表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/11

欠落した男


ざわざわ。長く伸ばした前髪を、風が揺らしている。


 終わった……、俺の人生。男は心の中でそう呟く。






 たった今さっき、彼は高校を退学してきた。


風が強く吹いて、もう使わないだろう小汚い制服をなびかせている。


クラスメイトから、リンチにかけられたのだ。相手は数十人で、俺は一人。





 味方は初めからいなかった。


ずっと一人で必死になって抵抗して、結局勝った。


何故か、俺は昔から喧嘩だけは負けたことが無いのだ。


それでも、やっぱりこれは、きつい。


体のいたるところにあざができて、肩も上まで上がらない。


何しろ相手が大人数だったのだから、当たり前ではあるのだが。





そうやって俺、物部(もののべ) 三鶴(みつる)は家に帰っていた。


宵闇に浮かぶ月を眺めると、今日はやけにきれいに見えた。


これからのことを考えると本当に辛くなる。


暴行を起こして退学なんて・・どこも受け入れてくれないだろう。


「あぁ、くっそ、いてえ・・・」


そうこぼす三鶴の体は、誰が見てもボロボロだった。


片腕は脱臼しているのか、ブランと垂れ下がっていて右手で肩口を抑えている。





 三鶴がずっと上を見ていたせいかもしれない。


物部は自分の足元が少しずつ変化していることに気づかなかった。


彼も彼で、もう何日もまともに寝ていないのだ。ぼうっとしていて、


「ん・・・・・・?」


月明りに照らされた家のコンクリートブロックや柵の影が


不自然なくらいに黒い。


気にせず歩いていくと、だんだんとその「影」は大きくなっていき、


物部 三鶴を飲み込んでしまった。


「あああああああああ!!」


何の前触れもなく、何の前兆もなく、


俺はその日、「下に落ちた」。





「----。あ^^^==~~!!」


声が聞こえる。何を言っているのかわからない。


なんだろう?誰かが自分の体を揺らしている。


「だ、れ・・・だ・・・・?」


かすかに動く瞼を開くと、目の前に女の子がいた。


「---!?~~~~あ==」


日本語じゃないけど、なんて言ってるんだろうか。分からない。


少しだけ動く体を持ち上げていくと少女はニコニコと笑ってこちらを見ている。。


「あの、君は誰、だ?」


「うん?」とその子はああ、と納得したような顔をして


うんうんと頷いてから、俺の手を引いてどこかに行こうとしている。


・・ああ、頭がズキズキする。というかここ、どこだ!!??


木造の古臭い部屋の中にいるようだ。


だが、置いてあるものがなにかおかしい。模様も竜をあしらったものがほとんど


を占めている。


・・・・・???どこなんだここは。


俺が少女に気を向けないでいると、少女は「はあ、」と嘆息し、


三鶴を動かすのをあきらめると、すぐに一人でどこかに行ってしまった。





 頭が重い・・。だが、なんとなくの疲労が今は心地いい。


少ししてから少女が水晶を持って俺の顔に近づけてきた。


すると、急に、それが不思議な輝きを発し始めた。


ガラスのような、いやもっときれいな何かでできているそれの中に


宇宙を思わせる放物線がいくつも揺らめいていた。


ずっとその光に見とれていると、頭の中に情報が流れこんできた。


「う、、、、えっ!!」


衝撃が走ったように、頭の中の回路が「変わった」間隔がある。


目の前で相変わらずニコニコしている女の子は降格を釣り上げて、


「おはよー!!」


「え」


「おはよー!!」


「は、」


「お・は・よーーーーー!!!!」


‥そんな声量で言うことなのか?


「ってか、俺の言葉わかって…?」


「ん?ああいや、あんたのほうにわかってもらったんだぜ?


 魔境石の力で。」


魔境石?なんだそれ。


「っていうか・・・」


少女の風貌も人とはだいぶ違う。


青色の、腰まで伸びた柔らかそうな青色の髪に、少し焼けた肌。


瞳の色が、黄色だし、それに・・


小さな角が二本、頭に生えている。


「ここ、は・・・・・どこ、なんだ?」


「ここ?おいおい、あんたなあ、どっかで頭でも打っちまったんじゃねえの?」


やれやれといった風に頭を振る。


「ここは」


魔界だぜ。


彼女の後ろに見えた鏡には、


怪物のような、男が映っていた。










ありがとう!カクヨムにて同内容のものを投稿してます。

良かったら付き合ってください!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ