表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/25

アデルモ島

さて、ここで舞台は少々過去に遡る。


モンフォールとアドラータの間にある群島海域、

その西の外れにポツンと離れて一つ島があった。

その島の名をアデルモ島という。


アデルモ島はリコシェが紅い瞳のドラゴンに

出会った島が最寄の陸地だったが、

コテージのある浜からでは

水平線より下になって島影は見えず、

リコシェ命名の生クリーム山に登れば

かろうじて島のてっぺんがほんの少し見えた。


注意深い人ならそこに島があるのだろうと

推測する事はできるかもしれない。

リコシェは気付かなかったが、リコシェの場合探し物が

足元の島にあったのだから仕方が無いともいえる。



アデルモ島は、近くに良好な漁場があったことと

島の入り江が他に比べて深めだったことから、

この辺りを漁場とした近在の漁師達が寄り合って

小さな小屋を建てて古くから利用していた。


プライベートアイランド開業にあたって

群島海域は一括して管理される事になったのだが、

この島だけは長く使われてきたという事実から

特別に漁師達に残される事になった。


群島海域の外れという地理的条件も漁師達に味方した。

ただ、この事は一般にはほとんど知られず、

群島海域の島は全てプライベートアイランド管轄というのが

常識となっていった。



だが、猟師町を栄えさせてきた豊かな漁場で、

どういう按配かふっつりと魚が獲れなくなってしまった。


アデルモ島に来る燃料で別の漁場へ向かえば

それなりに魚が獲れる。

頑固にこの島に通った古株の漁師達も不漁続きに勝てず、

ある者は他の漁場へ、ある者は廃業して、

とうとう島に上陸する漁師がいなくなって久しい。




忘れられていくだけの島だったのだが、

ある時漁師らしからぬ風体の男達がこの島に上陸した。

そのうちの一人が、

同行していた漁師の長に大げさに頷いて大声で言った。


「いやあ、良い物件を見つけました。

 契約が成立すれば、この小屋も含めて島の使用権は全て

 私のものですな。漁業権も私のもの、素晴らしい」


漁師の長は不安げな面持ちで声をかけた。


「……何度も言うが、ここの漁場は枯れちまって

 もうほとんど魚は獲れんが、本当にそれで……」


「いいんですよ、いいんですよ!

 金持ちの道楽でホンのちょっと漁師の真似事が

 してみたいだけなんですから」


男は漁師の長の目の前で、

大きな宝石のついた指輪を嵌めた手をヒラヒラ振ってみせた。


だが、さらに長は言い募る。


「後から文句言われても、金はもう使い道が決まっててなぁ。

 ビタ一文返せんが、本当に……」


「そんなにご心配なら、この書類に書いておきましょう。

 魚が獲れなくても金を返せとは金輪際言いません、と。

 えー、……魚が ……獲れなくても

 …………返せとは ……言いません ……と、はい!

 書きましたよ。ほら、見てください」


男は長の目の前で書類に書き足して見せた。


「……おお、本当に」


「納得していただけましたか?

 ちなみに、何にお金を使う予定なのか

 聞かせていただいても?」


男の目に一瞬抜け目なさそうな色が浮かんだが、

すぐに引っ込んだ。


「ワシら、この金とみんなで出し合った金とを合わせて

 大きな船を買うことにしたんじゃ。

 遠くまで漁に行けるからなぁ」


「ああぁ! そうですか、そうですか。

 皆さんの船が大漁だといいですなぁ」


長はとても言いにくそうにこう言った。


「……ああ、そのぉ、

 PCFでワシらの口座に金振り込まれたか

 確認してから名前書けってうるさく言われてるもんで、

 疑ってるようで申し訳ねぇが確かめさせてもらうでな」


「ああ、それはもちろんですとも!

 存分に確認なさってくださいねぇ」


男はにこやかに長にそう言うと、

少し離れて立っている男たちに向かって声をかけた。


「……おい、お前達。振込みは間違いないだろうねぇ。

 ちょっと連絡して確かめておくれ」


使用人だろうか、声をかけられた男はさらに距離をとると、

何か見慣れない小ぶりの機械を取り出して

ポンポン……とボタンを押した。


「……む? ……どうも振り込まれてないようじゃが?」


PCFで口座を確認した長が不安げな声をあげると、

男はすかさず反応した。


「え? おやおや? それはおかしいですねぇ」


男は振り返って長に見えないところで

思いっきり顔をしかめて見せた。

そして、忌々しげにアゴをしゃくって合図した。

それを見た使用人らしき男が

小ぶりの機械に何事かボソボソ言うと……


「ああ、振り込みが……。

 んーっと…… 額面に間違いは無いようじゃ」


男はその声を聞くや否や、長に契約書を差し出した。


「はい。では、ここにっ!サインをお願いしますよ」


漁師の長がサインすると、

男は長から契約書をひったくってじっくり眺め

満足そうに頷くと満面の笑みで言葉をつないだ。


「……これで契約は成立したわけですから、

 いいですかぁ? 今、この瞬間からこの島に

 誰も立ち入ってもらっては困ります。

 一歩たりとも、ですよぉ。

 ……ここんところ肝心ですねぇ、

 お分かりですかぁ?」


「ああ、この島にはもう用はねぇから来ねぇとも」


「漁師のお仲間の皆さんも!ですよぉ。

 大切な事ですから、帰ったら忘れずに必ず

 皆さんに念押ししといてくださいねぇ。

 ……もし、だれかがこの島にやってきたらその時は、

 お金返せ!って言っちゃいますよぉ。

 いいですかぁ?」


「そ、それは困る! わ、わかった。

 絶対この島には誰も近寄らせん。

 約束するっ!

 ……それでは、ワシはこの辺で帰るとするか」


「はい、ご苦労様でした。くれぐれもよろしく」


「ああ、わかったわかった。それじゃぁの」


漁師の長はこの場にいるとすぐにでも

金を返せと言われるかのように、

そそくさと自分の船に乗り込むと急いで帰っていった。


船を見送った男は片頬で微笑んだ。



「……金払っちまってよかったんですかぃ?」


「あんなジジィの一人や二人

 そこらの海に船ごと沈めても……」


「んまぁ、大事の前の小事ですからねぇ。

 はした金をケチったばかりに

 要らない注目を浴びるなど、愚の骨頂!

 これでいいんですよ。

 気付かなければそれはそれで

 やりようはいろいろあったでしょうけどねぇ。

 ふふふふ……」


男は口元にハンカチを当てると漁師小屋に入って行った。

古い漁具やらロープやらが乱雑に置かれている。

男は漁具を蹴飛ばした。


「とりあえず、この小屋が無くなると目立つので、

 外観はこのままに内部を丸ごと改装しましょうか。

 他の工事も始めますから、

 一箇所から大人数まとまらないように分散させて

 息のかかった工事関係者を集めてください。


 ……肝心なのは見た目を変えず、

 ひっそりとこの島を改造してしまうということです。

 こんな良い物件はまたとありませんから、

 くれぐれも気をつけてくださいよ。

 ……もし、ドジを踏んだら」


「……踏んだら?」


「そうですねぇ、さっきお前の言ってた方法で

 散歩にでも行ってもらいましょうか。

 海の底へ……」


「ひっ!」


「あうっ!」


「……ふっ、いやですねぇ。冗談ですよ、冗談。

 ホーーーホッホッホッホッ……」






時は進んで、

リコシェが紅い瞳のドラゴンに出会うおよそ半年前。


オリーブの木が生えている変わった隠れ家を持つ男は、

群島海域にありながら

プライベートアイランドの管轄から外れている

一つの島に気付いた。


調べると現在の所有者は全く漁業とは無関係だ。

書類上不審なところはないが、

問い合わせてもウヤムヤな返事しか返って来ず

何か違和感がぬぐえない。

もし、島が例の件で利用されているなら

放っておくわけにはいかない。


これはもう、直接行って調べるしかないか。




以前はアデルモ島付近で盛んに漁をしていたが、

この頃ではパッタリ近寄らなくなったという

漁師町がある。


よそ者には途端に口が重くなるその漁師町に、

凍えるような冷たい風とともに男がふらっと現れた。


男は酒場に出入りし陽気に振舞う。

冗談を言っては漁師を笑わせ、

少しずつ漁師と顔馴染みになっていった。


時に人手の足りない船に助っ人に乗ったり、

手伝い仕事も器用にこなし、少しずつ信用を積み重ねて

一つ季節が進んだ頃

とうとう仲間として認められるまでになった。



ある日助っ人で乗った漁船で

一仕事終えて港に向けて走っていた時、

漁師がボソッと言った。


「……俺なぁ、まだカジキ釣った事無くてなぁ。

 いっぺんどうしても

 あのでかい奴をものにしてみたいんだよなぁ」


船にはイワシがほどほどに積まれている。


「こんな小っちぇ魚ばっかり毎日毎日獲ってよぉ、

 なんだか俺の人生空しいんじゃねぇかって

 思っちまってさぁ……」


「……そうかぁ。

 ……オレは、イワシが好きだけどなぁ。

 塩で焼いても旨いしオリーブオイルに漬けたのも旨い。

 そのまんまでもイケルが、オイル漬けしたイワシに

 薄切りの玉ねぎのせてパン粉とチーズふって

 オーブンで焼いたやつなんか最高だと思うぞ」


「……あんた、いい奴だな。 ……ああ、そうだとも!

 イワシはいい魚だよ。

 イワシのお陰で女房子供養っていけてるんだもんなぁ。

 イワシにゃあ感謝してるよ。」


漁師は斜めにイワシに目線を落とした。


「どっさり獲れりゃあ売ってもまだ腹いっぱい食える。

 余った分は濃い塩水くぐらせて

 じっくりオイルで煮れば保存食だ。

 それでも余ったら、

 畑の肥料にすりゃあ来年か再来年かわかんねぇが、

 先の実りを助けてくれるんだよ。

 こんなありがたい魚は無いってのは

 俺にもよっく分かってるんだ。

 ……だけどなぁ、こいつ、小っちゃ過ぎるんだよなぁ」


漁師は一つタメ息をついた。

タメ息など船に積むな。ろくな事はないぞ。

そう思って男は言った。


「……よし!

 それじゃ一回だけ、カジキ狙ってみようじゃないか。

 春のカジキは美味いから獲れりゃあ万々歳。

 あんたも満足して、これからもせっせと

 イワシ獲りに精を出せるようになるさ。

 ……まぁ、ダメでも一回挑戦してみたんだって事実は

 ちゃんとあんたの胸に残るしさ」


「お、おう。……やれるかな。んー、そうだなぁ。

 一日くらい獲物が無くても

 切羽詰ってるわけじゃねぇから何とかなるか」


漁師は目を輝かせて話し続けた。


「……酒場でよぉ、何度も何度も

 でっけぇカジキ釣った自慢してるやつによ、

 俺も釣ったぜ! って言ってやったらどんな顔するか、

 へっ、楽しみでしょうがないぜ」


「どうやって釣るかとか道具はどうするかとか、

 そこらへんは大丈夫なのかい?」


「へへっ。

 ただ大人しく自慢話聞かされてたわけじゃないぜ。

 大事な事はちゃあんと、この頭に叩き込んであるさ。

 ……よし!

 さっそく今日準備して、ちらっとカミさんに話してみて、

 うまいこと丸め込めたら明日やるぞ!」


「わかった!」


ちゃんとおカミさんの許可は貰うんだなぁ

とは敢えて言わず、男は海に目をやりながら微笑んだ。




翌朝、まだまだ日が昇るには何時間もある頃。

ルベの薄赤い光の中、漁港を出た船がしばらく走ると、

漁師がいきなり海に手を突っ込んだ。

神妙な顔をして唸っていたが唐突に叫んだ。


「ここだ!」


なぜそこなのかよくわからないが、とにかく、

大きな針を仕込んだイカのような疑似餌を、

丈夫な太い糸の先につけて

走る船の真後ろに放り込みカジキ釣りが始まった。



しばらく走るうちに、

突然手ごたえがありグイグイ引っ張られる。


「……お? ……おおお?!

 ……き、きたぁぁぁぁっ!!」


「なんと、いきなりか! すごいな」


まさしくビギナーズラックというやつだ。

のんびり感心している訳にはいかない。

漁師の手元には糸を通して大きな獲物の手ごたえが

ビンビン伝わってきているようだ。



それから魚との格闘が始まった。

腕と上半身ではなく足を使うのがコツなんだってよ!

などと叫びながら、

漁師は太い竿をグッと引き上げて下げる。


足を突っ張るようにして竿を上げ、

それで引っ張った分の糸が

足の力を抜いて竿が下がった時に緩みになる。

その緩みをすばやく巻き取る事で

効率よく楽に巻き取っていくのだ。


なるほど、と感心しつつ船を安定させるように操る。

物凄い力で引っ張られるので小さな船だと

横向きではひっくり返されそうな勢いだ。

なので、糸の向きを見てできるだけ

舳先から獲物までまっすぐになるよう保ちつつ

船足をとめないようにする。


初めてで誰かに教わったわけでもないから、

海中の針にかかった獲物を想像し

頑張っている漁師の助けになるようにと懸命に動いた。



水平線に朝日の先触れの明かりが浮かぶ頃、

大人しく引かれるままに船に寄ってきた獲物の肩口に、

先が外れる工夫のしてある柄の付いたフックを

力いっぱい打ち込んだ。

激しく暴れたが縄の結ばれたフックは外れず、

ついに漁師が止めを刺した。


大きな魚体を苦労して船に上げ、

二人で船にひっくり返って荒い息をつく。


「やったなぁ」


「おう、やってやったぜぇ……。

 俺の人生にもう悔いはねぇ。

 なんでもきやがれだぁ」


清々しい顔で起き上がった漁師が、

鮮度を保つために手早く血抜き処理をした。

人生最大の獲物を嬉しそうに見ていたが、

ぎょっとして動きを止めた。

男の目線の先に小さく島影が見えている。


「うわ、しまった! あれはアデルモ島かぁ。

 こんなとこまで来ちまってるとは……」


「……ん? あの島がどうかしたのか?」


男は何気なく尋ねた。

漁師は、大切な獲物と男の顔を交互に見る。


「……こいつを手伝ってくれたあんたにゃ

 ウソはつけねぇな。

 ……あれはな、無かったことになってる島だ」


「え? それはどういう事だ?」


「話してやるからとっとと行くぞ。

 急いで離れないと、ここじゃあマズイんだ……」




港に向けて船を走らせながら、

漁師はアデルモ島のいきさつを話してくれた。


「ふーん、そんな事があったのか。

 ……大きい船が買えて大きな漁ができるようになって

 町は大助かりだっただろうけど、

 その金持ち、何だか胡散臭くないか?」


「そうだよなぁ。漁師の真似事するとかいう話でさぁ、

 漁具を買ったりするなら

 町に来るだろうと思ってたらしいけど、

 それから一回も来てねぇらしい。

 金持ちでバカンスとかで短い間だけ来るにしても

 新鮮な野菜やなんかは必要だろうに、

 そっちの買い物にも来ねぇってよぉ。」


漁師は憮然とした表情で話し続ける。


「きっと大きい船仕立てて

 どっさり荷物積んで来るんだろうって専らの噂だったよ。

 年寄り達がうるさいから表立ってしゃべれねぇし、

 気心の知れた仲間内だけでコソコソっとなぁ……。

 くっそぉ、漁師なんかと付き合う気もねぇっていう

 お偉いさんなんだろうよ」


「……ふむ」


男はなにやら考えこんでしまった。


「今の話聞いたってのは絶対秘密だぜ?

 そうじゃないと俺、村八分にされちまうよ」


「わかった。あんたに聞いたってのは絶対秘密だ。誓うよ」


「おう、頼むぜ。……って、疑うわけじゃねぇけど

 念のために聞いとくが、

 いったいあんたは何に誓うんだ?」


男はまじめな顔をしてまっすぐ漁師を見た。


「そうだなぁ……。オレの最愛の花嫁に誓う!

 これでどうだ?」


「ほほぉ、あんたも隅に置けないねぇ。

 そんな人がいたのかぁ」


「いや、まだいない」


「ええっ? なんでぇ、まだいないって。

 そりゃあんまり頼りねぇなぁ」


「そうか?

 いつか出会う大切な人に誓うってのは、

 ある意味最強だと思うが」


「んーーー、だな。

 わかった!

 こっからもうこの話はしねぇぞ」


「おう」



いつか出会う大切な……か。

そんな人にはまず出会わないだろう。

だからと言って誓いを破る気はないが。


微かにため息をこぼして、頭を切り替えた。

……アデルモ島、やはり直接調べに行く必要があるな。


そう思って何気なく沖のアデルモ島のほうを見やった時、

漁師が声をかけた。


「今日は本当にありがとな、アッシュ。

 俺はもうあんたには足向けて寝られねぇ」


「いや、オレもいい経験をしたよ、パオロ。

 ……ほら、もう港だ。みんな大騒ぎするぞ。」


「お、おう!」



パオロの獲物に、港が湧きかえった。

興奮の渦が巻き起こり陽気な漁師の町は

あっという間にお祭り騒ぎになってしまった。

男は驚きと賞賛と羨望の入り混じった人の渦から

そっと離れた。

目立ち過ぎるのはうまくない。


「……元気でな。カミさんを泣かすなよ」


チラッと振り返ってそう呟くと、足早に遠ざかる。



プライベートアイランドを使うか……。


その足で借りていた下宿屋を引き払うと、

男はひっそり港町から姿を消した。





アデルモ島の最寄の島の予約がとれたのは

それから2ヶ月半も先だった。

いろいろ準備するのに余裕があるのは良いが、

ちょっと余裕ありすぎだなと苦笑した。



準備のために久しぶりに故郷に帰ってきたが、

しばらく見ない間に小さかった甥っ子が

縦に大きく育って一人前の顔をするようになっていた。

足元にまとわりついて遊びをせがんでいた

幼い頃のイメージが強くて、

手合わせをせがまれた時は少なからず驚いた。



故郷では表向き、研究にのめり込んで

引き篭もっている学者ということになっている。

それは身内にも同様で、

真実を知るのはごく限られた範囲でしかなかった。

更には、居なかったことはないことにもなっているのだ。

居たはずの人が外から帰ってくる不自然を避けるために、

ちょっと面倒だが一手間かけねばならない。


からくりはこうだ。

恩師の研究所に出かけるという名目で

空の乗り物をまわす。

あらかじめ密かに研究所に入っておいて、

しばらく時間をあけてから

預けておいたローブに着替えて

待たせていた乗り物で帰る、と。


自動運転なので運転手はなく、

身内以外で秘密を知るのは

この件で協力してくれている恩師

バーナバス・ヒューイット教授のみだ。

たまの再会が楽しみでもあるので、

戻る時はできるだけ余裕をもって

研究所を訪れることにしていた。



こういった事情もあり、

人目につかない屋内の稽古場を人払いした上で

甥っ子と向きあうことにした。

引き篭もりの学者が剣を持つなど、

似合わないこと甚だしい。

甥っ子には知らされていないはずなのだが。



稽古場中央で、剣を持って向き合う。

ただし、自分は両手で剣を抱えて、だ。


「なぜ剣など持ったこともなさそうな学者と

 手合わせなどと?」


「叔父上はとてもお強いそうですね」


「……私のことは誰に?」


「父上に」


事情を知らされる程に成長したというわけか。


「それならよかろう」


剣をきちんと持ちかえた。


「行きます!」



打ち合ってみると、なかなか筋がいい。

踏み込みは鋭く体幹は安定してぶれない。

よく見えてもいるようだ。

……しかし、まだまだだ。


誉めるべきはしっかり誉めて

日々の鍛錬も怠らないよう声をかけておく。

額から大粒の汗を滴らせた甥っ子は剣を置いた。


「今度は体術で!」


「わかった」


そう言って剣を置くと

向き直る前に声を上げて掴みかかってきたので、

その手首をひょいっと掴んで向き直り、

一歩踏み込みながら外向きに肘毎ひねると、

次の瞬間には甥っ子は床に仰向けに転がっていた。


「……ああ、全然ダメか」


手を差し伸べると、グッと掴んだので引き起こす。


「今度お目にかかる時にはきっと、

 もっと強くなっておきます。

 ありがとうございました」


「ああ、わかった。楽しみにしておこう」




必要な装備を密かに揃えながら、

兄の私室で極秘調査の経過報告を行った。

拠点として使われている可能性のある島を

直接調べに潜入することを話すと、


「無茶はするなと言いたい所だが、

 しないわけにも行くまい。

 ……良いか? 必ず!

 無事に帰って報告するのだぞ」


「……はい。確かに、承りました」


ふと、少し雰囲気が変わった。

ほんのり兄弟の気安さがにじむ。


「そういえば、アシュリー。

 レイモンドがどうやらお前に憧れているらしい」


「今日はいきなり手合わせを申し込まれましたよ」


「ほほう。それで?」


「剣はなかなか筋が良いと見ましたので、

 大いに誉めてよりいっそう鍛錬に励むようにと。

 ただ、体術はまだまだこれからかと」


「やはりお前には手も足も出なんだか」


兄王は楽しそうに笑った。



それからおよそ一週間後、

王宮から再びヒューイット教授の研究所に乗り物が着き、

半日後再び王宮に戻っていった。





さて、ようやく長く待たされた予約日当日となった。


満を持してアデルモ島最寄の

プライベートアイランドへ降り立つ。

プライベートアイランドは

利用者以外が立ち入る事は阻止されるが

利用者が出入りすることに制約は加えない。


明るいうちは普通に島のバカンスを楽しんだ。

山にも登り、名水の泉も見つけて味わった。

ルベにはこんな素晴らしい泉は無いと感心した。

夏の太陽が眩しい。

入り江で泳いだり、白い砂浜で日光浴もした。


さて、普通のバカンス客はこんな感じで楽しむだろう。

やることは一通りやった。

あとは日が落ちるのを待つだけだ。


コテージのソファでゆったり身体を伸ばしてくつろぐ。


「結果は?」


『オールグリーン』


「ほう。それでは警戒は人の目か。

 今時珍しすぎるな……。

 ならば、やはり行くしかあるまい」




深夜、足を延ばして遠くまで釣りに行くという名目で

プライベートアイランドをチェックアウトした。

当然、迎えも不要。

もうこの島には戻らない。

アデルモ島脱出後は別ルートだ。


ややあって、入り江の白い砂浜に長いヒモの輪がついた

30気圧防水の袋を抱えた人影が現れた。

そのまま浜から海中に入っていく。

ヒモを首にかけた次の瞬間、

人の姿が見る間に膨れ上がりドラゴンの姿となった。

が、瞬く間にドラゴンは海に潜り、

その姿は海中に没して見えなくなってしまった。



ドラゴンはとても生命力が強い。

そのためかどうか解らないが、

ガス交換の効率が非常に良く鯨並みの潜水が可能だ。


“アデルモ島へ”


すると、脳裏に赤い点が浮かんだ。

ドラゴンは進む方向を左へ微調整し、

赤い点を正面に置いて海中を進み始めた。


“50メートル手前まで”


赤い点が1回だけ点滅して見せた。




暗い海中を進む。

途中で一度、息継ぎに頭を水面に出した。

今夜のルベは心なしか赤みが増して見える。

……雲が欲しいところだな、と、ふと思った。

さて、行くか……。


ドラゴンの頭がまた海中に潜った。




しばらく進むと、脳裏の赤い点が点滅し始めた。


“OK 

 地図を等高線50センチ刻みで。人工物と人間を上乗せ”


すると、入り江の側の小屋よりずっと島の奥に

大きな建物が一棟建てられているのが判った。

小屋の中に一人。屋外に他の人間はいないようだ。

上陸地点を検討する。入り江に桟橋が作られていて

ボートが3艘接岸されていた。

見ればキーが着けっぱなしになっている。


おやおや、これはまた、無用心極まりない……。

よし、桟橋沿いに上陸するか。

桟橋の陰で身支度をしてしまおう。

奥の建物の中を確認したいところだが……。


“思考対応で維持”


人の姿に戻り袋を抱えて桟橋の下、

海中をそっと移動する。

と、地図上の人型が移動を始めた。

動きを止めて息を潜める。



小屋の横手が唐突に開いて黒い人影が姿を現した。

小屋の入り口はこちらに向いているのだが。

……入り口はダミーか。なるほど……。

人影が出てきたポイントを地図上にマークした。



砂を踏む足音が近づいてくる。

……と、桟橋に上がってきた。

足音はどんどん近づいてとうとう頭上を通り越して

桟橋の端まで歩いていった。


「んがあああああああっ! むっほぁあああああっ!」


んーっと背伸びして、ぶんぶん手足を振り回した。


「毎日毎日夜番なんてしなくってもよぉ、

 こんな島に誰が来るってんだよなぁ……。

 誰か潜り込んで来たら

 いい暇つぶしになるんだろうがなぁ。

 ……ちっとも来やしねぇってんだよっ!

 ちぇ、つまんねぇ……」


ひとしきりぼやくと桟橋の上を向きを変えて戻ってきた。

頭の上を通り過ぎ、浜に下りて小屋までまっすぐ戻ると、

出てきた横手の隠しドアから小屋の中に入っていった。



見つかったのかと一瞬思ったが……。


地図を見ていると、人影はそのまま小屋の中を動き回り、

北東ポイントでふっと消えた。


おいおい、うそだろ。……地下、か?

……その可能性が高いな。

ひょっとしたら、奥の建物と地下通路で

つながっているのかもしれない。


小屋から行くか、奥の建物か……。


いや、とにかく先に身支度だ。

このままでは落ち着かない事甚だしい。



首にぶら下げて持ってきた防水の袋を開くと、

手早く身支度を整えた。


迷彩色の薄手の服は、瞬間的な圧力には非常に強いが

引っ張る力にはごく弱いという特殊な生地でできていた。

とっさに変身する可能性を考慮した素材で、

主に戦闘職にある猛獣に変身するタイプの人用に

ルベで開発されたものであった。



迷ったが結局、島の奥の建物を目指すことにした。

人の反応はないが目立たないように

かがんだ姿勢で砂浜を素早く通り抜ける。

小屋からできるだけ距離をとって回り込み裏手に着くと、

そこには森の奥に向かう道が切り開かれてあった。

海からだと見ただけでは道があるとはわからない位置だ。


あえて道は避けて森の中を行く。

プライベートアイランドの森とは違って

アデルモ島の森はほとんど人の手がはいっていないため、

背の高い木からは絡みついたツル植物が垂れ下がり、

足元には切れ込みの深い独特の形をした大きな葉の、

胸丈ほどもある植物が生い茂っていて

とても普通には歩けない。

押しのけたりくぐったり

苦労して森の奥に分け入って行った。



奥の建物にたどり着いた。どうやら倉庫らしい。

建物正面に大きな鉄の両引き戸が閉まっている。

内部に人の反応はない。


さっきの男はこちらに移動したのではなかったのか……。



周囲を回ってみる。

正面入り口のほかに入り口はない。

上は? と見上げると、側面側6メートルほど上に

換気用だろうか明かり取りだろうか、

横に細長い窓が間隔をあけて

3つ並んでいるのを見つけた。


ふむ、緑玉ではちょっと足りないだろうな……。


黄色いピンポン玉のようなものを取り出す。

地面に置いて力を込めて踏みつけた。

するとピンポン玉がみるみるほどけて形を変え、

黄色い針金で出来ているような8メートル梯子が現れた。


頼りなさげな黄色い梯子を窓枠の上に立てかける。

見た目に反して、するする登っても

針金細工のような梯子はビクともしない。


この梯子はグランヴィルの特殊装備で、

特殊形態記憶樹脂で出来ている。

特別な靴と手袋がないと

手足切断の可能性がある危険な道具なので

一般には一切出回っていないものだった。


ちなみに、この樹脂はとてつもない強度を持つが

火に弱いのが欠点である。

手持ちはもう一つ、5mの緑玉だ。




窓枠に取り付いて見ると鍵は無い。

さすがにこんな所からの侵入者を

想定してはいなかったのだろう。

もう一度人がいないのを確認して窓を押し開けると、

静かに身体を滑り込ませた。


窓下には倉庫内部両サイドに足場があって、

窓からの薄明かりに

天井から大きなフックが下がっているのが判ったが、

内部はとても暗い。


窓の外に手をのばして梯子を掴むと、

ひょいっと持ち上げてガンッと斜めに衝撃を加える。

すると、昇ってもビクともしなかった梯子が、

一瞬でふにゃっと糸のようになってしまった。


急いでたぐりよせてギュッと両手で丸めると

元の黄色いピンポン玉だ。

手早くピンポン玉を仕舞うと、

窓を静かに閉めて様子を窺った。


“可視光線増幅、一定値以上はカット。

 フレーム光量0、眼前カバー距離1センチで。”


PCFに暗視機能を指示し、

更に定位置から眼前に移動し貼りつかせた。



下に下りる鉄の階段がある。

見渡すと階下にはフォークリフトが適当な場所で

乗り捨てたように停止していて、

コンテナがいくつも置かれていた。

倉庫の一番奥、コンテナの陰に何か鉱石が

無造作に積み上げられていて、

いくつか床面に転がり出ている。


あれは……。



足音を殺して階段を下りる。

すばやく奥まで走りコンテナの向こう側へ移動した。

鉱石を拾い上げる。



む! これはゴールズワージー鉱山の

新鉱脈で見つかった鉱石では?!



“簡易分析”


拾った鉱石を仕舞う。

……と、勘が働いた。コンテナの上に登って伏せる。

とたんに倉庫内に一斉に電灯が灯り、

地図上に人影が湧いた。


さっき上から降りてきた階段の裏側に

四角い部屋らしき一角があってドアがあった。

ドアの向こうには地下への通路があるらしい。

湧いた人影はそのドアのちょっと向こうだ。

……あの位置ならまだ間に合う!


コンテナの上に立ち上がると、

サイドの足場に飛びついた。

すばやくよじ登って足場の上に伏せる。


と、次の瞬間ドアが開いた。


「……だから、異常なんてねぇって。」


「いや、後ろ頭がイヤにむずむずしやがるんだ。

 こんな時は気づいてないとこで

 なぁんか起こってんだよ!」


「そうかい。

 んじゃあ、満足するまで調べてみりゃあいいさ。」


一人は注意深く物陰を一つ一つ確かめながら

奥に向かっていく。

もう一人はただブラブラと着いて行っているようだ。

この様子だといずれ

上の足場も確かめに上がってくるだろう。



前を行く男が倉庫一番奥の鉱石の山に差し掛かった時、

意を決して動いた。

素早く立ち上がって手近の窓を蹴破ると外に飛び出した。


「うおっ?! な、なんだ?」


「見ろ、やっぱネズミが潜り込んでたじゃねぇかよっ!

 追うぞ。外だっ!」


二人組は倉庫内を一直線に走って

正面の扉を開こうと取り付いた。

大きな閂を軋ませながら開くと、

重い引き戸を引き開けて外に飛び出した。


追っ手が外に出たのと入れ違いに、

ぶら下がっていた窓から再び倉庫内部に戻った。

いそいで足場を伝って走り階段を半ばから跳び下りて、

地下通路へのドアから入って鍵を掛けた。


ドアの奥にあった階段を駆け下りて地下通路を突っ走る。

いくつかドアがあったが調べていく余裕はない。

地下通路で前後を塞がれれば万事休すだ。


突き当たりの階段を駆け上がるとドアがある。

引き開けると、正面に熱帯魚の群れが泳ぐ大きな水槽と

ゆったりした肘掛け椅子に足載せ椅子のセットがあった。


これはこれは……。


意外なものを見た、と思いながら

内部をくるっと見回しておく。

後でじっくり調べてやる。



小屋から出ると浜を走る。

地図上の男二人は森の道を浜にむけて走り始めている。

桟橋に舫ってあるボートには

確か鍵が着けっぱなしだったはず、

だったのだが鍵が無い。


小屋に駆け戻る。

そういえば、壁に鍵が並んでいた!


鍵を全部とって一つ選んだ。

残りの鍵は、

ふと思い付いて熱帯魚の水槽に放り込んだ。



海じゃないだけ良心的だろ?



ボートに乗るとエンジンをかけて走り出した。


その頃には濡れた鍵を掴んで

額に青筋を浮かべた男が桟橋を走っていて、

後からもう一人少し遅れてバタバタ走ってくる。


かなり先行したと思ったのだが

追っ手のスピードが思いのほか速かった。


そして、しばらくの

必死のカーチェイスならぬボートチェイスの後、

リコシェがプライベートアイランド専用ターミナルへ

調べに行ったあのボート事故は起きたのだった。





ボートの事故から数日後、

オリーブの木陰のベンチの横で、

柔らかな木漏れ日を浴びながら

ブルードラゴンがゆったり座っていた。

回復にはやはりこの姿が一番だ。


アデルモ島の小屋で、つい茶目っ気を出したのがたぶん、

運命の分かれ道だったのだろう。


静かな怒りをたぎらせた、おそらくは熱帯魚マニアの

追っ手に猛追されてのボート事故で、

飛び散った燃料に引火爆発して

火だるまになったのだったが、

それがなければ彼女には出会っていなかったのだから。



あの時は

飛び散ったボートの燃料を被ったところに引火し、

大爆発にまともに巻き込まれた。

咄嗟に爆発に紛れて海中に隠れ、

追っ手をやり過ごそうと目論んだのだったが、

海中に隠れるための空気と一緒に

爆炎をも吸い込んでしまい、

何とか追っ手はごまかせたが、

喉から気管や肺まで炎に焼かれてしまった。


セキュリティの継ぎ目のタイミングで潜り込んだ島で

密かに回復しようとしたのだが、

自分が思うよりずっと身体内部の傷は重症で、

ドラゴンの生命力を持ってしても

高熱で身動きが取れなくなってしまった。



今回ばかりはもうダメかもしれないと

半ば死を覚悟した……。




意識を無くしていたが、

一滴の冷たい水が干からびかけた舌に沁みた。


思わず目を開けると、目の前にいた彼女は

大抵の者が恐れ戦くこの紅い瞳を綺麗だと言い、

恐ろしげな姿のドラゴンに一欠片の怯えもなく、

活き活きと言葉を紡いで瀕死の私を笑わせた。



なんとなく、

この人の言葉を聞きながら死ねるなら

それもいいかと思ったのだが。




彼女に命じられて立ちあがれたのは我ながら驚いた。

意識が薄れかかっていたが

姫に命じられたナイトのようにせめて振舞おう、と。



その彼女が、まさか自分にひっかかって溺れているとは

夢にも思わなかった。

ふと気付いて目を開けたら、動かない彼女が水の中、

目の前にゆらゆらと漂っていて肝が冷えた。


それからは必死だった。

冷たい泉の水のおかげで多少なりとも回復していたので、

いくらか動けるようになっていたのも幸いした。


すぐ人型に戻って彼女を救い上げた。

心肺停止状態だったから一刻の猶予もない。

肺の水は無理に吐かせず、

すぐに心臓マッサージと人工呼吸を始めた。

おそらく泉に沈んだままのドラゴンを救おうと

飛び込んだに違いなかった。


彼女が戻ってきてくれてどんなにホッとしたか……。





あまりにも無防備に姿をさらすホオジロカンムリヅルを

危険から遠ざけたくて

自分のできる最速と思われる手を打ったが、

今さらながらこれで良かったのかと不安になる。


彼女は微笑んでいるだろうか……。







モンフォールのメルセンヌ空港に、

ルベのグランヴィルからの宇宙便が

予定時刻より4分遅れで着陸した。


航空機は化石系燃料から前世紀半ばに卒業している。

圧倒的耐熱性と強度と軽さを併せ持つ素材が開発され、

機密性の更なる技術向上に伴って、

ルベとマリレ間では宇宙空間を越えて

普通に航空機で行き来が可能になっていた。


「いよいよですね」


緊張の面持ちで待機していたリコシェは、

一歩離れて立つブロワ伯に声をかけた。


「はい。 ……よろしいですか? アレクシア様。

 これからの国と国との付き合いを考えれば、

 非常に重要なお客様です。

 ……くれぐれも! よろしいですか? くれぐれも!!

 慎重に、よく考えて行動なさいますよう」


いつまでも子供扱いなんだから…… とは思ったけれど、

ここは素直が一番よね。


「はい。慎重によく考えていたします」



使者が随行員を数名伴って歩いてくる。

リコシェは伏目がちに待ち受ける。

使者がリコシェの目の前で立ち止まった。

リコシェが挨拶の言葉を述べようと目線をあげると……


「ええーーーっ?! 先生、どうしてここに?」


思わず声がでた。出てしまった。



目の前に立っていたのは

留学先のアドラータ王立オルシーニ大学で

教わっているヒューイット教授……?

えええっ?!


グランヴィルの使者は、にっこり微笑んだ。


「はじめまして。

 私はグランヴィル国王の使者で

 バーナバス・ヒューイットと申します。

 兄のアドルファスをご存知のようですね。」


「え? 兄?!

 ……あっ! これは大変失礼いたしました」


リコシェは耳まで真っ赤になり、

ブロワ伯は額に手をやって天を仰ぎ、

他の皆は硬直した。

前途多難である。


ただ、使者は楽しそうに微笑んでいた。





≪続く≫


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ