注文
見つけてくださり、ありがとうございます✨
「真っ直ぐ飛ぶのは良いみたいだね。じゃあ、左右に動いたり、上下に動いたりしてみようか。それから、くるりと回転してみよう」
「はい‥‥‥」
森の家へと帰る途中に飛行訓練をする事になり、家に着く頃にはすっかり魔法の箒を操れるようになっていたローズだった。
∗ ∗ 森の家 ∗ ∗
「ローズ、無事かな?」
「メルクリウス様が追いかけたのですから大丈夫でしょう‥‥‥素早い動きでしたし」
「流石、風竜だよな。びゅーーんって飛んでいったしな」
「そうです。私達は待っているしかありません。何処に飛んでいったかも分かりませんし」
「だよな~~」
クリムゾンとロータスはうろうろするのを止めて椅子に腰掛けて空を見つめていた。
すると突然、クリムゾンが椅子の上に立ち上がり一点を指差した。
「あっ!あれ。ローズとメルクリウス様じゃないか?」
「え?何処に‥‥‥あぁ確かに!」
ローズが手を振りながら此方に向かって飛んで来ているのが見えた。
隣にはメルクリウスもいる。
見たところ問題は無さそうに飛んでいる。
そしてスムーズに地面に降り立った。
「お帰り~~~ローズ」
「姫様、ご無事のお帰り何よりです」
クリムゾンとロータスが駆け寄った。
「心配かけてごめんなさい!私は無事よ!メルクリウスさんのお蔭よ!」
「良かった~~」
「はい、本当に良かったです」
「あ~~~私は疲れたよ‥‥‥中へ入って休もうか」
「‥‥‥ご迷惑おかけしました‥‥‥」
メルクリウスが手をヒラヒラさせて歩いていく。
クリムゾンとロータスはクスクス笑っているがローズは少ーしだけ落ち込んだ顔をしていた。
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すっかりと日が落ちて辺りは暗くなってきた。
早々と夕食を済ませて、皆で居間でまったりと寛ぐ。
疲れているのかローズは何回も欠伸をしていた。
「ふわぁ‥‥‥。お父様、帰って来ませんね」
「仕方無いかな。【女神の島】を訪れると大体は宴になるからね」
「宴‥‥‥じゃあ、今日は帰って来ないかな」
「かもね。だから私は今夜は泊まるから。安心していいよ」
「泊まる‥‥‥居間でいいんですよね?」
「勿論」
「ベッドを出さなきゃ。ロータス、テーブルと椅子を壁際に動かしてもらえる?」
「はい」
ロータスが指示通りにテーブルと椅子を動かす。
ローズは納戸から【魔法の鞄】を持ってきた。
【魔法の鞄】は中に何でも入れられる。
空間収納と同じだ。
ローズは鞄に手を入れて、ベッドを取り出した。
続けて、布団や枕、シーツを取り出すとベッドメイキングを始めた。
「これでよし!メルクリウスさん、ゆっくり休んでくださいね。私ももう休みます。今日はいろいろとありがとうございました!」
「どういたしまして。風呂に入ったら休ませてもらうよ」
「どうぞごゆっくり」
「ローズは?」
「私は疲れたので、洗浄魔法でいいんです」
「そうか、お休み」
「お休みなさい。あっ!」
「ん?」
ローズは階段を上がりかけて止まった。
「ブレス、かっこよかったですよ!」
「そうかい?また見たくなったら言って」
「はい。じゃあ」
ローズに続いてクリムゾン、ロータスも2階へ行ってしまい、居間は急に静かになった。
メルクリウスはのんびりと風呂に入り、ベッドに横になると直ぐに寝息を立てた。
-----キィーーーパタンッ-----
-----バッッ!-----
メルクリウスが飛び起きて身構える。
‥‥‥何者?こんな近くに来るまで気が付かないとは。
「あぁすまないね、起こしてしまって。寝ていていいよ」
「ベリル様、お帰りになったのですね。お帰りは明日かと思っていました」
侵入者がベリルと分かり、メルクリウスは腕を下ろしてホッと息をついた。
「泊まるのも面倒だしね」
「何かお飲みになりますか?」
「いや、もう寝るから。君も寝てくれ」
「わかりました。お休みなさいませ」
「あぁ、お休み」
ベリルは自室に向かい、再び静かになるとメルクリウスは横になった。
‥‥‥今は、もう夜中か。【女神の宮殿】は【水晶の城】ほど居心地悪くはないと思うけど。いろいろとあるのか? まぁ、私には関係無いことだな。 もう一眠りするか。
メルクリウスはそっと目を閉じた。
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「お父様、夜中にお帰りになったんですか?全然気が付きませんでした」
「そっと帰って来たから」
「クリムゾンとロータスは気が付いた?」
2人は揃って首を横に振った。
‥‥‥お父様、忍びのようね。流石だわ。
朝食の後、メルクリウスは仕事と言って笑いながら森の家を出発した。
‥‥‥メルクリウスさんはローゼリアの王都へ行くって言っていた。そして、王都ではお父様の屋敷に泊まるとか。王都にあるお父様の屋敷‥‥‥是非とも行ってみたい。王都も観光してみたい。これは今度、お願いしてみよう。そうしよう!
密かにそう思うローズであった。
ベリルは今日はゆっくりすると言い、窓際のソファーでのんびり読書している。
ローズはいつものように畑仕事と庭仕事に勤しんでいた。
クリムゾンとロータスも手伝う。
‥‥‥我ながら健康的な生活よね。こういうのって、所謂スローライフってのね。悪くないわ。日本では毎日が忙しかったもの。
ローズが大きなキャベツを抱えて立ち上がった時、門の辺りによく知っている魔力を感じた。
キャベツを抱えたまま門へ向かって走り出す。
「ノト!」
ノトは腕を振りながら笑顔で歩いてくる。
「やぁ、畑仕事お疲れ様。立派なキャベツだね」
「でしょう?頑張ってお世話しているもの。元気?変わり無い?」
「うん、皆は?」
「変わり無いわよ。お父様は居間で読書中よ」
「そっか、挨拶しないと」
「そうよね、行きましょう?」
「うん」
皆で居間へ向かった。
歩きながら、ローズはクリムゾンとロータスと自身に洗浄魔法をかけるのを忘れなかった。
「こんにちは旦那様、お変わりありませんか?」
「やぁノト、私は変わり無いよ。君こそどうなんだい?」
「元気ですよ」
「それは良かった。ノト、もう旦那様は止めようか。君は此処を出たのだし」
「え? じゃあ、師匠?」
「師匠か‥‥‥まぁいいか。今日は薬草かい?それとも回復薬?」
「どちらもです。実は注文が入ったんです」
「注文が?そうか、わかった」
「1週間後、ホンベルクに納品に行こうと思うので、それまでにお願いしていいですか?この紙に必要な種類と数が書いてあります」
ベリルは紙を受け取るとざっと目を通しローズに渡した。
「承知した。準備しておくよ」
「ありがとうございます。宜しくお願いします。1週間後、此処に寄って受け取ってからホンベルクに向かいます」
「1週間後だね」
「それで、良かったらローズも一緒にホンベルクに行ってみてはどうかと思って」
「それはいいね」
「え?私?いいの?」
「うん、行ってみたいって言ってたでしょ?ギルドを見たり、買い物したり、どうかなと思って」
「い、行く!行きたい!」
「決まりだね。1週間後、一緒に行こうね。薬草に回復薬、その他の薬、宜しく頼むよ。僕も自分で出来る分を用意しておくから」
「わかったわ!任せて!」
「それじゃ僕はそろそろ‥‥‥」
「あっ、待って、ノト。渡したい物があるのよ」
「何?」
「メルランのお土産」
「メルラン?行ったの?」
「そうよ。私、魔女見習い登録してきたの」
そう言うとローズは登録証であるブローチをノトに見せた。
「おめでとう!これで立派な魔女見習いだね」
「ありがとう!」
「魔法の練習に勉強、頑張ってね。薬作りも勉強の一環だし、ちょうど良かった」
「ふふ、そうね」
「とすると、当日は箒で行けるかな?」
「ええ、勿論」
「ローズ、箒に乗れるかい?大丈夫?」
「お父様、大丈夫ですよ。昨日、メルクリウスさんに教わりましたから」
「そうか、メルクリウスに」
クリムゾンがニヤニヤしながら口を開いた。
「ベリル様、昨日は大変だったんですよ。ローズがぶっ飛んで‥‥‥ふごっ」
ローズがクリムゾンの口を塞いだ。
「なんでもありませんよ。ちゃんと飛べるようになりましたから。問題無しです」
「‥‥‥‥‥そうか。無理しないようにね」
「はい」
ノトはローズのお土産を受け取るとナズナ村へ帰って行った。
嬉しそうに薬草が詰まった薬箱を眺めていたので、良いお土産になったようだ。
1週間後にはホンベルクへ行く。
それまでに、薬草や回復薬、その他の薬を用意しなければいけない。
頑張ろうとヤル気になったローズであった。
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皆さんに良いことがありますように✨
:*(〃∇〃人)*: