浄化石
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「さて、ビョルンの椅子を用意しないとね」
「え?僕の椅子?」
ベリルは空間収納から椅子をひとつ取り出すとビョルンの前に置いた。
「この魔石に魔力を流してごらん。少しで大丈夫だよ」
ビョルンが魔石に魔力を流すと、椅子には綺麗な氷の結晶の模様が浮かんだ。
「ほぅ、ビョルンは氷の結晶か‥‥‥綺麗だね。これからはこの椅子を使うといいよ。さぁ、座って」
「はい‥‥」
ビョルンが椅子に座ると、ヘリオドールも自分の空間収納から椅子を取り出して座った。
ヘリオドールの椅子は、麦の穂の模様だ。
お茶を楽しみながら、ベリルがクリムゾンとロータスの紹介をする。
「ケットシーとケルピーの護衛か、いいんじゃないかな。ねぇ、ビョルン」
-----ぼそっ----- 『弱そう‥‥』
「ん?なんだい?」
「いえ、別に‥‥」
ヘリオドールの問いかけにビョルンが小さく呟く。
が、ローズはしっかり聴いていた。
「クリムゾンもロータスも頼りになるのよ」
「‥‥そうなんだ」
ローズの言葉にちょっと気まずくなるビョルンだった。
2人のやり取りを微笑みを浮かべて見ていたヘリオドールが、急に何かを思い出したかのように、空間収納から袋を幾つか取り出した。
「そうだ、これこれ。私の浄化石。袋に分けて入れてきたから。皆それぞれ持ってて。汚染された大地に埋めればいいよ」
「ありがとう、ヘリオドール。私の浄化石も君とビョルンに渡すよ」
今度はベリルが石を取り出し2人に渡す。
皆が《地と水の浄化石》を持ち、万が一に備える形になった。
それぞれが石を仕舞うと、ヘリオドールが口を開く。
「ベリルから大体のことは聴いている。エキトンのような虫系の魔物は寒いところでは動きが鈍く、逆に暑いところでは活発になる。季節はこれから夏に向かうから、彼等にとっては活動しやすい時期になる。皆、十分に注意するんだよ。いつ何処で遭遇するかわからないからね」
「「「「 はい 」」」」
ローズ達は慎重な面持ちで頷く。
「さて、ヘリオドール。今日は泊まっていくのだろう?」
「そうだね、でも、此処は部屋数は増やせるの?」
「泊まるのなら勿論、【水晶宮】だよ。此処は狭いし。だから、これから移動しよう」
「そうか、わかった」
ベリルが指をぱちんと鳴らすと、パタンパタンと家中の窓が閉まり、あっという間に戸締まりが完了する。
道へ続く門も閉まり、ゴーレム達が警備を始めた。
「転移陣を出すから集まってくれるかい?」
床に魔方陣が広がる。
ヘリオドールとビョルンは椅子を空間収納に仕舞い、魔方陣の上へ移動する。
ローズ達も移動すると魔方陣が淡い光を帯びた。
「行くよ」
-----ゆらっっ-----
足元が揺れたと思ったら直ぐに止まり、魔方陣の光が消えていく。
「着いたよ。ようこそ【水晶宮】へ」
今回は湖の側ではなく、城の前の広場に転移した。
衛兵達がざわつき、慌てた様子で近付いてくる。
遠くにいる衛兵も口々に声に出す。
「ベリル様」
「ようこそお出でくださりました」
「ささっ、此方へ」
「ウンディーネ様にお知らせしろ」
「お客様だぞーー」
間もなく、城の中からウンディーネがニンフ達を引き連れて現れた。
皆揃って綺麗に膝を曲げ頭を垂れる。
「皆様、ようこそお出でくださりました。お会いできて光栄でございます。私はウンディーネの女王。【水晶宮】を任されております」
「ウンディーネ、お疲れ様。ヘリオドールは知っているだろうが、今日はヘリオドール自慢の息子ビョルンも一緒だよ。宜しく頼む」
「ベリル様、ただいま部屋と宴席の用意をしております。ご安心を」
「ありがとう」
「久しぶりだね、ウンディーネ。元気そうで何よりだ。この子は息子のビョルン。この子も宜しくね」
「ご無沙汰しております、ヘリオドール様。ビョルン様、初めておめもじ致します、ウンディーネですわ」
「ビョルンです。宜しく」
ウンディーネが笑顔を向けるとビョルンは少し恥ずかしそうに答えた。
「さぁ、行こうか」
それぞれの部屋へニンフ達に案内されていく。
ひと休みして身仕度を調えると宴席が設けられている広間へ向かった。
ローズはドレス姿、クリムゾンは今回はケットシーのまま、ロータスは従者姿だ。
ベリル、ヘリオドール、ビョルンも着替えていた。
既に沢山の食べ物や飲み物が並べられている席に着くと、前回の宴席同様に巨大な水の塊の中で人魚や魚、水棲の魔物達の踊りが繰り広げられる。
ビョルンとローズは並んで座っていた。
「ねぇ、ローズ。【水晶宮】には魔物が多いんだね。衛兵もほとんどそうだろ?」
「うん、そうなの。魔物と言っても、此処にいる皆は友好的よ。【白亜宮】は竜族とスノーレディが多かったわね」
「うん。あとは、屋敷妖精もいたんだよ。わかった?」
「屋敷妖精?全然わからなかった」
「見た目は普通の使用人姿だからね。気を付けて見れば魔力の違いがわかるよ」
「そうなんだ」
ビョルンが人魚達の舞いを見つめながら呟く。
「人魚を見るのは初めてだ‥‥皆、美しいんだな」
「そうね、私もそう思う。スノーレディも美しいんでしょ?」
「あぁ、美しいよ。僕の母上は特にね。あとね、セルキーって知ってる?」
「セルキー‥‥‥確か図鑑で見たわ。アザラシ妖精よね?」
「陸にあがる時はアザラシの皮を脱ぐんだけど、美しい人型の姿になるんだよ」
「見たことあるの?」
「セルキーは見たことあるよ。北の大陸には結構いるんだ」
「そうなんだ、いつか見てみたい」
「‥‥見に来れば?‥‥海まで案内してもいいし」
「本当?次に北に行ったら案内してくれる?」
「‥‥いいけど」
ビョルンの頬と耳が少し赤くなっているのに全く気が付かないローズだった。
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