ひっそりと聴いている
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∗ ∗ リリエンタール皇国 皇都 中央大神殿 ∗ ∗
「何故じゃあ!何故見つからん!」
教皇は顔を赤く染めて、床に膝をつけ俯く聖騎士ユリウスを睨み付けた。
「申し訳ございません。目撃情報を得ていながら探しあてる事が出来ませんでした‥‥‥」
「ううぅ‥」
教皇の側に控える大神官長が軽くため息をつき、宥めるように声を出す。
「教皇様、何事もタイミングというものがございます。我々が一足遅かっただけのこと。また探せば良いのです。その娘の存在を確認出来ただけでも僥倖というものです」
「‥‥ふむ、そうだな。‥‥先見の神官に、何か見えたら直ちに報告するよう、しかと伝えよ!」
「はっ、その様に」
「儂はちと用があるゆえ、後の指示は大神官長に任せる」
「かしこまりました」
大神官長は軽く頭を下げ教皇を見送った。
ユリウスは床に片膝をつけたまま頭を下げる。
教皇が部屋から出ていくと、大神官長が顔を上げ優しく声をかけた。
「立ちなさいユリウス。そんなに気に病まずとも良い」
「グレゴリオ大神官長様」
「先ほども言ったが、存在がわかっただけでも十分なのだから。先見が出たら直ぐ動けばいいだろう」
「はい、次こそは必ずや探してみせます」
「期待しておるよ、ユリウス。‥‥‥はぁ‥‥それにしても、教皇様ももう少し落ち着いて貰いたいものだ。いくら次代の聖女が獣人の娘だとはいえ、聖女に変わりないものを‥‥」
「グレゴリオ様、その、聖女がやはり獣人だといろいろと難しいのですか?」
「聖女の種族が何であれ、聖女の力に変わりはない。問題は我が《リリエンタール聖教》が人族至上主義であり、人族以外を蛮族と見なしておることだ。‥‥現教皇は特に教義に忠実だからね。表向きの人族の聖女を立てなければ気が休まらないのだろう」
「表向きの聖女‥‥では本物の獣人の聖女はどうなさるので?」
「奥神殿でひっそりと祈りの日々を過ごしてもらうのみだろうな」
「その‥‥気の毒ですね‥‥」
「此処リリエンタールで獣人が虐げられているなか、その身は厳重に保護されるのだから、我慢してもらうしかないな」
「そうですね‥‥」
「ユリウスよ、身代わりになる娘を必ずや連れてくるのだぞ」
「はい、かしこまりました」
ユリウスが出ていった後、大神官長グレゴリオは窓際へ行くと視線を外に向けた。
‥‥‥大神官長と呼ばれる私が口には出せないが、教義にある人族至上主義は本当に《創世の女神》の望んでいることなのだろうか? そうであるならば次代の聖女が獣人族なのは何故なのだろう。 いつか答えはわかるのだろうか。
大神官長が思いを巡らしている時、床下で様子を伺っている者達がいた。
「おい、聴いたか?」
「うむうむ、聴いたぞ」
「表向きの聖女と言うておったの」
「つまり、ローズ様を表向きの聖女にする、ということかの」
「であろうの」
「とりあえず、アンバー様に報告じゃの」
「我々はもう少し、探ろうかのぅ」
「やれやれ、人族は小賢しいことをするのぅ」
「我々から見れば、人族も獣人族も変わらぬのに」
「本当にのぅ。それに、ローズ様は人族ではないのに愚かなことよの」
「だの」
ノーム達はアンバーに報告に行く者以外、引き続き情報収集をするのであった。
「此処がリリエンタールの神殿ね」
「結構大きいのね」
「とりあえず神殿に来たけど、何かわかるかしら?」
「リリエンタールと言えば神殿だもの。きっと、何かわかるわよ」
中央大神殿の上空ではシルフの乙女達が神殿を見下ろしていた。
「どうする?」
「何処から行く?」
「ん~~~。あれ、あの外れにある古い小さな神殿、外れにあるわりには厳重に警備兵がいるわよ?」
「本当ね。宝物庫じゃない?」
「そっかぁ」
「あらあら?宝物庫じゃないかもよ?あれ見て?」
「「 ん? 」」
古く小さい神殿に、食べ物を載せた盆を持つ女神官が2人近付いていく。
「宝物は食事なんてしないものね」
「おかしいね」
「行ってみる?」
「「 行こう 」」
シルフ達は素早い動きで2人の女神官の側に行くと、ぴったりとくっついて一緒に神殿の中へと入っていった。
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:*(〃∇〃人)*: