メルランへ
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「レオンは大丈夫かしら?」
「あいつ等冒険者だろ?自分の身は自分でなんとかするだろ?気にすんなよな」
「そうですよ姫様。気にかける必要はありません」
「‥‥‥2人とも冷たいのね」
「人族なんて放っておけよ。それより‥‥‥」
-----ぶわぁっっ-----
「「「 !? 」」」
「何?また強い魔力?」
「今度もすぐに消えたぞ」
「先程と似ていますが違う魔力ですね」
「そうね、いったい何者かしら?」
「とにかく急いで戻りましょう」
「そうね、宜しくロータス」
「はい」
ロータスはスピードを上げて森の家を目指した。
飛びながら先ほどの魔力について思い巡らす。
‥‥‥あの魔力に似たものを以前何処かで‥‥。私はほぼ水晶の城や水魔の湖からは出ないし、と言うことは城や湖を訪れた者か?あの様な強い魔力を持つ者など‥‥‥‥‥いたな、そうだ、いた。 300年ほど前に即位の報告に魔王一行が城を訪れた。あの者達の魔力と似ていたんだ。 ‥‥‥そういえば、先ほど会った冒険者に似た者が魔王一行の中にいたな。 ではあの者は魔族なのか?
ロータスは300年前の魔王一行が訪れた時の事を思い出していた。
「おっ、もう着くぞ。さすがロータス、速いな」
「本当ね、あっという間ね」
森の家に着くと、ベリルが戸口に立って待っていた。
ロータスがケルピーの姿から人の姿になる。
「お帰り」
「「 ただいま戻りました 」」
「ローズ、着いて早々だけどお茶の用意を頼んでいいかい?」
「 ? はい、勿論。直ぐに準備しますね」
「俺も手伝うぞ~」
ローズとクリムゾンが台所に向かうと、ベリルはロータスに訊ねた。
「魔族の魔力を感じたけれど、会ったかい?」
「はい、おそらく‥‥‥ではありますが」
「おそらく?」
「人族の姿をしておりましたので。確か3人ほどいましたが、接触したのは1人だけです。以前湖で会った者です」
「そうか‥‥‥彼がいてもおかしくはないが‥‥‥何か気になる事はあったか?」
「いえ、特には。姫様と名乗り合っただけです」
ロータスは2人が名乗り合うまでの経緯を話した。
「そうか、本当に偶然の様だね。‥‥‥ローズとレオンは縁があるのかな」
「ベリル様はあの者をご存知なので?」
「あぁ、魔国で会ったよ。魔王の側近の息子だね」
「側近の息子。なるほど、そういう事ですか」
「それが何か?」
「以前、魔王一行が城を訪れた時に似た者がいたなと思いまして」
「そうだな、あの時父親が一行にいたな。彼等はよく似ている」
「‥‥‥何故魔族が魔の森にいたのでしょうか?」
「おそらく調査の為だろうな。そう気にする事もない。彼等は問題を起こす気は無い筈だよ」
「そうですね。ベリル様からお話をうかがってすっきり致しました」
「魔族の事はローズやクリムゾンには話さなくていいよ」
「何故ですか?」
「これくらい自分で気が付かなくてはね」
「‥‥‥畏まりました」
ロータスは本当に話さなくて良いのかと思いながら、ベリルの後から部屋へ向かった。
「ふぅ~~こうしてお茶を飲むと落ち着くわね」
「うん、菓子も美味いしな」
「でも、ノトが作ったお菓子の残りが少ないのよね。自分で作らないと」
「ローズ、作れるのか?」
「んーーーまぁとりあえずはね。味はどうかな」
「頼む。美味いの作ってくれ」
「努力はするわ」
「姫様、私はどんなお味だろうと構いません」
「‥‥‥ありがとう。ロータスは優しいのね」
「ローズ、俺だって優しいぞ?」
「そうね、クリムゾンも優しいわね」
「だろ?」
「ふふふふふ」
和やかな一時が過ぎていく。
それまでずっと黙っていたベリルが口を開いた。
「ローズ、明日は出掛けるからそのつもりで用意をしておいてくれ」
「出掛ける?どちらまで?」
「メルラン魔法国まで行くよ」
「メルラン?」
「あぁ、君の魔法の箒を買いに行かなくてはね」
「魔法の箒‥‥‥私の‥‥‥本当に?」
「必要だろう?」
「はいっ!欲しいです。自分で飛びたいです」
「メルランの魔道具店に行ってみよう」
「メルランにしかないのですか?」
「いや、大きな町の魔道具店には置いてあるよ。ただ種類は少ないかな。メルランに行けば、種類も豊富だからきっと気に入る物が見つかるだろう」
「種類が豊富‥‥‥楽しみです」
「明日は朝食の後に出るから、そのつもりでね」
「はいっ!」
「そうそう、ロータスには留守居を頼みたい」
「え?私は留守居ですか?姫様の護衛は‥‥‥」
「護衛は心配無いよ。私が一緒だし。明日はノトが薬草を取りに来るかもしれないからね。それに、何かあってもロータスがいれば安心だから」
「私がいれば安心?‥‥‥ベリル様お任せくださいませ」
「宜しくね」
ロータスは頬を上気させて頷いた。
「あの、ベリル様、自分は?」
クリムゾンが上目遣いで訊ねる。
「クリムゾンは一緒に行くよ。常にローズの側に居てくれ。ただ、メルランでは飼い猫の振りをしてもらうよ?いいね?」
「はいっ!勿論です」
「メルランでは飼い猫のクリムゾンなのね。なら、ずっと抱いていなくちゃね」
「え?」
「だって、飼い猫でしょう?」
「‥‥‥そうだけど」
「楽しみ~~」
‥‥‥思いっきりもふもふを堪能させてもらおうっと。
心ゆくまでクリムゾンを撫でまわそうと思うローズであった。
∗ ∗ 翌日 ∗ ∗
朝食を終えると支度を済ませたベリルとローズとクリムゾンは庭へと向かった。
荷物は空間収納に入れてあるので身軽だ。
「さぁ、行くよ」
ベリルが一瞬でドラゴンの姿へ変わる。
ベリルの背にクリムゾンを抱えたローズが飛び乗った。
「準備はいい?」
「はい、大丈夫です」
「自分も大丈夫です」
「じゃあ、留守を頼んだよ、ロータス」
「はい、お任せください。行ってらっしゃいませ」
「行ってくるね~」
「じゃあな~」
ベリルの翼が広がり、後ろ足が大地を蹴る。
ぐんっと一気に空高く舞い上がった。
眼下には森の緑が広がっている。
バサリと翼を動かすと向きを変えた。
水色の美しい竜は徐々にスピードを上げてメルラン目指して飛んで行った。
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