賑やかな町並み
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身分証を見せて、ロータスの入町料金を払い、一同はヨーツの町へと入って行った。
堅牢な作りの城門を抜け、石畳の道を進んで行くと煉瓦と石壁の建物が連なっていた。
通りには多くの人が行き交い、呼び込みをする店員の声が響いている。
規模は負けるが、領都のホンベルクに負けない賑わいをみせていた。
ただ違っているのは行き交う人々の多くは男性であり、しかもかなり鍛え上げられた体躯をしている者ばかりだった。
此処ヨーツの町は辺境伯領の中でも国境近くにある辺境の町である為、国境警備隊の駐屯地があり、更に魔の森やフィッシュボーン山脈にも近いため冒険者ギルド(ヨーツ支部)や傭兵団の拠点地にもなっていた。
町行く男達は、警備兵や冒険者、傭兵達が多くを占めていた。
他には商人の姿も見られるが、観光客や旅行者といった者達はごく僅かであった。
そういう町であるため、宿屋や飲食店、武器屋、鍛冶屋が多く、大通りから離れた一画には色街もあったが、警備隊が駐屯しているためか治安は良い町であった。
「さて、どうする?まだ昼にはかなり早いけど、傭兵団に行くかい?」
「んーー、時間があるなら行きたい処があるの」
「行きたい処?何処?」
「【赤猫亭】っていう宿屋さん」
「それは、聴いたことあるような‥‥」
「ケイティの家よ」
「あぁそう言えば、そんな名前だったね」
「メルクリウスさん場所を知ってる?」
「いや、知らないな‥‥訊いてみればいいさ」
「そうね!」
「なぁローズ、その宿屋って何?」
「前に話したでしょ?ゴブリンに襲われていた女の子を助けたって。その子の家よ」
「そっか」
「その少女は宿屋の娘なのですか?」
「そうよ。結局手紙も出していないけど、ずっと気になっていたの。元気にしてるかなって」
「じゃあちょうどいいな。会いに行った方が早いしな」
「そうなのよ、クリムゾン。メルクリウスさん、いいかな?」
「かまわないさ。とりあえず、場所を訊いて行ってみるか。場所がわかれば何時でも会いに行けるしね」
「うん!」
ローズ達は開店準備をしている店員から【赤猫亭】への行き方を教えてもらった。
大通りから1本入った通りに面していて適度に賑やかな処で、此処からも近い場所だった。
「行くかい?」
「勿論!」
「俺、楽しみだぞ」
「私もその少女に会ってみたいです」
「行こう行こう♪」
「決まりだね」
皆で【赤猫亭】を目指した。
教えてもらったように進んで行くと、赤色の猫が背中を縮め立っている絵が描かれた看板が見えてきた。
赤味の強い煉瓦の壁、咲き乱れる店先の花、窓と出入口は開け放たれているので手入れが行き届いた店内が見えた。
「あ、あれじゃないかしら」
「赤い猫の看板だね」
「クリムゾンより細いですね」
「う、煩いよロータス。あれは痩せすぎなんだよ」
「ふふ、クリムゾンは今のままで可愛いからいいのよ」
「ローズ、可愛いって言うなよ!護衛騎士に向かって」
「ごめーん」
「クリムゾン、私は別に意地悪で言った訳では無いですよ」
「‥‥分かってるって」
「ほら、前まで来たよ。どうする?」
「勿論行くわ。私、声をかけてくる」
出入口に立ち声をかけた。
「あの、すみません!!」
店の奥から返事が聴こえる。
「まだ準備中なの~~昼前にまた来てくださ~い」
‥‥‥この声、ケイティだわ。
ローズはもう少し大きな声を出した。
「あ、ケイティ。私、ローズよ。会いに来たの」
-----ガシャン。ドタッ。パタパタ。
「ローズ?本当に、ローズ?」
廊下の奥から、鮮やかな赤毛をポニーテールにしたエプロン姿のケイティが走って来る。
「本当にローズだ。ローズーーー」
-----ガバッ。
ケイティが思い切りローズに抱きつく。
「会いたかったよ、ローズ。来てくれたのね!」
「うん、私も会いたかったよ!手紙も出せなくてごめんね」
「ううん、私こそ手紙も出してなくてごめん。えっと、あの時は本当にありがとう。こうして元気にしていられるのはローズのおかげよ!」
「そんな事無いよ。無事だったのは助けてくれた冒険者さん達のおかげよ」
「それでも、やっぱりローズのおかげ。ふふっ、会えて嬉しい」
「私も」
「それで‥‥ヨーツにはどうして?私に会いに来ただけじゃないでしょ?」
「あ、うん。実はね、ローゼンタール傭兵団の拠点に用があってね」
「傭兵団の?どうしたの?まさか、傭兵になるの?」
「違う違う、救護所で働くの。臨時だけどね」
「そっか、びっくりした」
「私も焦った」
「ふふふふ。中に入って、飲み物くらいは出せるわ。後ろの皆さんもどうぞ~」
「準備中なのにごめんね」
「全然。ローズ達なら大歓迎。話したい事がたくさんあるの」
「私もよ」
ローズ達は【赤猫亭】の中へと入り、美味しい果実水を堪能したのだった。
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