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赤色の瞳


 お父様の話はまだ続いた………。


  

 女神が仲裁に入り、10年に及ぶ戦は終わった。双方に多大な被害をもたらした為、今後また戦が起こらぬようにと女神はある提案をした。


 「------ この大地の下に新しい世界を造ろう。地上と同じように、朝には日が昇り夕には日が沈む。四季は巡り、水は清く緑豊かな土地を約束しよう。人族、魔族どちらでも構わぬ、どちらか地下の世界に行ってはもらえぬか? ------」


 その提案に人族の代表として、皇帝の息子が答えた。

 「我々人族は数も多く、住む地域も広く、移住するのは難しいでしょう………」


 続いて魔族の王が答えた。

 「では、我々魔族が地下の世界に移住いたしましょう。数も少なく、それほど苦にはならぬでしょう」


 女神は喜び、すぐさま地下の世界を造り始めた。

 ……………そして、魔族達は地下世界に移り住み、魔族だけの王国を造り、千年の間地上には姿を現さなかった。 


 千年も姿を現していないにもかかわらず、魔族の恐ろしさと金色の瞳は人族や獣人族に語り継がれていった。



 

 もう一方の瞳の色……………赤色の瞳が恐れられている理由、それも千年前の戦が原因だ。


 赤色の瞳を持つ者は、ヴァンパイアと、鬼………と呼ばれる魔物達だ。ヴァンパイアは言わずと知れた吸血鬼のことだ。そして、鬼というのは広い意味での呼び方で、種族は幾つかあるらしい。頑強な身体と強い魔力を持ち、頭には一本もしくは二本の角がある。中でも、鬼人族と呼ばれる者達は特に恐れられていた。 

 ヴァンパイアと鬼人族は、千年前の戦の際、魔族側につき共に戦った。 どちらも魔の森に住んでいたのだ。自分達の住む場所を守るのは当然の事であった。

 戦場では赤色の瞳を大きく見開き、まさに鬼のように戦ったのだ。


 戦が終わった後、ヴァンパイア達は東の大陸を出ていき、北の大陸に向かった。


 鬼人族は魔の森の奥深くに移り住んだ。


 そして、共に人族の前には姿を現さなくなった。




 ………………魔族達が出て行った後、人族は魔の森を手に入れた。はじめのうちは豊かな恵みを得ていたが、だんだんとそうもいかなくなっていった。 

 魔物や魔獣が増えてきたのだ。 以前は魔族がいたおかげで魔物や魔獣の数が抑えられていたが、魔族のいない今、それらを抑えることは誰にも出来なかった。 

 人族は魔の森から出て、元々住んでいた場所に戻った。だが、元の暮らしと同じにはならなかった。 増えた魔物や魔獣が人里にまで出没するようになってしまったのだ。欲を出した結果、かえって自分達の生活を苦しめてしまったのだ。……………



 人族達は、その後小さな戦を幾つも繰り返し、新しい国が興ってはまた滅んでいった。


 今、魔の森の東側には幾つかの国がある。

 南には大国ローゼリア王国、ローゼリアの北に連なる山々を越えると、ミズル諸国と呼ばれる幾つもの小国があり、その北に広がる草原を進むと、古い歴史を誇る大国リリエンタール皇国があった。





 「今、魔物や魔獣に困っているのは、自業自得ということですか?」

 「ん………どうだろうね。そうとも言えるかな」

 「今さら、もう仕方ないですね。なんとか対処していかないと」

 「そうだね。 そうそう、鬼人族の話が出たけど、幾つか話しておきたいことがあるんだ」

 「森の奥深くに移り住んだ鬼人族の事ですか?」


 「鬼人族はね、時々森を出て、人の住む場所にやって来るんだよ」

 「えっ、それ、恐い………。何故ですか?」

 「嫁探しだよ」


 「「嫁?」」


 「そう、彼らは何故か生まれる子が男ばかりでね、年頃になると嫁探しにやって来る」

 「そういえば、子供の頃、若い娘は一人で森に行ってはいけない、鬼にさらわれるって祖母が言っていました。それって嫁としてさらわれるって事ですか?」

 「たぶんね。人族や獣人族、エルフとか種族にこだわりは無いらしい」

 「恐いですね。姉達や妹達によく言っておきます」

 「若い娘をさらうにも、幾つか条件があってね、成人していて、夫や恋人がいない娘だけなんだ。確実に自分の子を産んでもらうためらしい」

 「どうやって確認するの?」

 「直接質問してくるみたいだよ。 年齢と決まった相手がいるかどうか」

 「無理矢理さらうんじゃないの?」

 「うん………そうなんだよね。交渉するんだよ。嫁にならないか?って」

 「それで、承諾する娘がいるんですか?」

 「いるんだよ、これが。 鬼人族はね、見目麗しい男が多いんだ」


 「はぁ?見た目がよくても鬼ですよね?僕には理解できない」

 「確かにね、でもついていく娘はいるんだ。それに、必ずしも不幸とは限らない。鬼人族は自分の嫁を大事にするから」

 「いくら大事にするからと言われても、恐いですよね………。私は嫌だなぁ」

 「そう思うなら、質問された時、自分は未成人で決まった相手がいるって言う事だね。諦めてくれるだろう。ノトも妹さん達に教えてあげるといい」

 「はい、そうします。姉達は結婚してますから、妹達にはよく言っておきます」


 「あとね、鬼人族だけではなく、魔族も見目麗しい男が多いんだよ。魔力の強い者ほど見た目も良いみたいでね。 見た目の良い男には気を付けるんだよ」

 「それ、本当ですか?」

 「そう、もし、森の中で見た目の良い男に声をかけられたら、鬼人族か魔族の可能性が高いから、気を付けなさい。油断してはいけないよ」


 ………恐いよ………鬼人に魔族? 会いたくはない方々だね。 


 「はい、気を付けます」



 「話を瞳の色に戻すけど、赤色の瞳はね、獣人族にもみられるんだ。特に兎や鼠の獣人にね。獣人達は知っているけれど、人族は知らない者が多いからね、恐れ、迫害するんだよ。だから、隠すしかない。お互いに平和に過ごすためにはね」


 「そうだったんですね。わかりました。ノトが眼鏡をかけている理由。………とっても綺麗な色なのに。なんか、悔しいです」


 「気にしないで、慣れているから。でも、ありがとう」


 ノトは優しく微笑んだ。



 瞳の色で苦労するなんて、今まで考えたこともなかった。前の世界でも、悩んでいる人がいたのかもしれない。 その人の悩みが軽くなればいいなと思った。

 この世界でも………。


 


 







 

 

読んでくださり、ありがとうございます。感謝、感謝です。読んでくださった皆様に良い事がありますように!

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