回復薬
見つけてくださり、ありがとうございます✨
宴会が開かれている広場から見える場所にノトのお店はあった。
すぐに着きそうだとローズが思っていると、黒豹の獣人レイが声をかけてきた。
「やぁ、ノトの妹弟子さん。俺はレイ、見ての通り黒豹の獣人だよ。えっと、皆さん、宜しくね」
「あ、こちらこそ宜しくお願いします。ローズです。彼女はロータス、頭の上の子はクリムゾンです」
「会えて嬉しいよ」
「こちらこそ」
ロータスとクリムゾンはぺこりと頭を下げる。
‥‥‥この人、レイはちゃんとした人みたい。良かった。ノトの幼馴染みがちゃんとした人で。あ、もう着くわね。
「着いたよ、今、鍵を開けるから」
ノトが鍵を開ける間、店舗を眺めてみる。
こぢんまりとしているが、清潔感があり、庇もあって雨や日差しを防げるし、看板は新しく、入りやすい雰囲気がある。
「ノト、素敵なお店ね」
「ありがとう。さぁ皆入って」
ノトが嬉しそうに笑いながらドアを開けると、ドアベルがカランカランと音を鳴らす。
皆で店内に入ると、カウンターに案内された。
カウンター奥の戸棚から小さな瓶をいくつか取り出すと、カウンターに並べる。
「下級回復薬が10本、中級回復薬が5本。このくらいでいいかな?もっといる? レイ」
「とりあえず、これでいいかな。で、いくら?」
「下級が1本銀貨3枚だから、全部で銀貨30枚、つまり金貨3枚ね。中級が1本金貨1枚だから、金貨5枚。合計で金貨8枚だよ」
ローズは頭で計算する。
‥‥‥確か、ホンベルクで品物を見て感じたのは、銀貨1枚が千円くらいで、金貨1枚が1万円くらいの感じだったから、金貨8枚って8万円! 結構するのね。
「ノト、少~しでいいから、オマケして」
「う~ん、そうだね、友だち価格で金貨6枚、でどう?」
「いいのか?ありがとう、ノト!」
「レイ達にはお得意様になってもらうから、いいよ。ただ、他の人には言わないでね」
「勿論だよ、言わない。正直助かるよ。ありがとう。傭兵団からの支給もあるけど、心許なくてね。それに、以前もらった回復薬の効き目はばっちりだったしさ」
レイはニコニコ顔でノトと握手する。
ノトもお得意様が出来て嬉しそうだ。
‥‥‥そうなんだ、レイとロウは傭兵団の人なんだ。つまり、傭兵ってことね。
-----カランカラン。 ドアベルが鳴る。
「どうしたんだ?レイ、ロウ」
大柄な獣人が2人、小柄な獣人が1人ドアから顔を出す。
「コウ、ウルサ、ヴァル!来てくれたんだね」
「よお、ノト!結婚おめでとう」
「「 おめでとう! 」」
「ありがとう。3人も中に入って」
ノトはローズ達にコウ達3人を紹介し、コウ達にはローズ達を紹介した。
3人増えたことで店内が狭く感じてくる。
‥‥‥この3人もノトの幼馴染みなのね。‥‥うん、ロウ以外ちゃんとした人みたい。そうよね、ノトの友だちだもの。 コウは虎、ウルサは熊、ヴァルは狐の獣人みたい。ノト以外、肉食獣系?獣人なのね‥‥皆、強そう‥‥‥5人とも傭兵なのかな、きっとそうね。
「今日はゆっくり出来るの?」
ノトの問いかけに残念そうにレイが答える。
「ゆっくりしたいんだけど、明日から任務なんだよ。だから、そろそろ帰らないと。ヨーツまで戻らないといけないんだ。本当に残念だけど‥‥」
「そうなの?任務か‥‥仕方ないね」
「ホントホント、ご馳走食べてゆっくりしたいのになぁ。可愛い女の子もいるし」
「仕方ないよ、ヴァル」
「「「「「 はぁ~~ 」」」」」
皆が溜め息をつく。
そして、ノトが心配そうに訊ねた。
「その任務、回復薬が必要な任務なの?」
レイ 「そうだな、相手が魔物だからなぁ‥‥」
ノト 「魔物?君達傭兵団は人が相手なんじゃないの?」
ロウ 「魔物や魔獣を相手にすることもあるぞ」
コウ 「今、あちこちで魔物が出没してて、冒険者は忙しくて人手不足なんだとさ」
ヴァル 「そうそう、だから俺達傭兵団にも依頼がきてるの」
ウルサ 「仕方ないことさ」
ノト 「そうなんだ‥‥ちなみにどんな魔物なの?」
レイ 「確か‥‥虫の、蟻の魔物、とか言ってたな」
ヴァル 「うん、蟻の魔物ってことだよ」
ノト 「蟻の魔物‥‥‥毒はあるの?」
ロウ 「さぁ‥‥‥特に聴いてねぇなぁ‥‥な?」
4人が頷く。
ノトは暫く考えこむと、カウンター奥の戸棚から新たに瓶を取り出す。5本ある。
「これ、毒消し。どこまで効果があるかわからないけど、持っていって」
「いいのか? ありがとう!」
レイは回復薬と一緒に魔法のポーチに収納すると、改めてノトに礼を言う。
暫しの間、幼馴染み同士6人で歓談すると、ロウ達5人は傭兵団の拠点があるヨーツに向かって出発したのだった。
ノト達が歓談している間、ローズは彼等の話をずっと考えていた。
‥‥‥蟻の魔物‥蟻の魔物‥‥‥どこかで聴いたわよね。うん、聴いたわよ。
-----カランカラン。
「皆揃ってどうしたのかな?」
「お父様‥‥‥あっ!!」
ドアを開けたベリルの顔を見て、思い出した。
以前、蟻の魔物の話を聴いたことを。
読んでくださり、ありがとうございます✨
皆さんに良いことがありますように✨
:*(〃∇〃人)*: