竜の島
見つけてくださり、ありがとうございます✨
メルクリウスは東の大陸を右手に見ながら北へと進んでいった。
程無くして左前方に島が姿を現した。
島の大部分は緑に覆われていて、自然豊かな島だと分かる。
「メルクリウスさん、もしかしてあの島がそう?」
「そうだよ、あれが【竜の島】。竜族の本拠地だよ」
「竜族が沢山いるのよね?」
「そうだよ。‥‥‥ローズ、此処からは隠匿魔法をかけるつもりだけど、ローズも重ねて隠匿魔法をかけてくれるかな?」
「重ねがけって事ですか?」
「そう。長老方に気付かれたら面倒だからね。お願い出来る?」
「勿論いいですよ。‥‥‥長老方って面倒なんですか?」
「そうなんだよ。顔を会わせれば、「嫁はまだか?」と煩くてね」
「お嫁さん?お相手はいないの?」
「んーーーまだ独り身でいいかな。自由気ままにね」
「そっかぁ。結婚かぁ。‥‥‥メルクリウスさんって何歳なの?」
「私?確か、350歳くらいだったかな」
「くらいって」
「細かい事は気にしないから‥‥‥長命な者はそんな感じだよ」
「そうなの?じゃあお父様って何歳なの?」
「さぁ‥‥‥私も知らないよ。気にしなくていいんじゃないかな。それよりも隠匿魔法をかけるよ?」
「はい、いいですよ」
メルクリウスが隠匿魔法をかけた後、ローズも続けて魔法をかけた。
魔法の重ねがけで簡単には見破られる事はないだろうと、ローズ達は竜の島へと近付いていった。
だんだんと島の様子が見えてきた。
島の北の外れは白い靄に包まれていて様子は分からないが、それ以外の場所はハッキリと見てとれる。
幾つかの集落?が出来ているようで、人が住む場所と変わらない景色がそこにあった。
「【風竜の郷】でいいかな?万が一露見した時に言い訳しやすいから」
「はい、お任せしますよ」
「了解。では、【風竜の郷】へと向かうよ。島の西にあるんだ」
「お願いします!」
メルクリウスは島の西側の上空に着くと高度を下げた。
徐々に郷が見えてくる。
緑が多く、滝も見える。
木々の中に大きな屋敷が幾つも建っていて、長い橋も見えた。
滝の近くでは竜の子供が飛び回っていた。
「あっ、あれは幼体の竜ですか?」
「そうだね。歳は‥‥‥30~40歳くらいかなぁ」
「私よりも年下‥‥‥」
「ローズはいくつだっけ?」
「52ですよ」
「52か、まだまだ幼体だね」
「幼体ですか‥‥‥。そもそも成体って何歳からなんですか?」
「それは難しい質問だね。個体差が大きくてね。だいたい、150~200歳くらいで成体になるかな。本当に目安でしかないけど」
「150~200ですか。私はまだまだですね」
「まぁ焦らなくていいんじゃないかな。先は長いんだからね。ローズは古代竜のベリル様の娘なんだから、我々竜族よりも長生きだろうしさ」
「古代竜‥‥‥。竜族とは違うものなの?」
「違うね。見た目は似ているけれど。ベリル様達古代竜は、女神と共にこの世界を創った方々で女神に近い存在だからね。我々竜族とは違うのさ」
「そうなんだ‥‥‥」
「さて、もういいかな?」
「え?」
「森の家へ帰るよ?」
「あっ、はい。いいです。満足です」
「じゃあ、行くよ」
「お願いします!」
メルクリウスは大きく旋回すると高度を上げていった。
そして、南を目指して海上を飛んでいった。
【女神の聖海】は海水が透き通っていて美しく、波も静かで凪いだ海であるが、見た目とは違いとても危険な海であった。
海中には様々な魔物が棲んでいて、船などあっという間に沈められてしまう。
その危険な海の真ん中に【女神の島】がある。
【女神の島】は危険な海の魔物達に護られた場所なのであった。
もし、船が無事だったとしても【女神の島】を見つけることは難しい。
島全体は隠匿魔法がかけられていて、【聖獣】と言われる竜族・フェンリル族・ガルーダ族以外には見つける事は不可能。
つまり、【聖獣】しか【女神の島】へ行くことは出来ないのであった。
「ローズ、右手奥の方、見えるかい?」
「右?‥‥‥あれは‥‥‥島?」
「そうだよ。あれが【女神の島】」
「創世の女神様がいらっしゃる処?‥‥‥今、お父様がいる処ね」
「そうだよ」
「緑が多い、普通の島に見えるわ」
「行けば分かるけど、島自体は普通の島だよ」
「‥‥‥いつか私も行けるのかしら?」
「行けるさ。そのうち、女神からお招きがあるよ」
「お招き?」
「それが無ければ、島へは入れない。たとえ【聖獣】だとしてもね」
「そうなのね。気長に待ってみるわ」
「そのうちに呼ばれるよ。きっとね」
「‥‥‥うん」
‥‥‥どうなんだろ。私が何者かって‥‥きっと女神様はご存じよね。お招きしていただけるのかしら? 違う世界から来た元人間のオバサンだけど。
ローズがあれこれ考えている間、クリムゾンは気絶したままで、メルクリウスは進路を東へ変えて森の家を目指して飛んでいた。
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:*(〃∇〃人)*: