溜め息
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ノトがナズナ村に帰り、夕食と入浴を済ませたローズは自室のベッドの上で考え込んでいた。
‥‥‥レオンへの連絡は寝る前よね。でも、此処にはクリムゾンとロータスが居る。会話は盗聴防止の結界を張れば問題無いと思うから、2人が寝た後でこっそり連絡入れればいいかな。
なんか、今からドキドキする。私の若い頃は携帯電話なんて無かったから、家の電話にかける時みたいだわ。もし、親が出たらどうしようって緊張した。昔の懐かしい思い出ね。
「ローズ、どうした?もう寝ようぜ」
「え?あぁもう寝るわよ、うん」
「今日はいろいろありましたし、お疲れでしょう。ゆっくりお休みください」
「そうね、おやすみなさい。クリムゾン、ロータス」
「おやすみ~」
「おやすみなさいませ」
クリムゾンはローズの隣に潜り込み、ロータスはサイズを小さくしたケルピーの姿で寝床に収まった。
ローズも横になり天井を見つめる。
‥‥‥仕方ない。とりあえず、寝た振り寝た振り。
はぁ、今日は本当にいろいろあったし疲れた。
うん、疲れた‥‥‥な‥‥‥。
うっ、ヤバイヤバイ、‥‥‥起きてな‥‥‥きゃ‥‥。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
-----すぅ~ すぅ~ すぅ~。
クリムゾンやロータスと共にローズも規則正しい寝息を立て始めた。
ローズは寝た振りではなく爆睡してしまったのである。
∗ ∗ ホンベルクのとある宿屋 ∗ ∗
ローズが寝息を立てている頃、レオンは右手で口元を隠し窓辺で考え込んでいた。
‥‥‥何故? 連絡が来ないのは何故? 忘れているのか? それとも、私はフラれたのか? そうなのか? え? ペンダントとピアスを喜んで受け取ってくれたのに? フラれた? 私が?
仲間であるトリスタンとブルーノはそんなレオンを見てこそこそと話している。
「レオンはどうしたんだ?何か知っているか?」
「いや。俺は何も知らないぞ。何かあったんだろうか?‥‥‥訊いてみるか」
ブルーノがレオンに近付く。
「レオン、どうした?何かあったか?」
「え?いや、あ、何もないよ」
「そんなことないだろ。何もって顔じゃないぞ。言ってみろ‥‥‥ってもしかして‥‥‥‥‥女関係か?」
「は?‥‥‥あ、いや」
「そうなんだな」
「いや、ブルーノ、急に何だ?」
「男の勘だ。‥‥‥よし、レオン、行くか?」
「行くって?」
「決まっている。娼館だ」
「は? 何故、娼館に行くんだ?」
「すっきりすれば悩みも軽くなるんじゃないか?」
「軽くなるわけ無いだろ?余計ややこしくなる」
「魔国の娼館にいるサキュバスやハーピーより、人族の女の子は優しくて穏やかだぞ?」
「それは否定しないが、そんな処に行ったらいろいろ不味いんだ」
「何で?」
「何でも。あー心配しなくても、もう寝るから大丈夫。大丈夫だ」
「‥‥‥そうか、ならいいんだが」
「私のことは気にせず行ってきたらどうだ?」
「そうだな、そうするか」
「明日には魔国に帰るんだから遅くなるなよ?」
「勿論。ちゃんと帰って来るって」
「あぁ」
「じゃっ」
ブルーノは手を上げてレオンとトリスタンに視線を向けると部屋を出て行った。
「結局、ブルーノは娼館に行きたいだけのようだな」
「私もそう思うよ、トリスタン」
「レオン、本当に何もないのか?」
「あぁ、大丈夫。大した事ではない。私はもう寝るよ」
「そうか、おやすみ」
「おやすみ」
レオンがベッドに入ると、灯りを消してトリスタンもベッドに向かう。
トリスタンはすぐに寝息を立てたが、レオンはペンダントを握り締めなかなか眠れなかった。
‥‥‥ローズ、本当に私はフラれたのか?
「はぁ‥‥‥‥‥」
静かな部屋の中、トリスタンの寝息とレオンの溜め息が溢れていた。
読んでくださり、ありがとうございます✨
毎日暑い日が続いていますが、皆さん、お身体ご自愛くださいませ。
皆さんに良いことがありますように✨
:*(〃∇〃人)*: