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Kanの短編集

恐怖の侵略者

作者: Kan
掲載日:2017/03/04

 ある日突然、高度な発展を遂げた未来の地球に、宇宙から未確認飛行物体がやってきた。

 長身の青年は、空に浮かんだ円盤状の飛行物体を指差して、

「お皿だ。お空からお皿が落ちてきたぞぉ」

 と叫んだ。

「でも、お皿にしちゃ、だいぶ大きいね」

「それに分厚すぎるよ」

「馬鹿だなぁ。君たち、あれはね、灰皿っていうんだよ」

 難しいことはコンピューターに任せっきりで、すっかりアホと化していた、地球人たちは口々に言った。

「えー、灰皿ってなあに」

「なんでも、空の上からたまにやってくるものらしいよ」

「へー、じゃあ、あれがそれなの?」

「きっと、あれがそれなんだよ」

「へー」

「へー」

「へー」

「あれが灰皿かぁ」

 地球人たちは、顔を見合わせて満足げに頷いた。

 UFOの中から、人相の悪いタコが出てきた。

「ぎゃあ」

 地球人たちは怖くなって逃げ出した。そして、地面に倒れるとみんな両手で自分の眼を隠していた。

「なんじゃぁ、この見るからに馬鹿そうなヤツらは……」

 タコは、鼻水を垂らした地球人の顔を見まわして、呆れたように言った。

「わしらは、宇宙の侵略者じゃあ。貴様ら、よお覚えとけよ。今に後悔することになるんで」

 タコは地球人をするどく睨みつけた。

「し、シンリャクシャってなんだ……」

「いきなり難しい言葉を使ってきたね……」

「ねぇ、調べよ。調べよ」

 地球人たちは慌てて、スマホで侵略者の意味を調べ出した。しかし、しばらくして、

「やめよ。わかんないよ」

「もう、めんどくさいよ」

「やめよやめよ」

 地球人は、スマホを放り投げて、地面にごろごろし始めた。

「なんじゃぁ、こいつら……」

 タコはだんだん気持ち悪くなってきた。

「コンピューターに任せっきりだから、お前らのような馬鹿が生まれてくるんじゃ。どれ、総理大臣でも出さんかい」

「総理大臣ってなあに」

「大統領でもええから、代表者出さんかい」

「王様のこと?」

「それじゃ!」

 しばらくすると、口ひげをたっぷり生やしたおじさまが飛行機に乗ってやってきた。

「はい、私が王様です」

「お前も見るからに馬鹿そうじゃのぉ」

「は? ば、馬鹿とは……」

 少し精神的に来たらしく、王様は、少し目を潤ませながら、

「ご、ご用件は……」

 と質問した。

「わしらがこの星を頂くことにした。まあ、貴様らは大人しく奴隷になるか。他の星に移住するかしたらええわ」

「はあ」

「もっと驚かんかい」

「いえ、少し……つまり私たちはどうしたら良いのでしょう」

「だから、さっき言っただろ。奴隷になるか、他の星に移住するか」

「それでしたら、一応、政府のコンピューターに相談しませんと……」

「そうやって、ペリーやハリスが来た時も先延ばしにしたんじゃろぉ。その手には乗らんわい。今すぐじゃ。今すぐ回答せんと、貴様の命はない」

「ええと、奴隷になるか、他の星に移住するか、ですよね……」

 王様はスマホをいじりだした。しかし、手が震えてスマホが押せない。

「だ、駄目だ……」

 王様は怖くなって泣き出してしまった。

 その様子を、ぼんやりとタコは眺めていた。

「なんだか、侵略するのは悪い気がして来たのぉ」

「なんでですか?」

「あんたのその愚図さがあかんのですわ。ああ、わしのせがれ、そっくりですわ」

「お話を聞きましょう」

 タコは遠い過去を振り返った。

「わしのせがれはそれはそれは泣き虫じゃった。あんたらと同じく、コンピューターが好きでな。ゲームばっかりしておった。家に帰れば、あの鼻垂れは床にごろごろしておったもんよ」

「それはそれは……」

「そのせがれが、小学校の修学旅行でな。突然、うちに電話がかかってきよった。嫌な電話じゃった」

「……」

「せがれは、火星の谷底に落ちて、死んでしもた。事故じゃった……」

 タコは涙をぬぐった。

「愚図な貴様らを見ていると、せがれを思い出してしまうわ。もう、侵略する気なんて失せた。わしはどう責任取らされるか知らん。それでも、わしは帰る」

 タコはそう言って、哀しげに微笑むと、飛行物体に帰って行った。そして、飛行物体は逆さまの流れ星となって、空に消えていった。

 それを見て、王様は言った。

「馬鹿な振りをして良かったなぁ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 宇宙の戦略者、タコ(火星人?)さんと王様の会話、ふたりのやり取りが面白かったです! 「だから、さっき言っただろ」とか「もっと驚かんかい」など、緊張感のない気の抜ける可笑しさに笑えました。 …
2018/08/19 17:05 退会済み
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