表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/11

そうして、青年と化け物は出会う。


 「だったら、『弱い』なんて言葉をつかうんじゃねえ!!! 」


狭い店内に、三鶴の声がビリビリと響く。


赤髪の子供はその声に震えるでもなく、怯えるでもなく、


ただ黙って自分を助けた男の瞳を見ていた。


似てる・・・、少年は思った。


確かにこの男は強いのだろう。間違いなく。だが、


自分の知っている「強者」の目ではなかった。


寂しそうでもあり、気が弱そうでもあり、また、


強がっているようにも見える。少なくとも、先ほどまで


自分と老人を脅かしていた大男のような威圧感はない。


だから言うなれば、「不思議な人」だと思った。


男が言った言葉の意味も、正直まだ子供である赤髪の少年はわからなかったが


意味が分からなくても、意味はあるのだということは理解できた。





そんなことを考えていると、男は急にハッと何かに気づいたみたいに


「また、やっちまった・・・・・・」とぼそりと呟いて、


「俺は運搬屋のミツルっていうものだ。ここの店主さんに用があるんだが、、


どうしようか、爺さん倒れているし・・・・・・」


ミツルは壁にもたれている老人を見てそう言うと、商談自体を諦めたのか、


()()()()()()()()()、そんなことよりも」


男はポケットから一枚の魔法紙をだし、そこに描かれている下手くそな絵に


映る女の子を指さして、


「ネルって、やつ、知らねえか? 」


「ネル・・・・・・? 」


「ほら、こう髪が青くて、なんか擦れてて、二本、小さな角がある、」


「いえ、ごめんなさい。見たこともない。」


そっか、と少年の返事を聞いた三鶴はうなだれた。


どこに行っても見つけることができないのか。






「でも、『青の巨人』みたいな格好している魔物がいるんですね」


「・・・青の、巨人? 」


「知らないんですか? この前、街一つを丸々滅ぼした化け物のことですよ。」


「・・・・・・」聞いたことが無い。


「なんでも、そいつは異様なほどの体格を持ち、、体と長い髪は青色で


禍々しい角が二本、生えていたらしいです。」


少年は詳しそうに語った。


「詳しいんだな、まだ小さいのに。」


「ん? ああいえ、」


少年は両手を左右に振って


「僕、このお店の店主なんです。」







少年、もといライネルと名乗ったその魔物は三鶴に


「化け物」がどこにいるのかを教えてくれた。


あとで聞いたところ、ライネルは自分の店で酒屋を営む傍らで、


情報屋をやっていたらしい。


どうも、三鶴が倒した猫の獣人はずっと金をせびっていたようで


三鶴が店を出ようとしたときにお礼だとばかりに「地図」までくれた。


これで、もう迷うことはない。中々、この世界で地図が出回ることなど


そうそうないのだ。


三鶴は貰った地図をローブのポケットに入れて


「なあ、一つだけ聞いてもいいか? 」


「はい、なんでしょうか? 」


店奥で寝かされている老人のほうを見やって、


「あの爺さんは、誰なんだ? 」


ああ、とライネルは笑って


「言ったじゃないですか、ただの恩人です」


と言った。





 ♦♦♦♦♦♦





移動には魔獣を持たせてくれた。外見は馬に似ている。


それに乗って走ること、実に三日。





物部三鶴は、空に強烈な「光」を見た。


夜中の夜空に浮かぶ、この星の衛星である「イブ」という星を眺めていた時、


青い光が、近くの森林に「落ちた」。





「あからさまだな、おい・・・・・・!?」


すぐ轟音が聞こえたかと思ったら、


「--------------------!!!!」


という破裂音にも近い音が聞こえてくる。


「ああッ!!??」


衝動がここにまで伝わってきている。三鶴も三鶴で耳の痛みに耐えていたが


数秒で、それは止まった。


「はあ、はあっ」と心臓の動機を抑えながら、三鶴はゆっくりと「音のした方」を見て、愕然とした。


話に聞いていたよりもずっと凶悪で。


想像していた姿よりも遥かに「人に似て」。


余りにも化け物で。





禍々しいという表現でも、表しきれない存在。


そしてその、木々を焼く黒い炎の中でゆらゆらとたたずんでいる「存在」は


三鶴の知る、「鬼」のようで、


そして。





あの少女と同じ目をしていたのだった。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ