少女は何処?
見つけてくださり、ありがとうございます✨
誤字報告もありがとうございます✨
「あ~~その女の子だったら、お父さんと一緒に歩いてたよ」
「確かに、父親らしき男と買い物してたよ」
「この通りを向こうに行ったよ」
リリエンタールの神官兵や騎士達は、店の店員達から水色の髪の少女の情報を集め、探しまわっていた。
ギルド長のバンジョーは聖騎士ユリウスの要望を受け入れ、リリエンタールの神官兵達の上陸を認めた。
古い歴史と広大な領土を持つリリエンタール皇国は、強者揃いの神官兵や騎士達を有している。
彼等は神に仕える身であり、揺るぎ無い信仰心と忠誠心を持ち、神殿からの命令は絶対として任務遂行のために規律正しく行動する。
そんな彼等に敵対しても何も得るものは無く、バンジョーはすんなりと受け入れたのだ。
恩を売るのも悪くない、との打算的な面もあっただろう。
島の商人達に、彼等に協力するよう通達したのだった。
「ユリウス様、どうやら探している少女は父親と共に街を出たようです。門番が見ています」
「門番が?‥‥‥何処に向かったのだ?」
「森だそうです」
「何故森に?」
「わかりませんが‥‥‥門番の話では、トラデの森は薬草が豊富で魔獣も小型で弱いものしかおらず、薬師や商人達が薬草採集に訪れるそうです」
「では、その少女と父親も?」
「可能性はあります」
「ふむ‥‥‥」
聖騎士ユリウスは暫く考えたあと、神官兵や神官騎士達に森の捜索をするよう指示を出した。
街中での情報収集と森の捜索、二手に分かれて水色の髪の少女と父親を探すのだった。
街中ではリリエンタールの神官兵が忙しなく行き来しており、商人や住民達が遠巻きに眺めていた。
「なぁ店主、あの兵達は何だ?何があったんだい?」
外套のフードを深く被った男が近くにいた店主に訊ねる。
店主がチラリと視線を向ける。
男はフードを外して笑みを浮かべた。
若葉色の髪が風に揺れる。
「怪しい者じゃないよ。これでも私も商人でね。トラデには買い付けに来ているんだ」
「なんだ兄さん、同業者か。聴いてないのか?人探しだとさ」
「人探し?」
「水色の髪の女の子だとさ」
「へぇ‥‥女の子‥‥。それで、目撃情報はあるのかい?」
「あぁ、俺も見た。父親と一緒にいたよ」
「そうか‥‥私も見たら知らせないとな」
「そうだな、それがいい」
「仕事中、悪かったな」
「いや、別にいいさ」
男は店主に礼を言うと、狭い路地へ入っていった。
周囲を確認してから、小さく呟く。
「シルフ、シルフ、風の乙女達。この声が聴こえたら此処に来てくれ」
小さなつむじ風が男を取り囲む。
クスクスと小さな笑い声が耳元をくすぐる。
「風竜のメルクリウスさん、私達にご用?」
「何かあったの?」
「元気にしていた?」
シルフ達が美しい姿を現す。
「やぁ、シルフの乙女達。いつ見ても麗しいね」
「「ふふふふ」」
「訊きたいことがあるんだ。リリエンタールの兵達が水色の髪の女の子を探しているらしいんだ。何か知ってる?」
「あぁその事?知ってるわ」
「女の子が誰かも知ってる」
「へぇ‥‥誰なの?」
「貴方も知ってる娘よ」
「そうそう、知ってる知ってる」
「そうか‥‥‥ローズだね?」
「正解よ~」
「今、何処にいるかも知ってる?」
「何処かは知らないわ。でも、もうこの島にはいないわよ」
「そうそう、とっくに飛んでいったわ~」
「どちらに向かった?」
「んーー南の方ね」
「そうそう南の方‥‥あっ!ねぇ?メルランとか言ってなかったかしら?」
「そう言えば、言ってたかも?」
「かも!」
「そうか、ありがとうシルフの乙女達。感謝するよ」
「どういたしまして~」
「もし、何かわかったら教えてくれると嬉しいな」
「ふふふ、いいわよ~」
「またね~」
「じゃあね~」
シルフ達はくるくると踊るように空高く上がると消えていった。
‥‥‥ローズとベリル様はメルランに向かったようだ。リリエンタールの兵達が何故ローズを探しているのか気になるな。私もメルランに行ってみるか。
メルクリウスは姿を消すと、メルランに向かって飛んでいった。
リリエンタールの神官兵や騎士達は何も見つけられず、翌日もそのまた翌日も成果は何もあげられなかった。
そして、これ以上は無駄と判断し、リリエンタールへ引き揚げていった。
ギルド長のバンジョーは大きなトラブルが無かったことにホッとしながら、沖に浮かぶ軍船を眺めるのだった。
∗ ∗ メルラン ∗ ∗
-----カラン、コロン-----
「アンバー、いるかい?」
奥からアンバーが顔を出す。
「メルクリウス、いらっしゃい」
「ベリル様とローズが来てないかい?」
「もう、帰ったよ」
「やっぱり来てたのか」
「どうした?」
「ちょっと気になる事があって‥‥」
メルクリウスはトラデ島での事をアンバーに話した。
そしてアンバーもベリル達から聴いた話をメルクリウスに話す。
「リリエンタールが探しているのはローズ‥‥‥」
「光の属性を持つ若い娘‥‥‥ローズは当てはまるね」
「もっと、情報が欲しいな」
「あぁ‥‥。ノームに声をかけるか。シルフとノーム、彼等の協力があれば何かしらわかる筈だ」
「そうだな‥‥そうするか」
アンバーが足元の床に目を向けて声をかける。
「ノームよノーム、大地に祝福を与え恵みをもたらす地の精霊ノーム、我の呼び掛けに応えてくれ」
-----トントンッ-----
暫くすると、小さくドアを叩く音がする。
「どうぞ」
カチャッとドアが開くと、ノームが入ってくる。
「お呼びですかな?地竜のアンバー様」
「来てくれてありがとう。此方に」
「はい」
ノームがアンバーとメリクリウスの側に来る。
「情報を集めて欲しいんだ。リリエンタール皇国がベリル様のご息女ローズを探している。何故ローズを探しているのか、理由を知りたい。関係してそうなことも」
「‥‥‥承知しましたぞ。我々ノームは地が繋がっていれば、何処でも自由自在。お任せくだされ」
ノームは頭を下げると、ドアから出ていった。
「報告を待とう。‥‥とりあえず、晩餐はどうだい?メルクリウス」
「ご馳走になろうかな」
「はは、ローズが置いていってくれた食事だけどね」
「それは楽しみだ」
2人は店の奥へ向かっていくのだった。
読んでくださり、ありがとうございます✨
またおつきあいくださると嬉しいです。
皆さんに良いことがありますように✨
:*(〃∇〃人)*: