寄り道
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「仲直りしたようだし、そろそろ私達は帰ろうか」
「はい、そうですね」
「え?もう帰るのかい?もっとゆっくり話したかったのに」
「私達もいろいろ忙しいんだよ?‥‥その内また遊びに来るさ。ローズ1人で来ても構わないだろう?」
「勿論だとも。歓迎するよ」
‥‥‥はい? 1人?
「わ、私、1人で?」
「空から見れば迷子にはならないよ。大丈夫」
「大丈夫かなぁ‥‥」
「ははは、連絡くれれば迎えに行くよ? な、ビョルン?」
「う、‥‥‥はい。必要であれば‥‥」
ビョルンは少し恥ずかしそうに視線を逸らした。
‥‥‥ビョルンってなんか、結構可愛いかも? 弟みたいな感じかなぁ。
「そうだ。ローズに渡すものがあるんだった」
ヘリオドールがスッと手を差し出したので、慌ててローズも手を出す。
掌に胡桃くらいの大きさの、白くてキラキラと光る石がのせられた。
じんわりと気持ちの良い『力』を感じる。
「これは?」
「これはね、『浄化石』」
「『浄化石』?」
「そう。名前の通り、浄化してくれる石だよ。穢れた土地や水を浄化してくれる」
「わぁ‥‥‥そんな貴重なもの、いいんですか?」
「大地に存在しているものに効果があるよ。城の地下に沢山あるから、気にしないでいい」
「城の地下に?」
「ヘリオドールの魔力を常に浴びた結果、出来たのが『浄化石』なんだよ」
「大地に存在しているものに効果があるのは、ヘリオドール様が『地の竜王』だから?」
「そう言うことだね」
「あ、ありがとうございます」
「どういたしまして。もっと必要だったら、いつでも取りに来るといいよ」
「はい、そうさせていただきます」
ローズが笑顔で礼を言い、空間収納に丁寧に仕舞うのを確認すると、ベリルが竜型に変化した。
「ローズ、乗りなさい。‥‥では、ヘリオドール、ビョルン、世話になったな。また会おう」
「あぁ、またな、ベリル、ローズ」
「ベリル様、またお会い出来るのを楽しみにしてます。‥‥ローズ、‥‥またね‥‥」
「うん、またね、ビョルン。ヘリオドール様もお元気で」
-----バサッ--バサッ--バサッ-----
空高く上がると、東の大陸へと向かっていく。
あっという間に【白亜宮】が小さくなっていった。
∗ ∗ ∗
「もう見えなくなってしまったね。もっとゆっくり話したかったのに‥‥」
「父上が悪いんですよ。母上を心配させるから。ちゃんと説明しておけば良かったんです」
「う、それは、その通りだよね‥‥これから気を付けるよ」
「そうしてください」
「それよりさ、どうだった?」
「どうとは?」
「ローズだよ。どんな娘だった?」
「ど、どうって、別に、普通ですよ。特別、凄いこともない」
「普通‥‥か。ふぅん‥‥そうか‥‥」
耳を赤くして顔を背けるビョルンを、暖かい顔で見つめるヘリオドールだった。
∗ ∗ ∗
「お父様、その、今さらなんですけど、クリムゾンとロータスに何も言わないで外泊しちゃいましたよね。心配してますよね」
「あぁ、それなら大丈夫。昨夜、シルフ達に言付けを頼んだから」
「あら、いつの間に。ありがとうございます」
「抜りはないさ」
「じゃあ、2人にお土産を買っていきません?」
「土産か‥‥‥ふむ、いいよ。何処か、街に降りるか‥‥でも、もう、海に出るし‥‥あぁ、島に寄るか」
「島?」
「来る時は通らなかったけど、【北の大陸】と【東の大陸】の間には島があるんだよ。交易の盛んなところだから、いろいろな物がある。ちょうど良い」
「北と東の交易‥‥じゃあどちらの品もあるんですね。楽しみです」
「よし、では交易の島【トラデ】に行くことにしよう」
そうベリルが言って間もなく、紺碧の海に浮かぶ島が見えてくる。
上空から見ると、濃緑色と茶色の島であった。
‥‥‥濃緑色が森で茶色は街ってことかな。森のすぐ側に街があるのね。
ベリルとローズは濃緑の森へと降りると、市が開かれている人の住む街へ向かった。
「眼鏡を忘れずにね」
「そうでした」
慌てて『色変わりの眼鏡』をかける。
「外套のフードも被った方がいい」
「そうですか?」
「これから行く市場にいるのはほとんど人族だから、気を付けるに越したことはない」
「わかりました」
言われた通りにフードを被り、ベリルの後に付いて街へと入って行った。
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:*(〃∇〃人)*: