書状
見つけてくださり、ありがとうございます✨
‥‥‥あれは、あの子供の竜は、おそらくヘリオドール様の息子のビョルンね。 あの金色の鱗、ヘリオドール様の金髪と同じ色合いだったもの。 子供の竜を間近に見ちゃった。 可愛い! 人型の姿はどんな感じかしら。 これは、宴席が楽しみだわ~~。
「そういえば、何処に向かったのかしら?」
手摺から身を乗り出して子竜が飛んで行った方を見るが、もう子竜の姿は見当たらなかった。
‥‥‥もういない。 向こうに部屋があるのかしら? 外から着地出来るようにバルコニーが広いのね、きっと。 ビョルンの姿は宴席まで見れないのね。ちょっと残念。
「ふぅ。中に入るか」
ローズはソファーで本を読んだり、自分で淹れたお茶を飲んだりして時間を潰すのであった。
∗ ∗ ∗ ∗
‥‥‥さっきの、客室のバルコニーにいた娘は誰だ? 客人が来るなんて聴いていないけど。
金色の子竜は、自室のバルコニーに静かに着地すると一瞬で人型に姿を変えた。
肩の上で切り揃えられた明るい金髪。
ほっそりとした体躯は、まだ幼さを残した少年のものだ。
金色の瞳はやや冷たさを放ち、先ほど通り過ぎた客室の方を見やった。
‥‥‥歳は僕の少し上、といったところか。 あの気配は同じ竜族のものだが、少し混じっているな。片親が竜族ではないと言うことか。 僕と同じだな。 何者かはそのうち分かるだろう。
「‥‥風呂にでも入るか」
‥‥‥そういえば、父上が嬉しそうに何やらやっていたが、あれは客室を用意していたのかもしれないな。
ビョルンはうっすらと笑顔を浮かべ、浴室へと歩いて行った。
∗ ∗ ∗ ∗
-----コンコン-----
「どうぞ?」
先ほど案内してくれた使用人ともう1人使用人が入ってくる。
「失礼致します。そろそろお支度致しましょう」
「支度?」
「はい、宴席に出席する為のお支度です」
「え?このドレスじゃあ駄目?」
「駄目ではありませんが、この時の為にヘリオドール様が用意されていた衣装があるのです」
「衣装を用意?」
「愉しく姫様の衣装選びをされておいででした。ですので、ヘリオドール様の為にも是非‥‥」
「そ、そうなの‥‥じゃあ、お願いしようかしら」
‥‥‥断ったら失礼になるものね。
「さ、まずは湯浴みから」
「へ?湯浴み?」
2人の使用人に手を引かれ、浴室で入念に手入れをされた後、衣装を身に付け、髪を整えられ、軽く化粧を施された。
姿見に映る自分の姿を見てローズは思った。
‥‥‥私、お姫様になったよ。 こうして見ると、結構可愛いよね。 ふむ、お父様からいただいたドレスとは随分雰囲気が違うわ。
クルリと回るとドレスの裾が広がった。
「姫様、そろそろ向かいましょう」
「はい、お願いします」
使用人の案内で広間へと向かって行った。
広間にはすでにベリルとヘリオドールがいて、何やら話し込んでいる。
「ヘリオドール様の方へどうぞ」
案内してくれた使用人に礼を言い、ベリル達の方へ歩いていく。
テーブルの上には数々のご馳走、飲み物、飾られた花。
使用人だけでなく、多くの人の姿もある。
人々の視線を感じながら、広間の中を進んでいく。
「お待たせ致しました」
「おお、来たか。うん、そのドレス似合っているね。選んだ甲斐があった」
「ヘリオドール様、素敵なドレス、ありがとうございます」
「どういたしまして」
「ドレスを着替えたようだが、ヘリオドールが用意してくれたのか?」
「そうだよ。思いの外、ドレスを選ぶのが楽しかったよ」
「そうか、良かったな。早く娘を授かるといいな」
「ああ、本当に。さぁ、2人とも席につこう」
ヘリオドールに促され、椅子へと座ると2人の目の前にどんどん食べ物が運ばれてくる。
‥‥‥おぉ~~ご馳走。【水晶宮】は魚とかの海の幸?(それとも湖の幸?)が多かったけど、【白亜宮】は山の幸が多いのね。 楽しみだわ~。
-----バサバサッ-----
突然広間に、鞄を提げた鳥が素早く飛び込んできた。
ヘリオドールの前まで来ると、静かにテーブルの上に着地する。
「お邪魔致します~~隼便でございます。ヘリオドール様に書状を預かっております!」
「私に? いったい、誰から?」
「アウローラ様からです」
「アウローラ?我が愛する妻から?」
「此方です。確かにお渡し致しましたよ。それでは失礼致します」
隼は頭を下げると、あっという間に飛んでいった。
ヘリオドールは書状を受け取ると直ぐに目を通すが、どんどんと顔色が悪くなっていく。
「 え? え? えぇ? これは、不味い。どうしよう‥‥直ぐに行かなくては」
書状を侍従に渡すと慌てて立ち上がる。
「ベリル、すまない。私は妻の元へ行く。後は宜しく頼む。 ローズ、自分の家だと思って寛いでくれ。では!」
「あ、あぁ‥‥わかった」
「はい‥‥」
ヘリオドールは早足で広間を飛び出して行く。
そのまま外へと向かうと、竜型になり、北へと飛んで行くのだった。
∗ ∗ ∗ ∗
広間では、人々があっけに取られて静まりかえっていたが、徐々にざわつき始めた。
「いったい何が?」
「何か良くないことが?」
「我々はどうしたら?」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥‥‥‥。
「ヘリオドールに何があったのか分からぬが、さて、どうしたものか‥‥」
「お父様、私達、此処にいていいのでしょうか?部屋に戻ります?」
「ふむ‥‥‥」
ベリルとローズが考えあぐねていると、広間に凛とした声が響いた。
皆の視線が広間の入り口に集まる。
「父上は急ぎの用で退出したが、心配はいらない。 客人がいらっしゃる。 皆、落ち着いてくれ」
そう言うと、皆が頭を垂れていく中をスタスタと此方へ向かって歩いてくる。
ベリル達の前まで来ると、右手を胸に当て会釈した。
「ベリル様、ご無沙汰しております。父が失礼致しました。お詫び申し上げます」
「君が謝ることは無いよ。気にしないで。暫く見ないうちに大きくなったね、ビョルン。元気そうで何よりだ」
「お陰様で‥‥‥あの、そちらは‥‥」
「あぁ、紹介しよう。私の娘のローズだ。仲良くしてやってくれ」
「ベリル様の娘‥‥」
そう呟くと、ビョルンの金色の瞳がローズをじっと見つめた。
ローズも見つめ返す。
‥‥‥ひょえ~~~、ビョルンって思っていた通り、美少年だ~~!!
スッゴい、美少年~~!!
読んでくださり、ありがとうございます✨
また、おつきあいくださると嬉しいです。
皆さんに良いことがありますように✨
:*(〃∇〃人)*: