ワイバーン見学
見つけてくださり、ありがとうございます✨
先に進むと、中は薄暗くて壁は岩肌が剥き出し、ところどころがぼぅっと光っている。
少し広くなっている場所で、従業員の人が説明をしてくれた。
「この先は《 動く道 》をご利用くださいませ。自分で動く必要はございません。乗る時と降りる時だけは十分に御注意してください。ごゆっくりとお楽しみくださいませ。では、どうぞ」
周りより明るくなっている所から、ゆっくりと道が奥に向かって動いている。
新宿の駅の近くで使った動く歩道?………正式名は判らないけど。あれに似ている感じだ。
「ほぅ………面白いね、初めて見たよ。いつの間にこのような物を作ったのか………。ドワーフは研究熱心だね。 さぁ、乗ってみよう」
「はい」
二~三人は並んでいける幅があったので、一緒に乗ってみた。
お父様は初めてと言っていたのに、ふらつくこともなくスムーズに乗った。
私は、前の世界で利用した経験があるにもかかわらず、後ろにふらつき、少し恥ずかしい思いをした。……………何故っ?
道の両側は、白や緑や青を帯びた淡い光がところどころで光っており、幻想的でとても綺麗だ。
動いている足元は、道全体がかすかに光を発している。
「壁の光っている石は蛍石や夜光石だね。洞窟などにはよくある石だけど、こうして見ると綺麗だね」
「とても綺麗ですね。あえて明かりをつけていないのかもしれませんね」
「そうだね」
しばらく行くと、片側の壁が地面から1メートル位のものになり、その先が広く大きく眺められるようになった。
---カキンッ---カコンッ---ガラガラ-----
何やら叩いているような音がする。
音のする方を眺めると、何人ものドワーフ達がつるはしのような道具で岩を掘り起こしていた。
「あれは何をしているんですか?」
「鉱石を採掘しているんだね。金や銀や鉄とか、宝石か………」
「なかなか見れませんよね」
「そうだね、普通はね。だから見学出来るようにしたんだろうね。 彼等ドワーフは、火や地の精霊の加護を受けているから、鉱石を見つけたり加工したりするのが上手いんだよ。武器を作るだけではなく、宝石の加工………指輪や腕輪なども素晴らしい物を作るよ。この眼鏡もそうだね」
「素晴らしい職人技なんですね」
「それだけではなくて、魔道具もいろいろと研究して作っているよ」
「この動く道ですね。これも素晴らしいです。 あの………火や地の精霊の加護っていうのは?」
「精霊はね、自分の気に入った者に加護を与えるんだよ。種族丸ごとということもある。ドワーフは火と地の精霊の加護を、エルフは風や草木の精霊の加護………というようにね」
「精霊………」
「あのドワーフの側をよく見てごらん?ドラゴンアイを上手く使って」
「ドワーフの側?」
私は目に魔力を集中させて、ドワーフの側を見つめた。
つるはしをふるうドワーフの足元に、小さな何かがいた。ドワーフの周りに何体も。
小さな身体に帽子を被り、顔はよく見えないが白い顎鬚が見える。
背中に虫の翅のようなものはない。
-----小人さん?
「小さい彼等が見える?」
「えぇ、見えます。白い顎鬚のある老人に見えます」
「彼等が地の精霊ノームだよ」
「ノーム? あれが………」
ノームって有名な精霊よね。普通にいるのね。
はぁ~さすがというか、ドラゴンがいるんだから不思議はないか。
「鍛冶仕事をしているドワーフのところに行けば、火の中に小さなサラマンダーがいるよ」
「火の中に?」
「そう、彼等は火の中にいる、というか顕れる。大抵は小さいけど、火山の中にいる者は大きいよ」
「火山?火山があるんですか?」
「ここ東の大陸にはないね、南と北の大陸にあるよ」
「そうなんですか。もしかして、温泉とかってあります?」
「うん、あるね」
「へぇ~いいな~温泉」
「行きたいの?」
「はい、行きたいです」
「そう………今度ね。今度行ってみようか」
「本当ですか?楽しみにしてます」
いや~~温泉、いいな~~、楽しみ。
話をしていたら、いつの間にか採掘現場を通り過ぎ、もとのような岩壁になった。
しばらく進むと、先に明るい光が見えた。
明るいところに近付くと、声が聴こえてきた。
「足元に御注意ください。気を付けてお降りになってください」
おぉ~終点ね。
降りる時はふらつかずにちゃんと降りられて、良かった。
降りた先は、広い展望室のようだった。
天井は結構高く、岩山をくり貫くのも大変だったと思う。
外を眺める所には、柱のように岩が何本か残っていて、床から1メートルと少し位まで手すりと柵が作られていた。
ガラス等ははめ込まれておらず、何も無いように見える。
私達は外を覗ける所まで近付いて行った。
これ、大丈夫なの?安全かな?
落ちる事よりも、ワイバーンに狙われないかな?
「ここ、結界が張られているね」
「結界?」
「うん、触ってごらん?」
「あっ、抵抗されて向こうにいかない」
「これで安全という事なんだね。ふぅ~ん」
お父様は結界をペタペタ触っている。
すると、従業員の人が近くに来て笑顔で説明してくれた。
「この結界は最新の魔道具で張られています。此方からは外が良く見えますが、彼方からは見えないようになっていますので、気が付かれる事もなく安全に見学する事が出来るのです。安心して、ゆっくりとご見学されてくださいませ」
説明が終わるとにこやかに去って行った。
「なるほどね………これ、面白いね。いいね、いろいろ使えそうだね」
「何に使うんですか?」
「いろいろとね………」
そっか、いろいろか………気にしないでおこう。
外を眺めると、岩山が広がっていて、木や草がところどころに見える感じだ。
よく見ると、巣らしきものがある。そして、その近くや上空にはワイバーンがいる。
此方には目もくれず、無視しているようだ。
本当に此方が見えていないらしい。
凄いね。
ここぞとばかりに、じっくりと眺めさせてもらった。
ワイバーンは、ドラゴンとは違う、確かに違う。
薄い赤茶色をしていて、顔は南アジアにいる鼻先の細いワニのようだ。
足はしっかりとしたものがあるけれど、腕…前足?…は無くて大きな翼があるだけだ。
なんというか、恐竜図鑑に載っている翼竜のプテラノドンに似ている。
ハッキリ言って、恐い!
凶悪な顔をしている。
これはヤバいよね。
お父様のドラゴン姿と雲泥の差だよ。
お会いしたくはないね。
ここから眺めるだけで十分ですよ。
そう思いながら眺めていると、急にお父様が私の腕を掴んで引き寄せた。
「まずい!早く奥へ。結界が解けた」
「えぇっ?」
何が何やらわからないまま、お父様に抱えられて奥の方へ行った。
ちょうどその時。
「キャーーワイバーンが此方を見てるわー!」
「おい、此方に向かって飛んでくるぞ!」
「早く逃げろ!」
「早く奥へ!」
「イヤー!」
「キャー!」
展望室は大騒ぎで、パニック映画のように見えた。
そして、先ほどまで小さく見えたワイバーンがだんだんと大きくなり、この展望室のすぐ近くに迫ってきた。
読んでくださり、ありがとうございます✨ 感謝、感謝です。 読んでくださった皆様に良いことがありますように✨