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巡回魔動車

見つけてくださり、ありがとうございます✨


 高い城壁に囲まれた大きな町が見えてくる。

 ベリルは自分とローズ、クリムゾンに隠匿魔法をかけると空から城壁の中へと入っていく。


 -----もわんっ-----


 結界を通り過ぎる。

 特に衝撃は感じなかった。

 ベリルは賑わう町の上空を静かに飛んでいく。

 城壁の中の町は、大小様々な石作りの建物が立ち並び、通りには人が大勢行き交いかなりの賑わいをみせている。

 魔法国と言うだけあり、一目で魔法使いや魔女だと判る出で立ちをしている者が沢山いた。

 ローブを纏い長い杖をつく者、鍔の広い尖った帽子を被っている者。

 人族、獣人族、エルフにドワーフの姿もある。

 傍らに魔獣を従えている者もいた。


 「魔法使いや魔女が沢山いますね。いろいろな種族も」

 「それがメルラン魔法国だよ。此処では種族も身分も性別も関係無いからね。基本、平等なんだよ」

 「基本?」

 「‥‥‥完全な平等は難しいと言う事さ」

 「はぁ‥‥‥」

 

 中心街を通り過ぎ、緑が多い公園のような一角にそっと降り立った。

 ベリルは人型になると、隠匿魔法を解いた。

 幸いにも人影は疎らで、此方に注意を向ける者は無さそうだった。


 「お父様‥‥‥」

 「ん?何?」

 「その姿‥‥‥魔法使いですね!」


 ベリルは濃い青緑色の丈の長いローブを羽織り、ローブの中の服装も神官が着るような法衣の様な物を着用していた。


 「あぁ、私は《 森の魔法使いリルべ 》だからね。2人ともそのつもりでね。間違ってもベリルと言ってはいけないよ?」


 「「 はいっ! 」」


 「さて、此処からは少し歩くよ。おっと、眼鏡を忘れずにね」

 「はい」


 ベリルとローズは《 色変わりの眼鏡 》をかけた。

 金色の瞳が紫色へと変わる。


 「それと、クリムゾンはもう話しては駄目だからね」

 「はい、じゃなかった、‥‥うにゃん」

 「そうそう、気を付けて」

 「ふふ、おとなしく抱っこされててね」

 「う‥‥‥にゃあ」


 クリムゾンは諦めたのかローズの腕の中で静かになった。


 公園を抜けて石畳を中心街へと歩いていく。

 だんだんと人影が増えていった。

 

 「この先に大通りがあるから、まずは通り沿いにある停留所に向かうよ」

 「停留所って?」

 「大通りには《 巡回魔動車 》が走っていて、停留所で停まるから、それに乗るよ」

 「じゅ、巡回?何ですか?」

 「 《 巡回魔動車 》だよ。大通りを巡回している、魔石に溜めた魔力で動く車だ。馬が要らないから《 馬無し馬車 》とか《 馬無し 》と言う者もいるな」

 「魔動車ですか‥‥‥凄い物が有るんですね」

 「メルランには魔道具の研究者や魔道具師が沢山いるからね。魔動車以外にも様々な魔道具があるし、この世界で最も進んでいる国と言ってもいいかな」

 「はぁ‥‥‥此処が‥‥‥最先端の国‥‥‥」

 「あぁ、あった。あれが停留所だ」


 ベリルの視線の先には、日本で見慣れたバスの停留所によく似たものがあった。

 すでに2人ほど待っている。

 ベリルとローズもそこで巡回魔動車が来るのを待つ。


 「お父様、運賃はいかほどなのですか?先払い?」

 「運賃は要らないよ。無料だ」

 「え?無料?本当に?」

 「この巡回魔動車は国が運営しているから。上を見てごらん?」

 

 ローズは上を見上げた。

 つられてクリムゾンも見上げる。

 所々に白い雲が浮かぶ、澄み渡る青空が広がっていた。


 「青い空ですね‥‥‥ん? あれ? 何もというか誰も飛んでいませんね。此処は魔法使いや魔女だらけなのに」

 「そうだよ。よく気が付いたね。メルランではね、緊急時以外は飛行は禁止されているんだ」

 「緊急時以外飛行禁止。何故?」

 「皆が自由に飛んだら、混みあってとても危険だからね。それほど多くの魔法使いや魔女がいるという事だね」

 「確かに、皆で飛んだら危ないですね」

 「だからね、その代わりに無料で巡回魔動車が走っているのさ。大通りを一方向にぐるぐると走っている。誰でも利用出来るんだ」

 「誰でもっていいですね。無料なのもいいです」

 「ほら、魔動車が来たよ」


 停留所の前で停まった車は、大きさはマイクロバスほどで洒落た感じの馬車の様な造りをしていた。

 当然、馬はいない。

 一番前の座席に魔動車を操作する人が座っていた。


 扉が開き、声が聴こえた。


 「公園入り口~~公園入り口~~」


 扉から数人降りた後に、待っていた人達と共に乗り込んだ。

 魔動車の中はまさにバスの様な造りだった。

 空いている座席にベリルと並んで座った。

 腕の中のクリムゾンはキョロキョロと周りを見ている。


 「クリムゾン、魔動車って面白いわね」

 「うにゃあ」


 -----ガタッ-----


 魔動車が動き出す。

 音も静かで振動も少ない。

 魔動車が優秀なのか道が良いのか、乗り心地は良かった。

 次の停留所で停まる。



 「書店街~~書店街~~」



 「お父様、此処は本屋さんがあるところですか?」

 「そう、多くの書店があるね。普通の本を扱う店だけでなくて、魔導書専門の店もあるよ。面白い場所だね」

 「うわぁ‥‥‥楽しそう」

 「後で行くよ。書店街の中に私の家もあるしね」

 「お父様の家?メルランにもあるんですか?」

 「そう。狭いけれどね」

 「楽しみです」


 動き出した魔動車が次の停留所で停まった。



 「薬草・薬剤街~~薬草・薬剤街~~」



 「此処にも後で寄ろう。ノトへの土産を買うよ」

 「ノト、きっと喜びますね」

 「それと、次の停留所で降りるよ」

 「次で?わかりました」


 ‥‥‥なんか、ドキドキする。次ってどんな所?


 魔動車がゆっくりと停まる。



 「魔道具街~~魔道具街~~」



 「さぁ、行こう。慌てなくて大丈夫。魔動車はすぐ動き出したりはしないから」

 「はい」


 ローズはクリムゾンをしっかりと抱えながら、ベリルと共に降り口に向かった。



読んでくださり、ありがとうございます✨

また、おつきあいくださると嬉しいです。

皆さんに良いことがありますように✨

 :*(〃∇〃人)*:

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