買い取りカウンター
見つけてくださり、ありがとうございます✨
薬師・薬剤師ギルドの建物の中も白っぽい色合いの内装だった。
華美な雰囲気は無く、清潔感があり、どこか病院を思わせるものだった。
「あっ、そうだ。クリムゾンは外で待っていてくれる?確か、使い魔や従魔は入れないんだよ」
‥‥‥動物は入店出来ませんってことかしら?
「衛生面ってこと?毛が抜けるとか?」
「たぶんね」
それを聴いてクリムゾンが小さな声で囁く。
-----俺、綺麗にしてるぞ!!酷いぞ!!-----
「分かってるわよ。でも、クリムゾン以外は分からないでしょ?」
「そうだね‥‥‥悪いけど、ロータスと一緒に外で待っていて。すぐに終わるから」
-----分かったよ-----
「クリムゾン、私と行きましょう」
「ロータスありがとう。宜しくね」
「はい、お任せを」
ロータスがクリムゾンを抱いて外へと出ていった。
クリムゾンの目がちょっと不服そう。
‥‥‥仕方無いわよね。薬を扱うから、清潔は大事よ。この世界、思ったよりキチンとしてるのかもね。
ノトは受付カウンターに向かうと、注文書を見せて薬草の束を取り出して買い取りをしてもらった。慣れたものである。
此処でもローズはノトのやり取りをじっと観察していた。
いつか、自分1人でも出来るように。
「よし、終わった」
「此処では薬草だけね」
「うん、回復薬や薬を作る専門家だから、材料の注文だけだよ。手に入りにくい薬草の注文が僕のところに来るんだよ。‥‥‥魔の森の中に生えてる物とかね」
ノトは最後の部分を小さな声で話した。
「そっか、分かった」
‥‥‥ふむふむ、確かにノトなら難なく魔の森に行けるものね。これ、需要はあるわ。それにこれなら、私でも出来るわ。現金収入になるね!
知らず知らずニヤニヤとするローズであった。
「お待たせ。次は冒険者ギルドに行くよ。回復薬に各種の薬、魔獣除けの薬草を納品すれば終わりだよ」
「冒険者ギルドかぁ、どんなところかしら?やっぱり、恐い処なの?」
「そうだね‥‥‥中には恐い人達もいるけど、別に犯罪者って訳でも無いからそんなに心配しなくて大丈夫だよ?‥‥‥でも、気を付ける事は大事だけどね」
「そっか」
「念のため、フードを被って顔を隠しておこうか。女の子だと目立つから」
「分かった」
‥‥‥いつも着てるピンクの外套は失敗したかな。女の子だってすぐにばれるわね。次に来る時は、目立たない色の外套にしよう。服装も男の子っぽくしないと。目立つのは避けたいもの。
ローズがフードを被って視線をロータスに向ける。
ロータスも頷きながらフードを被った。
話しているうちに冒険者ギルドに着く。
煉瓦の壁の頑丈そうな建物で、中も外も人がいて賑わっている。
ガッチリとした両開きの扉は開け放たれていた。
ノトに続いてローズ、ロータスが入っていく。
クリムゾンはローズの腕の中でおとなしくしている。
椅子に座っていたり立って話している冒険者達が視線を向ける。
敵意は無く、興味があるといった類いの視線だった。
「よぉ、ノト」
「久しぶりです」
入り口近くにいた人が声をかけた。
「ノト、元気か?」
「お陰さまで」
今度は座っている人が声をかけた。
その後も、すれ違う人がノトに声をかけた。
「もしかして、ノトって知り合いが多いの?」
「それは、回復薬や薬を扱っているからだよ。冒険者には必需品だろ?」
「なるほど、そうね」
「売ってもらえなければ困るからね」
「うんうん」
「だけど、皆が良い人って訳じゃないから、それは忘れないで」
「了解」
ノトは買い取りカウンターに向かうと、受付の人に注文書を見せて回復薬や薬が入った袋を渡した。
袋は結構な大きさがあるが受付の人は軽々と持ち上げて奥へと運んでいった。
買い取りカウンターの受付の人は頑強な体格の中年の男性だった。
‥‥‥他の受付カウンターは女性だけど、買い取りカウンターは男性なのね。
暫くして受付の人が戻って来たが、何も持ってはいなかった。
「ノト、いつものように口座に入れておいたから」
「分かりました。ありがとうございますハンスさん」
「なーに、こちらこそいつも助かるよ。ところで、その嬢ちゃん達は?」
‥‥‥そうだよね~気になるよね~。
「僕の妹弟子です」
「ほぅ、妹弟子。宜しくな嬢ちゃん。俺はハンスってんだ」
「あ、私はローズです。どうぞ宜しくお願いします」
ローズはフードを少し上げて顔を見せながら挨拶した。
「もう1人は助手です」
ノトがそう言うとロータスは頭を下げた。
「そうかい、ノトも立派になったもんだな。まぁ、此処は野郎ばっかりだから気を付けろよ。いきなり何かしたりは無いと思うがな」
「そうですね、気を付けます」
「と、忘れてた。これ、新しい注文書」
受付のハンスはカウンターの下から注文書を取り出してノトに渡した。
ノトはサッと目を通すと頷いて鞄に仕舞った。
「また宜しく頼むよ」
「はい、分かりました。それじゃ、また」
「おぅ!」
帰ろうとした時、ノトは受付の奥から声をかけられた。
「ローズ、ちょっと待ってて」
「うん、大丈夫」
ノトは声をかけた人の方へ向かった。
それを見て、ローズは先ほどの買い取りカウンターに目を向けた。
買い取りカウンターにはやり取りをしている人はいなかった。
‥‥‥お客さん、いないわね。今がチャンス?
ローズはそっと静かに買い取りカウンターに向かった。
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:*(〃∇〃人)*: