

 見た目は可愛らしいカッパみたいな感じね。カッパは河童と書くから、日本の河童とは違うのね。‥‥‥異世界だから当然か。


 水童達は水色の花を根ごと採ってきてくれた。しかも、たくさん。花は百合に似て、根は百合根に似ているわ。食べられるのかしら?後でノトに訊いてみよう。


 「水童さん達、どうもありがとう」

 「姫様、嬉しい?」

 「えぇとても嬉しいわ」


 そう言うと水童達はニッコリ笑って嬉しそうにしていた。


 採ってきてもらった薬草は空間収納に大事に仕舞い、その後は水童達とおしゃべりを楽しんだ。


 なんともほのぼのとした時間を過ごしていると、突然ロータスが険しい声で叫んだ。


 「姫様、私にしっかりとお掴まりを! 衛兵! 姫様を護れ!」


 湖の中から次々と武器を手にした衛兵達が現れた。

 可愛らしい水童達は恐い顔付きになり手の爪は鋭く尖っている。‥‥‥ちょっとショック。


 ロータスは岸辺の向こうの繁みを見つめ、低い声を出した。


 「何者だ!出て来い!」


 衛兵達は武器を繁みに向ける。


 -----ガサガサガサ---


 繁みを掻き分けて現れたのは若い男だった。

 両手を上げ、静かに佇んでいる。


 見た目は人族のようだ。

 肩まである薄い紫色の髪、青い瞳、すらりと背が高く引き締まった肢体。

 顔は勿論‥‥‥‥‥美形だ!すこぶるつきの美形だ!

 しかも、めちゃくちゃ私の好みのタイプ!


 ‥‥‥どうしよう!


 

 

読んでくださり、ありがとうございます✨

PV、評価、ブックマーク、励みになっております!

やっとここまできました。ローズが出会ったのは誰なのか‥‥‥うふふふふ、なのです✨

皆さんに良いことがありますように✨

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