変化するって難しい
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「そう言えばさ‥‥‥変化のほうはどうなの?」
「え?変化?‥‥‥‥‥ん~~全然駄目。出来ないわ」
「まだ始めたばかりだからね。仕方無いよ。僕はもっと小さい時から練習したし」
「そっか‥‥」
「翼は出せそう?」
「翼? 全然」
「まずさ、背に魔力を集中させて翼を出すところからやってみたらどう?とりあえず、そこから。僕はそうしたよ」
「翼から?」
「うん。翼が出れば飛べるし、とりあえずの目標」
「とりあえずの目標ね。うん、いいね。頑張ってみる。自分の翼か‥‥‥魔法の箒とどっちが速いかなぁ」
「さぁ、どっちかね」
「うーん」
「とにかく、頑張って」
「うん、ありがとう。自分の翼で飛んで北まで行けるように頑張る」
2人の話を黙って聴いていたクリムゾンが、瞳をキラキラさせてローズに頼み込む。
「その時は一緒に連れて行ってくれよな」
「構わないけど、飛んでる時に失神しないでよ?」
「う、うん、大丈夫、だと思う‥‥」
「ふふふ」
その後、水中ショーを堪能すると、子供組のローズとビョルン、クリムゾンは先に部屋に戻っていった。
一方、ベリルとヘリオドールは真剣な面持ちで話し込んでいた。
「エキトンの出現、誰が何の為にしているのだと思う?」
「さぁな‥‥‥街を潰したいのか、ただ混乱させたいのか、他の目的があるのか‥‥あまりにも情報が無いからね、わからないよ」
「エスメに頼んで風属性の精霊や魔物達の協力を得るかい?」
「そうだね、聖女の件でシルフとノームには協力してもらってるけど、エキトンの件でも協力してもらうか。エスメラルダにも話は通しておかないと」
2人の側に控えていたウンディーネが口を開く。
「ベリル様、情報収集なら同胞のウンディーネ達にも協力させますわよ?」
「頼んでもいいかい?」
「勿論ですわ」
ウンディーネが嬉しそうに笑う。
「ウンディーネだけではなく、ニンフ達や水棲の魔物にも協力させます。早速、指示をだしてきますわ。失礼致します」
ウンディーネは席を立つと優雅に挨拶をし、広間を出ていった。
「ウンディーネはやる気に満ちているね。頼もしい」
「まぁね、助かるんだけれどね‥‥ははは。 そうだ、ヘリオドール。ゆっくりしていってくれと言いたいところなんだが、3日後に用事があってね。出掛けてしまうんだ」
「用事?」
「ノトを覚えているかい?」
「君の弟子のウサギの坊やだね」
「彼の結婚式なんだよ」
「ほぉ、結婚式。めでたい事だな。そうか、3日後か。私も参加したいところだが、3日後は私も用事があるんだよ。【竜の島】へ行き、竜族の長老達と会う約束をしていてね」
「長老達と?」
「何回も催促されていてね。ビョルンの従者を選べとさ」
「ビョルンの従者?」
「そんなの要らないと言ったんだけどねぇ。煩くて」
「年の近い竜族から選べと?」
「そう言うこと。そのうち、ローズにも話がくるんじゃないかな」
「それはまた面倒な‥‥」
「ビョルンも同じことを言っていたよ。とりあえず、行ってくるよ」
「頑張れよ」
「結婚式には行けないけど、私からの贈り物を渡してくれ」
「贈り物?なんだい?」
ヘリオドールが右手をぎゅっと握り締め、ゆっくり開いた。
手のひらには透明な黄色い石がひとつ。
「これ。豊穣の石」
「豊穣の石か、喜ぶよこれは。ナズナ村は今後、不作に見舞われることは無いだろう」
「皆から感謝もされるし、いいだろ?」
「ありがとう、ヘリオドール」
「ノトに宜しく伝えてくれ」
「あぁ」
ベリルとヘリオドールは杯を掲げ飲み干す。
その夜の【水晶宮】は遅くまで賑やかな声が響いていた。
‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥
∗ ∗ 翌日 ∗ ∗
朝食の後、ヘリオドールとビョルンは北の大陸へと帰っていった。
「あっという間に去っていきましたね」
「私達もそうだったじゃないか」
「そう言えばそうですね」
「ビョルンと話せたかい?」
「えぇ、以前よりも話しやすかったです」
「そうか、それは良かった。仲良くしてくれると嬉しいよ。‥‥ところで、ローズは従者とか欲しいかい?」
「従者?‥‥‥クリムゾンとロータスがいるから間に合ってますよ?」
「あぁ、そうだね。2人がいたんだった」
「急にどうしたんです?」
「ビョルンの従者を選ぶらしいよ」
「ビョルンの従者。男の子だし、王子様だし、必要なんでしょうね」
「ローズも必要だったら言いなさい」
「今のところ必要無いですよ」
「そうか」
その後、ローズ達も【森の家】へと帰っていった。
昼食の後、ローズは庭で変化の練習を始めた。
誰かに見られないように認識阻害の結界を周囲に張る。
‥‥‥背中に魔力を集中。竜の翼を思い浮かべる。お父様と同じ、綺麗なアクアマリンのような色合いの翼。大きくて、空を飛べる翼。
竜の翼。んんん~~~。 はぁーー出来ないーー。
意識を集中するもなかなか思う通りにはいかず、落ち込むローズ。
「まだまだこれから。練習始めたばかりだもん。きっと、そのうち、変化できる。たぶん」
練習に励むローズを、クリムゾンは椅子に座って眺める。
椅子はティムの隣に並ぶように置いてある。
小さな若木は時折さわさわと枝を揺らす。
クリムゾンと一緒にローズを応援しているかのようだった。
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:*(〃∇〃人)*: