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第三章 仮面の下 6

           ☆


 神谷さんの布団からゴソゴソと抜け出す音で私は目覚めてしまった。


 ナイトレイさんがベッドじゃなきゃ眠れないという理由で私は和室の床に客用の布団を引いて寝ようとした。


 私には友達がいないからいらないとお父さんには言ったけど買っておいてもらってよかった。


 けれど、その客用の布団は一つしかなく、私はナイトレイさんと一緒に寝ることになってしまう。


 神谷さんは断固として一緒に寝るのを拒否したので仕方のない決断だった。


 『輝石学園生』のライブDVDをみんなで見てたら仲良くなれたけど、いきなり同じベッドで眠るというのはハードルが高い。


 最初はナイトレイさんの髪の香りや大きな胸が体に当たり意識して眠れなかったけど、段々慣れてくるとすぐに夢の中の世界に飛び込んだ。


 そこまではよかったんだけどな。一回起きてしまうとなかなか眠れない。


「マナってばトイレかしら」


「……起きてたの?」


 隣で寝ていたナイトレイさんが私に声をかけてきた。私はナイトレイさんのほうに向き直る。鼻と鼻が触れ合ってしまうほどの距離に私は慌てて顔を遠ざけた。


「なによー。こんなに綺麗な顔が近くで拝めるのに離れちゃうの?」


「あ、あはは……ちょっと恥ずかしいから……」


 ナイトレイさんの不満顔は愛嬌があってとても可愛い。


 私もこんなふうに自信が持てて可愛い顔ができるようになりたいな。


 そうすれば、私の目標に一歩近づけると思う。


「ねぇ。気になってたんだけど、どうしてメイはオオモトだっけ。あいつをパートナーに選んだの?」


「まぁ、色々とあるけど、やっぱり一番はあの人の力になりたいから、かな……」


「ふーん。もっといい人いっぱいいたのに。それであなたの夢は叶うの?」


「私の今の夢は大元君と一緒に、正所属になってトップになることだから。あの人がいないと成立しないよ」


 私がここに最初にここを受けたときはただ私のためだけだった。


 『輝石学園生』になってみたい。その夢を叶えるため。


 でも、今は違う。私に力をくれたあの人のためになりたい。そして今の私の夢はただ『輝石学園生』になりたいだけじゃない。


 大元君が目指す峯谷さんを超えるトップアイドルになるのが私の夢だ。


 それ以上もそれ以下もない。


 さっきトップなんて言っちゃったけど、ナイトレイさんには笑われちゃうかな。


 私なんかがトップになれるわけがない。


 峯谷さんに勝てるわけないって。


 けど、約束しちゃったんだもん。


 この夢は絶対に叶える。


「ふふ、じゃあ私達はライバルね」


 ナイトレイさんの反応は想定外のものだった。


「……笑わないの? 私なんかじゃ無理だって」


「そんなことないわ。事実あなたはとてもキュートだし、私よりも全然ダンスも上手いし覚悟もあるわ」


「私を……見ててくれたの?」


「当たり前じゃない。あの多目的ホールでのダンスを私は忘れていないわ。一目見てファンになっちゃったもの」


 ナイトレイさんみたいな、実力も知名度も容姿も優れている人にそう言われると照れる。私は恥ずかしさを誤魔化すように掛け布団で口元を覆った。


「あなたって話そうとしても常にどこかへ消えちゃうし、見つけたと思ったらあいつといつも一緒にいるじゃない。だから今日は話せてとても嬉しいわ」


「わ、私の方こそ……今日話せてよかった。ナイトレイさんって私とは住む世界の違う人間だと思ってたけど……全然、そんなことなくて」


「当然よ。私はただの一五歳の女の子だもの。まぁ、確かにパパはちょっと有名かもしれないけど。でも、それは私の力ではなくパパの力よ」

 

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