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私の箒

見つけてくださり、ありがとうございます✨


 巡回魔動車を降りると足下には石畳が続き、道の両側には店が幾つも並んでいた。

 店の窓から店内に置かれている魔道具が見える。


 「此方だ」


 すたすたと歩いていくベリルの後を追う。

 賑わう通りを進み、ある店の前で止まった。

 煉瓦の壁は落ち着いた色合いで、派手さは無いもののとても好感が持てる感じの店だった。

 壁から下がっている看板には箒と杖の絵が描かれている。


 「この店の商品は信用出来る。此処で探そう」


 ローズが頷くとベリルは店の中へと入っていく。

 慌ててローズも後に続いた。

 扉を開けるとカランカランと音が鳴り、魔道具の手入れをしていた店主が扉の方を向いた。


 「いらっしゃいませ‥‥‥おや、お客様、確か以前も来ていただきましたよね?」

 「あぁ、よく覚えているね。何年も前だというのに」

 「仕事がらとは言え、お客様はとても印象深いお客様でしたから。本日も箒のお求めでございますか?」

 「今日は娘の箒を探しに来た。良いものはあるかい?」

 「お嬢様の?」


 店主はローズをちらりと見た。


 「お父様によく似ておいでのお嬢様ですね。若いお嬢様向けの箒はこの一角にあります。どうぞごゆっくりとご覧になってください」


 店主が指し示す一角に目を向けると、壁に箒が沢山掛けてあった。

 床に置いた箱に入れられている箒とは明らかに纏っている雰囲気が違う。


 ‥‥‥壁の箒は値段が高そうね。相場ってどのくらいかしら?


 「ローズ、この中から君の箒を探してごらん?」

 「私の箒?」

 「そう、何か感じると思うよ。じっくりと眺めていれば分かる筈だ」

 「そうですか‥‥‥では」


 クリムゾンを抱えたまま壁の箒をゆっくりと見て回る。

 

 ‥‥‥分かるって言われてもなぁ。‥‥‥ん? あら? 彼処の箒、光って見える。あの1本だけ。


 ローズは1本の箒に近付いていった。


 ‥‥‥やっぱり、この箒だけ光っているわ。と言うことはこの箒が私の箒なのかしら。


 「決まったみたいだね。呼んでごらん」

 「お父様、呼ぶって?」

 「魔力を込めて、此方にお出でと念じるんだ」

 「やってみます」


 ‥‥‥念じる。 念じる。 ‥‥此方にお出で!


 -----ふわぁ~~


 ふわふわと箒が1本壁から離れ、ゆっくりと近付いてローズの前で縦になるとそのまま静止した。


 「来ました!」

 「手に取ってごらん」


 ローズはそっと手を伸ばし、箒を掴んだ。

 

 ‥‥‥凄い。しっくりと手に馴染んで違和感が無い。手触りもいい。


 「とても手に馴染みます」


 ローズが笑顔で言うとベリルもにこりと笑った。


 「この箒をもらおう」

 「ありがとうございます。こちらは大変良い物でございますよ。金貨30枚となります」


 ‥‥‥ぶっ!! き、金貨30枚? はい? ちょっと待って! ノトからの話を聴いてだいたいの貨幣価値はわかっているけど、金貨1枚って1万円くらいの感じよ? それが30枚って30万円くらいの箒ってこと? もしかして中古車や小型のバイクが買えるんじゃないの? 魔法の箒も乗り物だけどさ! 


 「そうか、わかった」


 ベリルが懐から金貨が入った袋を取り出した。


 「お父様、ちょっとお待ちを」


 ‥‥‥そんな簡単に金貨30枚出さないで~~。


 ローズはベリルの側に寄り小声で話した。


 「こんな高価な物でなくて大丈夫ですよ」

 「心配要らないよ。お金はあるし」

 「でも‥‥‥」

 「何にでも相性と言うものはあるから、相性が良い物に出会えた時は迷わずに決めた方がいいよ。その方が結果的に安い事もある」


 笑顔でそう言った後に、少し屈んでローズの耳元で小声で囁いた。


 「これでも私は竜王なのだけれど、そんなに心配? 1度、私の宝物庫を見てみるかい?」

 「宝物庫?」

 「水晶の城にあるよ」

 「お城に‥‥‥」


 ベリルは微笑むと店主に向かってもう1度言った。


 「この箒をもらおう」


 店主はニコニコと笑顔で金貨を受け取り、そして小さな袋をローズに手渡した。


 「お嬢様、良かったらお使いください。使い魔用の首飾りでございます」

 「使い魔用の首飾り?」

 「えぇ、お抱きになっている猫は使い魔でございましょう?魔女の使い魔は黒猫が多いですが、最近は様々だと聴いております。飾りの小さな魔石にお嬢様の魔力を登録すれば、迷子になってもすぐに居場所が分かりますよ」

 

 ローズは袋の中身を取り出した。

 小さな緑色の魔石が付いた赤いリボンだった。


 ‥‥‥赤いリボン、クリムゾンに似合いそう。


 「どうもありがとう。迷子防止に使うわね」

 「えぇ、是非」


 

 笑顔の店主に見送られてベリルとローズは外へ出た。

 通りを少し歩き、小さな広場に出るとベンチに座った。

 ベンチに座るとベリルが小さく防音の結界を張った。

 


 「さてと、ローズ、先ずはこの箒に君の魔力を流して完全に君の物にしなさい。そうすれば、君の指示だけに従う箒になるから」

 「わかりました」


 ローズは手にした箒に魔力を流す。

 身体を巡る魔力が掌から箒へと移動する。

 ローズと箒が一体化したかのように魔力の繋がりを感じると優しく光った。


 「出来たみたいだね。これでいい。メルランでは飛行練習は出来ないから、練習は帰ってからだね。とりあえず、空間収納にしまっておきなさい」

 「そうですね、しまいます」


 ローズは箒を空間収納にしまうと、先程店主からもらったリボンを手にした。


 「お父様、これはこの魔石に魔力を流すだけでいいんですか?」

 「どれ?‥‥‥‥‥そのようだね、軽く流せばいいと思うよ。これを身に付けていれば何処にいるか分かるという事だね」

 「クリムゾン、付けてもいい?」

 

 クリムゾンは少し考えた後に頷いた。


 「にゃうにゃ」


 「話せないのは不便ね」

 「仕方がない。使い魔と主はお互いに会話は出来るが、主以外の者は会話は出来ないのだから、クリムゾンの声を聴いたら大騒ぎになるだろう。珍しいからと狙われる可能性もあるよ」

 「にゃ‥‥‥いにゃにゃ」

 「だからね、飼い猫か‥‥‥まぁ使い魔でもいいけれど、普通の猫がいいんだよ。ケット・シーとばれないようにね」

 「にゃい!」

 「クリムゾン、気を付けてね」

 「うにゃ」

 「お父様、ケット・シーって珍しいんですか?」

 「わりとその辺に居たりするけれど、普通の猫と区別するのは難しいからね。気が付かない事がほとんどだよ」

 「その辺に居たりするんですか‥‥‥どうやって区別を?」

 「隠している魔力を感じる事と魔力の違いを感じる事かな」

 「隠している魔力と魔力の違い」

 「これは練習しておくといいよ。何処に行っても役に立つ」

 「そうですね。練習します」

 「リボンを付けたら?」

 「えぇ」


 ローズは小さな魔石に魔力を流すとクリムゾンの首にリボンを付けた。

 

 「あら、とっても似合うわよ。可愛い」

 

 クリムゾンは少し照れたように 「にゃん」 と鳴いた。


 

 「さてと、そろそろ行くか。また巡回魔動車に乗ってメルランを回ってみよう」

 「はいっ!」

 「んにゃっ!」

 


 結界を解くと、ベリル達は広場を後にした。



呼んでくださり、ありがとうございます✨

また、おつきあいくださると嬉しいです。

皆さんに良いことがありますように✨

 :*(〃∇〃人)*:

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