結婚式
見つけてくださり、ありがとうございます✨
あれこれと忙しく過ごすうちに、ノトの結婚式の日になった。
ホンベルクで買った新しい服に着替え、皆でナズナ村を目指す。
ベリルの魔法の箒にはクリムゾン、ローズの箒にはロータスが乗った。
天気も良く、風が心地好い。
「あっ、ナズナ村が見えてきましたよ」
「村人総出と言ったところかな。いや、村人よりも多そうだね」
ベリルが言った通り、普段のナズナ村の村人よりも多い人々が広場に集まっていた。
ノトの家族や友人、ナズナ村から出稼ぎに出ていた村人が集まっていたのだ。
皆が嬉しそうに笑顔を浮かべている。
だが、肝心のノトとユウナの姿が見当たらない。
「ノトとユウナさんがいませんね」
「まだ支度をしているんじゃないかな」
「あぁ、そうですね、きっと」
ベリル達は村の入り口手前に降り立ち、村へと入っていく。
今日は村の入り口にある門は開け放たれ、誰でも入れるようになっていた。
ローズはユウナの父ガイスの姿を探しながら、ベリルに訊ねる。
「あの、結婚式って何処で行うんですか?小さな神殿とか?」
「神殿は領都や王都とか大きな街にある。小さな街や村には、礼拝堂がある建物、教会と呼ばれるものだね、それがある。だから結婚式は教会で行うはずだよ」
「教会。どんな感じだろう」
「小さな村では小さな教会だろうね。常駐している神官も居ないかもしれない」
「え?結婚式出来ます?」
「近くの村から来るか、村長が代理で行うんじゃないかな。心配しなくても大丈夫だよ」
「それならいいんですけど‥‥あっ、ノトとユウナさん、ガイスさんがいた」
皆でノト達のところへ行き、口々に祝いの言葉を送った。
ベリルの言っていた通り、ナズナ村の教会には神官は居なくて、ノトの出身村でもあるナバナ村から老神官が来てくれていた。
教会は小さく、とても全員が入れる大きさではないので、新郎新婦の身内のみが礼拝堂の中へと入り、厳かに結婚式が行われた。
身内以外は腕に花を抱えて教会の前で待ち構える。
ローズ達も花を抱えて待っていた。
そして式が終わり、教会の外へと出てきた2人に皆で祝福の花を浴びせたのだった。
「おめでとう~」「幸せに~」
皆からの言葉にノトとユウナが笑顔で手を振る。
2人の後ろではガイスと奥さんらしき人が嬉し泣きをしていたが、ノトの家族は皆ニコニコ顔で明るかった。
村長のかけ声で、広場へと移動すると沢山の食べ物や飲み物がテーブルに並んでいた。
移動が終わると、陽気な音楽が流れ始める。
ノトがユウナと共に前に出てきて感謝の言葉を述べる。
「皆さん、今日は僕達の結婚式に来てくださり、ありがとうございます。これからユウナと共に此処ナズナ村で薬屋を営んでいく予定です。暖かく見守ってください。どうぞ宜しくお願い致します」
ノトとユウナが頭を下げると皆が拍手をして囃し立てた。
次いでガイスが大きな声で言う。
「今日は思う存分、飲んで食って楽しんでくれ。大道芸の者達も呼んでいるぞ」
「「「 おぉ~~ 」」」
歓声があがる。
皆がそれぞれ好きな席に着くと、好き勝手に食べ、飲み始めた。
ノトとユウナはテーブルを回って挨拶していく。
ローズ達も空いているテーブルに着くと、周りを眺めながら食べ始めた。
「凄い騒ぎですねぇ」
「小さな村では娯楽が少ないからね。結婚式も娯楽の一部なんじゃないかな。堂々と騒げるしね」
「なるほど」
「ベリル様、獣人族や人族の結婚とは娯楽なのですか?」
ロータスが不思議そうに質問する。
「ロータスには理解しにくいかもね。獣人族や人族も皆がそうではないよ。いろいろだよ」
「はぁ、そうですか‥‥」
「ベリル様、自分はなんとなく分かります。ケットシーも結婚式では羽目をはずして騒ぎます」
クリムゾンが嬉しそうに笑うとベリルも笑った。
「そうか、じゃあ、ローズの結婚式の時はクリムゾンも騒ぐのかな?」
「わ、わ、私の結婚式?」
「そうだよ。いずれはするだろう?」
「いずれはって‥‥‥いいんですか?」
「勿論」
「え‥‥‥はぁ‥‥」
「なんだ?ローズは結婚したくないのか?俺、ローズの結婚式は無茶苦茶騒ぐつもりなのに」
「それって、どうなの?護衛騎士さん?」
「あっ‥‥」
「そうですよ。クリムゾン、騒ぐ余裕なんて無いですよ」
ローズとロータスに言われて、少しシュンとなるクリムゾンにベリルが言う。
「大丈夫。ローズの結婚式には護衛がたくさん付くから、クリムゾンは安心して楽しむといいよ」
「はいっ」
キラキラ瞳を輝かせるクリムゾンを見ながらローズは思った。
‥‥‥何故、私の結婚式に護衛がたくさん付くの? それって、え?私のため? それとも、相手のため? ん? 相手って。
「‥‥‥ん~~~/////」
ローズの頭の中に新郎姿のレオンが浮かんで、頬が紅く染まる。
「どうした?顔が赤いぞ?ローズ」
「何でもない‥‥」
クリムゾンの問いかけにそう答えるローズだった。
ベリルはそんなローズを微笑ましく見つめる。
‥‥‥そう、ローズの結婚。考えておいた方がいいね。
ひととき沈黙が続いた後、音楽が軽快なものに変わった。
クリムゾンが何かに気付いて背伸びをする。
「あっ、大道芸が始まる!」
「本当?」
「うん、見に行こうぜ」
「いいわね、行きましょう。ロータスも行くでしょ?」
「ええ、行きます」
「お父様は?」
「私はいいよ。此処でゆっくりしているから見ておいで」
「はい。じゃあ、行ってきます」
ローズ、クリムゾン、ロータス3人は賑やかな人垣の方へと向かっていった。
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皆さんに良いことがありますように✨
:*(〃∇〃人)*: