水色の栗鼠
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‥‥‥あれは、トリスタンの魔力か?人化の指輪を外したのか?いったい、何故?
森の向こうから感じた強い魔力は直ぐに消えた。
‥‥‥また指輪を嵌めたのか?
----シュッ---シュッ-----
ローズの前にロータスとクリムゾンが現れる。
「姫様!危険です!戻ります!」
「ローズ、行くぞ!」
「ええ、そうね。行きましょう」
-----ボンッ-----
ロータスがケルピーの姿に戻ると、ローズとクリムゾンはロータスの背に飛び乗った。
そしてロータスはふわりと宙に浮かび上がる。
ローズは身を乗り出して下にいるレオンに声をかけた。
「レオン、貴方も早く馬を連れて此処を移動した方がいいわ。強い魔力を感じたもの。危険よ」
「あ、ローズ、あの魔力は‥‥‥」
「それじゃあ、またね」
ローズは笑顔で手を振った。
「 え? いや、ちょっと待って。ローズ、君と会うには‥‥‥」
レオンが言い終わる前にロータスは更に高く浮かび上がり飛んでいった。
「行ってしまったか‥‥‥」
レオンがローズ達の飛んでいった方角を眺めていると、繁みを掻き分けてブルーノが姿を現した。
「おいレオン、あの魔力はトリスタンだよな。何かあったのか?」
「何かはわからないが、あったんだろうな。‥‥‥魔道具を使うか」
2人は索敵・探索用の魔道具を覗き込んだ。
「何か此方に来るな。先ほどのオークか?」
「面倒だな。俺達を避けてくれるといいんだが」
「あっ、もしかしたらトリスタンもそうだったのかも」
「なるほど、魔物は自分よりも強い魔力を持つ者には挑まないから、避けてくれるという訳か」
「じゃあ俺達もそうするか」
「一瞬でいいぞ」
ブルーノは嵌めていた《人化の指輪》を外してまた直ぐに嵌めなおした。
レオンは魔道具を見つめる。
「オークが向きを少し変えたぞ。北西に向かった」
「とりあえず良かったな」
「あぁ、森の奥へ向かう分には問題無いな」
‥‥‥良かった。ローズ達が住む森の家の方角に向かわなくて。水の竜王なら大した事はないのだろうけれど。
レオンがそう思った時、ガサガサと繁みを掻き分けて男が1人歩いてきた。
「ふぅ、オークは行ったな」
「トリスタン、戻ったか」
「指輪を外すなんて何があったんだ?」
「様子を見に向かっただろ?急にオークが向きを変えるものだから、もう少しで鉢合わせするところだったんだ。闘ってもいいんだが正直なところ面倒だったから、追い払えばいいかなと思って指輪を外した。ブルーノもそうだろ?」
「まぁな。こんな所で魔物を相手にする事もない」
「何事もなく、それでいい。我々は目立ってはいけない」
「そうだな。行くか」
「あぁ」
3人は馬に跨がった。
レオンは森の家がある方角を見つめる。
‥‥‥次に会えた時はもっと話せるといいが‥‥‥、甘い菓子でも渡せば喜んでくれるだろうか? でも、どうやって会うか‥‥‥それが問題だ。
レオンは思案しながら自分でも気付かずに口元を綻ばせていた。
「レオン?どうしたんだ?」
「ん?何が?」
「何だか嬉しそうだぞ?」
「確かに、何か良いことでもあったのか?」
「良いこと‥‥‥そうだな、あった」
「何が?」
「2人が行った後、水色の‥‥‥可愛い栗鼠が枝から落ちてきたんだよ」
「水色の栗鼠?新種の魔物か?」
「珍しい毛色だな、捕まえなかったのか?」
「すばしっこくてね、逃げられてしまった」
「惜しいことをしたな。珍しい毛色ならば、魔王陛下に献上出来たものを」
「トリスタン、お前本当に魔王陛下が大好きだな」
「ブルーノ、お前はもう少し魔王陛下を敬った方がいいぞ」
「はいはい、そうですね、気を付けますよ」
「そういうところが不敬なんだ、まったく」
「でもさレオン、本当に惜しかったな。献上しなくても愛玩動物として手元に置いてもいいじゃないか」
「そうだな‥‥‥次に出会えたら、逃さぬようにするさ」
「気に入ったのか?ならば、次は確実に捕らえろ。もたもたしていると、誰かに捕らえられてしまうからな」
「ふむ、トリスタンの言う通りだ。頑張るよ」
「そろそろ行くか?」
「そうだな」
「早く魔国に帰って、ゆっくりしようぜ」
3人は魔国に向けて馬を走らせた。
◇ ◇
魔の森の報告の後、レオンはスタロット公爵領の屋敷に来ていた。
城と言ってもいい立派な屋敷の裏手にある建物へと向かい、扉をノックする。
「シュミット、居るか?」
暫くの沈黙の後、中から返事がくる。
「その声はレオン様ですか?どうぞお入りください。今、手が離せなくて」
「わかった。入るぞ」
レオンは勝手知ったる場所とでもいうように、躊躇なく扉を開けて中へ入っていった。
部屋の中では、白衣を着た若い男が何やら道具を組み立てている。
「今度は何を作っているんだ?」
「ふふふ、お楽しみを。今作っている魔道具はきっとレオン様も驚きますよ」
「驚く?そうか‥‥‥‥‥シュミット、実は相談したい事があって来たんだ」
「レオン様が私に相談?」
「あぁ‥‥‥頼む。何かいい知恵があったら、教えてくれ」
スタロット公爵家御抱えの魔道具師シュミットは、いつになく真剣な表情のレオンに瞠目していた。
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