龍神とドラゴン
はじめまして、妙采と申します。
初の投稿です。広いお心でお読みくださると助かります。
たま~に、挿絵を入れると思いますが、こちらも広いお心でお願いいたします。
……………ピピッチチチッ……………ザ~~~~ザ~~~~………
鳥の鳴き声と川の流れの音が聴こえてくる。木の葉が風に揺れるたびに足元で光が踊る。
今、私はお気に入り神社に参拝しているところだ。奥宮は参拝者も少なく静かで、側を流れる川の音がよく聴こえる。何の為の参拝かというと、大好きな龍神様に、人生の新しいスタートを宜しくお願いするためなのだ。
私は新山夢乃52才、めでたいはずの誕生日の日に夫から離婚したいと言い渡され、先日晴れて独身に戻った。離婚の理由はよくあるもので、浮気相手が妊娠したとのこと……。自分でも意外だったけれど、とても冷静に淡々と話し合いと手続きをした。
………私の二人の子供はもう社会人として自立しているし、これから生まれる赤ちゃんにはお父さんが必要だし……仕方のない結果だと思う。
………そういう訳で、私の新しい人生の門出に龍神様に会いに来たのだ。
残りの人生面白おかしくそして楽しく過ごすために!!
祝詞を唱え、しつこいくらいにお願いして奥宮を出た。
「そろそろ帰ろうかな」
川の水の流れる音を聴き、キラキラと光る水面を見たりしながら、車が一台通れるくらいの道をのんびりと歩いて行った。穏やかな時間にほっこりとしていたら、急に後方から車の音が聞こえてきた。
ブーンギュギュッブーン……
……こんなところでなんて運転してるのかしら!危ないでしょ!もうっ!
振り向くとすぐそこに車が迫って来るのが見えた。道の端に寄ってやり過ごそうとしたのに何故か此方に向かってくる。
「何故、こっちに来るの!」
車を避けるためにとっさに動いたら、ふっと軽くなり宙に浮いた。
……ヤバっ! こっち崖だよ、しかも下は川~~! 落ちる~~!
……ぬおぉ~~龍神様助けて~~!
目を閉じて衝撃に備えたけれど、いっこうに川に落ちる気配が無い。
「???」
そっと目を開けたけれど、真っ暗で何も見えない。あんなにお日様がキラキラしていたのに。でも落下している感覚はある。
……何かな?何が起きてる?おかしいよね、これ?……考えてもわからない。
暫くすると上の方から何やら声が聞こえてきた。
《 おおーい、大丈夫かの? 》
声とともに何かがグッと私の身体を掴んだ。大きな硬い何か……。わずかに光を帯びて、暗闇でかすかに発光している。
………大きな爪?鳥の爪のように思えるけど。
恐る恐る上を向いてみると、そこには大きな顔があった。二本の長い髭、二本の角、黒みのある青緑の鱗、金色の眼……。
「……っ!」
あまりにびっくりして声が出ない。息も出来ない。
……龍だ、龍だ、龍がいる! しかも私を掴んでいる! 何、何が起きてるの?まさか、食べられやしないよね。
《 時空の裂け目に落ちたのじゃ、間に合って良かったわい 》
《 さて、戻ろうかの 》
そう言うと龍は上に向かって昇って行った。
「……あの、もしかして龍神様ですか?」
《 いかにも。先ほど会うたであろう? 》
「私にはお姿は見えませんし」
《 そうか、そうであったな。今は特別じゃからな 》
《 もう大丈夫じゃ。……ん?何だ? 》
上に昇る動きが急に止まってしまい、ゆっくり下に落ちていった。
《 何故じゃ?上に行けぬ。下に引っ張られていく。くっ。ぐぐっ 》
龍神様が踏ん張っているのがわかる。でも少しずつ落ちている。
「龍神様、頑張ってください!」
応援する私の声も虚しく、その時、私を掴んでいた龍神様の爪(手?)が徐々に弛んでいった。身体が自由になり、するりと龍神様の手から零れて下へ落ちていった。
……お願い私を見捨てないで。
《 何故かはわからぬがこれ以上我は手を出せぬ。お主を連れて行くことが出来ぬ 》
《 すまぬの………ん?僅かにだが、我と同じ龍の気配を感ずるぞ。安心せい 》
落下していく中、頭上から何やら会話が聴こえてきた。
《 同じ龍神の気を持つ者よ、この者を頼む。庇護してやってほしい------》
❮ ········この声は私と同じ龍なのか? この者とは? ❯
《 ---信-心--深--く----ま-------》
❮ ふむ、承知した。安心めされよ ❯
《------達者---で--な-----》
龍神様の声がどんどん小さく聴こえなくなっていく。その代わりにもう一つの声がだんだんハッキリと聴こえてきた。
❮ 心配いらないよ。私はこう見えて面倒見は良い方なんだ ❯
そう聴こえたところで、ドスン!と何処かに着地した。もちろんお尻から。ジンジン痛むのを我慢して辺りを見回していくと、少しずつどんな場所なのかわかってきた。薄暗く静かな洞窟のようなところだ。少し先のほうに光が射し込んでいるところがある。わりと綺麗な感じがする。
……ここ、何処?
そう思った時、後ろというか後方上部から声をかけられた。
❮ ようこそ。東の森の私の隠れ家へ ❯
恐る恐る振り返ると、そこには大きな龍……というよりは、ドラゴンと言うべき姿の存在がいた。水色に少し緑色を足したアクアマリンのような色合いの鱗に、優しげな金色の瞳の、恐ろしいというよりはとても美しい姿をしたドラゴンだった。
読んでくださり、ありがとうございます✨
不慣れなおばさんですので、何卒ご容赦を。