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ブレス

見つけてくださり、ありがとうございます✨


 「行っちゃいましたね」

 「寂しいかい?」

 「えぇまぁ‥‥‥少し」

 「これからはローズを連れて時々来るよ」

 「そうですか?楽しみにしてます」

 「あぁ。さて、私も支度をしないと‥‥‥」

 「正装されるので?」

 「ふむ。女神に会うからね。普段着ではちょっとね」

 「そうですよね。私もこれから支度をして、北のヘリオドール様の元へ行ってきます。お預かりした【伝言玉】を届けてきます」

 「宜しく頼むよ」

 「はい、では此処で失礼致します。どうぞお気を付けて行ってらしてください」

 「アンバーも気を付けるんだよ。ヘリオドールに宜しく伝えてくれ」

 

 アンバーは一礼すると自分の店へと戻って行った。

 ベリルは部屋に戻ると、空間収納から大きな包みを取り出してテーブルに置いた。

 手を一振りすると包みがほどかれ、美しい衣装がするすると広がり宙に浮いた。

 身に付けている衣類がひゅるひゅると離れると、代わりに先ほどの美しい衣装が身体を包んだ。

 衣装に合わせた靴も目の前に並ぶ。

 靴を履き替えると、するすると髪が半分結い上げられた。

 残りの半分は長く背に垂らしている。

 そして細かい細工の冠が(もとどり)を包み、小さな簪で留められた。


 「こんなものかな」


 ベリルは呟くと部屋を見回した。

 部屋は綺麗に片付いていて窓も閉まっている。


 「では行くとするか」


 自身に隠匿魔法をかけ姿を隠すと、外に出て扉に鍵をかけて時間停止の魔法をかける。

 これで部屋の中は出た時のまま、扉の鍵を開けるまでそのままだ。

 ベリルは階段を降りずに空を見上げた。

 トンッと飛び上がると竜型に変化(へんげ)して空高く飛んでいった。

 小さなつむじ風が花を揺らしても誰も気が付くことはなかった。




  ∗ ∗ 魔の森の上空 ∗ ∗




 「彼処の草地に降りるよ。周囲には魔獣も人もいないようだから」

 「はい、わかりました」


 メルクリウスは小さな草原(くさはら)に降りると箒を仕舞い、竜型になった。

 新緑の木々の様な明るい緑色の鱗は陽の光を受けてキラキラと美しかった。


 ‥‥‥お父様のアクアマリンの様な鱗も綺麗だったけど、メルクリウスさんの緑色の鱗もとても綺麗ね。ペリドットみたい。 2人ともドラゴン姿も美しいわ。うん、全然恐くない。ワイバーンはあんなに恐竜みたいに恐い顔してるのに。 全く別物ね。


 「ローズ、背に乗って。行くよ」

 「はぁい、乗ります。‥‥よっと」


 ピョンと背に飛び乗り足と手でとりあえず掴まると、魔力の膜で全身が包まれた。


 「大丈夫だよ。落とさないから」

 「はい、宜しくお願いします」

 「じゃあ、行くか」


 そう言うとメルクリウスは翼を広げて、大地を蹴って飛び上がった。

 ぐんぐんと高く上がっていく。

 みるみるうちに魔の森が眼下に広がった。

 

 「私が風竜だとは知ってるよね?」

 「はい、勿論」

 「飛ぶ速さは竜族一だよ、いいかな?」

 「 ? はい」

 「じゃあ、行くよ」


 -----ぐくんっ---ぐん-----ひゅっっっ-----


 「ほわぁあぁあぁ‥‥‥‥‥あぁ~~~~~」


 一気にスピードを上げて物凄い速さで飛んでいく。

 メルクリウスの後には風の渦が出来ていた。


 ‥‥‥す、凄い加速!魔力の膜が無かったら絶対に落ちてるわね。息も出来ないと思うわ。まさに風の竜ね。‥‥‥そういえば気になる事があるんだけど‥‥‥。訊いてもいいかな?


 「メルクリウスさん、訊いてもいいですか?」

 「ん?何?」

 「あの、ブレスってあるでしょ?ドラゴンブレス」

 「あぁ、それが何?」

 「メルクリウスさんのドラゴンブレスはやっぱり風なの?それとも、炎なの?」

 「私のドラゴンブレスか‥‥‥‥‥見たい?」

 「はい、見たい!」

 「小さいのでいい?思い切りやると流石に不味いから」

 「勿論!」

 「そうだな‥‥‥‥‥此処だと分かりにくいから‥‥‥海に行くか。寄り道して大丈夫?」

 「はい、大丈夫」

 「じゃあ、女神の聖海に行くよ」


 そう言うとメルクリウスはスピードを緩めて西へ向きを変えた。

 完全に西を向くと再びスピードを上げた。

 ぐんぐんと進んでいく。

 

 「もうすぐ海が見えるよ」

 「もう?」


 身体をずらして前方を見ると、遠くに青い海が広がっている。

 その青い海もあっという間に目の前に迫った。

 スピードがゆっくりになり、今度は北に向きを変えた。

 右手に魔の森が見える。


 「あのまま進むと女神の島に行っちゃうから、北に向かうよ」

 「はいっ」

 「そういえば、クリムゾンは静かだけど大丈夫?」

 「え?クリムゾン?」


 ローズが胸元を見下ろすと、グッタリとしたクリムゾンがいた。

 四肢はだらんとして白目になっている。


 「キャー、クリムゾン、大丈夫?」

 「‥‥‥んにゃ‥‥‥駄目‥‥‥にゃ‥‥‥」

 「ええっ?」

 「‥‥‥俺の‥‥ことは‥‥‥忘れて‥‥」


 そう言うとクテッと頭を下げて気絶してしまった。


 「クリムゾンは気絶しちゃいました」

 「‥‥‥あぁ、まぁ、よくある事だね。ローズは大丈夫?」

 「はい、勿論大丈夫」

 「流石は竜族の姫、と言ったところかな。クリムゾンはそっとしておいてあげて。気絶していてちょうど良かったかもしれない。‥‥じゃあ、よく見ていて。小さいけれど、本物のドラゴンブレスを見せてあげる」

 「お願いします!」


 メルクリウスは高度を海面近くにまで下げた。

 

 -----キュイーンッ-----


 ‥‥‥あっ。メルクリウスさんの魔力が頭の方に集まっていくのが分かる。


 メルクリウスの口が大きく開く。

 口の中に魔力の塊が出来上がる。

 だんだんと魔力の塊が凝縮されて光を放ち始めた。


 -----カッッッ-----


 -----ドーーーン-----バシャッ-----



 渦巻く風が海面を削るように走った。

 削られた海水が宙を舞った後、キラキラと光りながら音を立てて海面に落ちる。


 「う‥‥‥わぁ~~~凄い!凄い!渦巻く風だ~~」

 「私は風竜だから、ブレスも風だよ。大抵ドラゴンブレスは属性のものを放つんだよ。複数の属性を持つ場合はそれぞれ出来るけど、得意な属性のブレスを放つ事がほとんどだね」

 「そうなんですね。ありがとうございます!」

 「どういたしまして。一応言っておくけど、今のは小さいブレスだからね。本気はもっと凄いから」

 「小さくても凄いですよ!本気のブレスはもっと凄いんですね!!わぁ~」

 「本気でブレスを放つなんて滅多に無いよ、成体の竜はね」

 「成体?‥‥‥じゃあ幼体の竜はあるの?」

 「遊びではあるかな。幼体だと威力も小さいから」

 「そっかぁ、幼体の竜‥‥‥」

 「見てみたい?」

 「見れるの?」

 「遠くからなら‥‥‥」

 「本当?‥‥見たい、見てみたい、幼体の竜。でも、何処で?」

 「それは勿論、竜の島だよ」

 「竜の島?‥‥‥が、あるの?」

 「そうだよ。私が育った処」

 「行ってもいいの?」

 「ローズも竜族だし、問題は無いと思うけど、見つかると面倒だから遠くから眺めるだけにしておこうか」

 「そうですよね。お父様にも言っていないし。‥‥‥遠くから眺めるだけで」

 「よし、では行くとするか」


 メルクリウスはそのまま海上を北に向かって飛んでいった。

 

 


読んでくださり、ありがとうございます✨

またおつきあいくださると嬉しいです。

皆さんに良いことがありますように✨

 :*(〃∇〃人)*:

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