交易の島
見つけてくださり、ありがとうございます✨
名称、役職名、その他設定はゆる~いですので、広いお心でご覧になってくださいませ。(少し変更しました)
街の周囲は高い石壁で囲まれており、通用門には衛兵が立っている。
衛兵に身分証(ベリルは商業ギルドの登録証、ローズは魔女見習いのバッジ)を見せると、すんなりと難無く通ることが出来た。
入口から真っ直ぐ続く通りには、両側に大小様々な店が軒を列ねており、客を呼び込む声があちこちから聴こえてくる。
「賑やかですね」
「そうだね。それで、何を買うのかな?」
「んー、お菓子とかでどうかなと」
「ふむ、じゃあ、北の特産でもあるカエデ糖蜜はどう?お菓子もあるんじゃないかな」
「カエデ糖蜜‥‥‥あっ、メープルシロップ。良いですね!そのままでも買いたいです!」
「では、そうしよう」
メープルシロップの匂いの漂う店に入り、壺に入ったメープルシロップを幾つか、それと焼き菓子の包みを幾つか買い、ホクホク顔で店を出た。
‥‥‥いい買い物した~。メープルシロップ好きなのよ~。
「あとは、何処か行くかい?」
「布地を扱っているお店に行きたいです」
「布地、何か作るの?」
「はい、小物を少し」
「わかった。‥‥あの店に行ってみるか」
通りに面した一軒の店に向かう。
店内にはところ狭しと色とりどりの布地が置いてあった。
優しい色合いの物と柔らかい肌触りの物を選んで壮年の店主に渡す。
「お嬢さん、お買い上げありがとう。この柔らかい布は肌着にいいよ」
「ですよね~。赤ちゃんの肌着にどうかなって思って」
「赤ちゃん?‥‥まさか‥‥」
「私ではなくて知り合いのですよ」
「そうか‥‥そうだよね。おじさん焦ったよ、はは」
ベリルがハッと気が付いたようにローズに訊ねる。
「もしかして、ノトのところ?」
「はい。早目の準備です」
「早すぎないかい?」
「作る時間も考えないと」
「そういうものか‥‥そうか」
「ふふふ」
2人が店を出ようとした時、店主が声をかけてきた。
「あっ、そうそう。お嬢さん、お父さんから離れちゃ駄目だよ」
「え?」
振り返ると、店主は真剣な表情をして話を続けた。
「最近、人族の若い娘が拐われる事件が多いそうだから、気を付けてね。1人で出歩いちゃいけないよ」
「人族の若い娘が?」
「そうそう。お父さんと一緒にいるんだよ」
「はい、わかりました。気を付けますね。どうもありがとうございます」
礼を言うと店主は手を振って見送ってくれた。
通りを森へと向かい歩いていく。
「物騒な話だね」
「そうですね。何処も女の子には危険なんですね」
-----チリチリッ-----
首を触りながらローズが後ろを振り向く。
‥‥‥なんだろう?なんか、視線を感じる。
-----ブブッ、ブブッ-----
指に嵌めた【猫の王】から貰ったキャッツアイの指輪が震える。
「お父様」
「何者かが後を付けているようだね」
「指輪が反応したので、悪意があるみたいです」
「ふむ‥‥あの角まで走るよ。角を曲がったら直ぐ姿を消して壁に寄って」
「はい」
「行くよ!」
合図にあわせて2人は駆け出した。
角を曲がると、隠匿魔法をかけて姿を消し壁に寄って立ち止まる。
-----バタバタッ、バタバタッ-----
追い掛けてくるように足音が続く。
「くそッ、待て。‥‥‥あれ?‥‥居ないぞ?」
「何処に行った?」
「‥‥‥もしかして、消えたのか?」
「まさか。‥‥‥あいつら魔法使いか?」
「魔法使いだったら、高値で売れたのに。くそっ」
「あー、残念。リリエンタールの商人が高く買ってくれるってのに」
「仕方ねぇ、他を探すぞ」
「若い娘‥‥なかなかいねぇのに」
「あぁ、最近、あんま見ねぇな。場所を変えるか」
「いっそ、メルランにでも行くか?彼処なら魔法使いも魔女も沢山居るだろ?若いのもさ」
「ばぁか、メルランなんて【魔の森】の中にあるんだぞ。どうやって行くんだ?護衛を雇う金なんざあるか」
「だなぁ~」
「魔法使いじゃなくて、普通の若い娘でいいんだ。探すぞ」
「わかったよ」
フードで顔を隠した2人組の男達は引き返していった。
男達の姿が見えなくなると、ベリルとローズも魔法を解いて姿を現した。
「聴きました?」
「あぁ、どうやら君を拐って売るつもりだったようだね」
「リリエンタールの商人って言ってましたね」
「若い娘を集めているんだろうか」
「若い娘を集めるって‥‥‥後宮でも作るんですかね」
「リリエンタール皇国は宗教国だ。教皇が国を治めているが、教皇をはじめ神に仕える者は独身の筈だから、後宮は無い‥‥と思うが‥‥」
「じゃあ、神に仕える女性が必要なんでしょうか?」
「どうだろう‥‥‥わからないな。‥‥ローズ、帰る途中、メルランに寄ってもいいかな?」
「メルラン?構いませんけど」
「直ぐ行くとしよう。本当は森で薬草を採集したかったんだけれど仕方ない」
「薬草採集?」
「この島の森は魔獣や魔物がほとんどいなくて、薬草も豊富なんだよ。薬草を扱う商人くらいしか入らないから、沢山あるはずだ」
「じゃあ、また来た時に行きましょう」
「そうだね」
2人は森へ入ると、周囲を確認してからメルランへと飛び立った。
∗ ∗ リリエンタール皇国 ∗ ∗
時を数刻遡る ――― 皇都中央大神殿 ―――
「まだ、見つからんのか!!」
「教皇様、なかなか【光の属性】を持つ者はおりません。他の属性ならばおりますが‥‥」
「くぅ‥‥‥今代の【聖女】が身罷る前になんとしても探すのじゃ!」
「【先見の神官】の予言で見つけた娘では駄目なので?」
「当たり前じゃ。予言の娘は獣人だったではないか。それでは、教義に反してしまう。人族でなければならぬのじゃ。‥‥勿論、あの獣人の娘の力も使わせてもらうがの」
「探し集めてはいるのですが‥‥なかなか‥‥」
-----ドンドンッ-----
「なんじゃ、うるさい。扉はもっと静かに叩かんか」
教皇がイライラとした口調で返す。
扉を開けて、神官服の若い男が慌てて入ってきた。
教皇の側に控える大神官長が訊ねる。
「どうした?そんなに慌てて」
「先ほど、【先見の神官】が予言を!」
「なんじゃと!」
「それで何と?」
「お探しの娘が見つかったと。トラデ島に現れる、とのことです」
「して、どの様な娘じゃ!?」
「まだ年若く、水色の髪の娘だそうです」
「おぉ、そうか、見つかったのか!行け!行くのじゃ!見つけて、連れて参れ!」
「はい!」
「では、教皇様。早速、神官兵を送りましょう」
「そうじゃ。魔物除けの護符もしっかり持たせて、海を渡るのじゃ。海の魔物に殺られてはならぬぞ」
「承知致しました」
大神官長と若い神官が部屋を出ていった後、教皇は満足そうに微笑んだ。
‥‥‥やっと、次代の【聖女】が見つかった。【聖女】は人族でなければならぬのじゃ。
間もなく、トラデ島へ向けてリリエンタール皇国軍(神官兵)が出発したのであった。
読んでくださり、ありがとうございます✨
皆さんに良いことがありますように✨
:*(〃∇〃人)*: